コロナ禍が落ち着き、国内外から多くの観光客が訪れている福岡県の水郷・柳川。のんびりと風情ある川下りを楽しむ観光客でにぎわっている。そんな中、川下り船の運航事業者からは困惑の声が上がっている。

川下り名物“橋越え”が問題に?川下り船の転覆事故受け…

「城門観光」元山和志 社長:
これは死活問題なんですよ。これを、もし「するな」って言われたら、私たち「仕事をするな」って言われているのと同じこと。それは困ってしまう

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実は今、長年続けられてきた船頭の“ある行為”が物議を醸している。

その“行為”とは、舟が橋の下をくぐる際に船頭が橋に上がり、道を渡って舟にジャンプして戻る“橋越え”と呼ばれる行為。
インタビューに答えてくれた業者では、40年前から行ってきた。

「城門観光」元山和志 社長:
もともとこの“橋越え”っていうのは、パフォーマンスでは一切ありません。お客さんが多い時は、船頭が寝て橋をくぐることが不可能なんですね。それをかわすために、結局、橋の上を仕方なく越えていたっていうのが現状です

船頭が体を倒すスペースがないときに行っていた“橋越え”。その動画がここ数年、SNSなどで拡散され、国内外からお目当ての客が殺到。橋越えを行う業者が増え、徐々に観光名物として“パフォーマンス化”していったという。

注目が高まる一方で、2023年3月、京都で川下り船の転覆事故が起きたことなどから、柳川市に橋越えの安全性を懸念する声が寄せられ、市は「船頭が客を乗せたまま舟を離れる行為」などを問題視することに。

7つの運航事業者に「安全運航の徹底」を求める文書を配布し、「客の安全確保が最優先」としたうえで、「橋の上を横切る行為」や「ガス管の上に立つ行為」についても危険性が高いと指摘した。

現地には「はしご撤去」の警告も

実際に橋に行ってみると…。

本山順子ディレクター:
船頭さんが足をかけるはしごですが、撤去するよう警告が出されています。さらに、反対側、ガス管にも“のるなキケン”の表記があります

「城門観光」元山和志 社長:
ガス管については、ガス会社の方から「簡単に破損するようなおそれはない」というお墨付きはもらっているんですね。もしここを飛ぶなって言われると、船頭さん自体が、もう通れなくなっちゃうんですね

この業者では、これまで事故は起きておらず、今後も客の同意を得て安全確認を十分しながら橋越えを行うという。

一方で、橋越えが危険だとして、行っていない業者もある。

船頭歴30年以上・藤永隆利さん:
「船頭さんが一瞬でもいない状態っていうのは、どうなんですか?」っていう話なんですよね。お客さんを楽しませるパフォーマンスはいっぱいあると思うんですよ

体験した人からは「目玉のひとつ」「楽しみ」の声も

この日、橋越えを体験した人は…。

橋越えを体験した人:
すごかった。“橋越え”が目玉のひとつだと思う

橋越えを体験した人:
あれがあるから楽しいんじゃないの?

――危ないとは?

橋越えを体験した人:
いえ、全然思わない。楽しかった

韓国人旅行ガイド:
ほかのところではやっていないので、韓国人観光客もみんな楽しみにしている。

――“橋越え”がお目当て?

韓国人旅行ガイド:
もちろんです

柳川市には、これまでに橋越えの継続を求める声が多数寄せられていて、市は6月1日にウェブサイトで「中止勧告ではなく、安全運航のお願いを行ったもの」で、「今後も川下り事業者や関係団体と協議を行っていく」と説明した。

かつてのにぎわいが戻りつつある中で起きた今回の騒動。長年人々を楽しませてきた“川下り名物”は、今後どうなっていくのか…。

(テレビ西日本)

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