2023年6月8日に土砂災害警戒情報の基準が変更された。「メッシュ」と呼ばれる分析のための区切りを細かくし、人が住む場所に被害を及ぼさないエリアを分析から除外したことで、発表される警戒情報は福島県では全体で8割以上減少するという。一方で精度があがるため発令されたら軽視してはいけない。
軽視できない情報
「土砂災害警戒情報」は大雨で土砂災害の恐れが高まった時に出される。2時間先の予想雨量と土の中の水分量をもとに発表されるが、最近の雨や土砂災害のデータをもとに8年ぶりに基準が見直された。
警戒情報を出して被害が出ない、いわゆる「空振り」の確率が減るため、福島県では「今後警戒情報が出た場合には避難などの対策を早めにとってほしい」としている。土砂災害警戒情報は警戒レベル4に相当し「危険な場所からの避難」が必要となる。土砂災害は、一度おきると被害が大きく人命に関わるので軽視してはいけない。
さらに小さな範囲で判断
新たな基準は、最近の雨の降り方や過去に発生した土砂災害を踏まえて設定された。
これまで、5キロ四方のブロック毎に、土砂災害の危険性があるか判断してきたが、6月8日からは、ブロックの大きさが1キロ四方に変わった。5キロ四方のブロックの中には、1キロ四方のブロックが25個入るので、地区単位で判断していくイメージだ。
福島県内を1キロ四方で分けると、ブロックの数は1万3475。このうち人に影響を及ぼさない場所にあたる全体の約3割は対象から除外する。範囲を限定し、より狭いブロック毎に実態を反映させた基準で判断するため、土砂災害リスクを予測する精度が高まったということだ。
空振りが減る
これまでは、土砂災害警戒情報が出されても結果的に土砂災害は発生しないといういわゆる「空振り」が多かった。
福島県は、今回の変更で県内に発令される件数は、82%減ると見込んでいる。10回出ていたものが2回になるということだ。県の担当者は、土砂災害の発生リスクをより精確にとらえて情報が発令されるため「空振り」が減る。一方で予測通り土砂災害が発生する確率が高いため警戒を強めてほしいと話していた。
精度向上で災害対応しやすく
基準の変更そして予測精度の向上を、現場で対応する市町村の担当者は前向きにとらえている。ポイントごとに危険性を細かく分析できることで、自治体にもメリットがあると言う。
相馬市地域防災対策室・高橋裕宗室長は「5キロより1キロの方が、よりピンポイントに警報が発令される確率が高いと思う。行政としては、パトロールや避難の呼びかけなどの部分で精度が上がってくると考えている」と話す。
避難所開設がスピーディーに
発表の基準が変わっても自治体では、これまで通り「土砂災害警戒情報の発表」だけで避難所を開設するわけではない。ただ、どの場所で土砂災害のリスクが高まっているかをこれまでよりもエリアを絞って確認できることで、相馬市では開設への動きが加速できると考えている。
相馬市地域防災対策室の高橋室長は「今回除外される部分が出てくるということは、そちらに割く人員・体制を、より可能性の高いところに集中できる」と話す。
リスクの事前把握が重要
警戒情報の「精度」が上がる分、自分が住んでいる場所の土砂災害のリスクをハザードマップで確認しておくことがより重要になってくる。
相馬市地域防災対策室の高橋室長は「警報が出た場合は災害の可能性が高いということで、市民の避難の参考になる」という。
これまで土砂災害警戒情報が発表されても「大丈夫だろう」と思うことが多かったかもしれないが、これからは情報が出たら「土砂災害は起きるもの」と、さらなる警戒を意識しなければならない。
(福島テレビ)