秋篠宮家の次女・佳子さまは、5月23日から全国都市緑化祭の式典に出席などのため宮城県を訪問されました。
佳子さまは、23日に仙台に入りましたが、まず、宮城・石巻市へと向かわれました。
これまでも、全国都市緑化祭の式園へは出席してきた佳子さまですが、東日本大震災の被災地に入られたのは初めてでした。
「祈りの場」に供花、被災した門脇小学校へ
佳子さまが、まず訪れられたのは、石巻市南浜町にある「石巻南浜津波復興祈念公園」。
この記事の画像(14枚)ここには、「祈りの場」という半円の献花台を備えられており、佳子さまはそこに供花し、深く拝礼されました。
佳子さまが被災地に供花されたのも初めてのことでした。
続いて訪問されたのは、公園の敷地内にある「みやぎ東日本大震災津波伝承館」です。
石巻市は、約4000人が亡くなった東日本大震災による国内最大の被災市町村で、この南浜地区では、津波や火災のため約500人が亡くなっています。
伝承館では、「津波は また必ず襲ってくる」「すぐに、より高い所へ逃げる!」「ともにつくる復興」などのパネル展示をご覧になった上で、この南浜津波復興祈念公園には多くの市民、民間非営利団体、企業などからも参画してもらい、「追悼」だけでなく「伝承」や「杜づくり」に取り組んでいることなどの説明を受けられています。
そしてこの日、最後に向かわれたのが「石巻市震災遺構 門脇(かどのわき)小学校」でした。
この小学校では、地震発生の時は6時間目の授業中だったということで、机の下に避難した後、訓練通りに裏山・日和山へと向かい、児童や職員は全員無事に避難できたということです。
1時間後には津波が襲来。さらに、流されてきた家々が校舎にぶつかります。
その際、何らかの原因で燃えている家屋も学校の建物にぶつかり、火は校舎へと燃え移ったのです。津波火災と呼ばれる被害です。
佳子さまがご覧になったのは校舎三階の4年2組の教室でした。
内部は焼け落ち、燃え残った机のパイプが並んでいました。
佳子さまは、息をのむように教室をご覧になっていました。
説明者によれば、佳子さまは、「来てみないとやはりわからないですね」「来てみて、初めて地震、それから津波の恐ろしさ、火災が起きるのだという恐ろしさというものを改めて知ることができました」と述べられたそうです。
「来てみないとわからないですね」と、何回も述べられていたということです。
高校生の時に訪れた福島県で避難者らと懇談
佳子さまが被災者から話を聞いたり被害状況についてお聞きになったことはありました。
2011年3月、那須の御用邸にあるお風呂を被災者に開放する際、入浴する人のため、紀子さま、眞子さん、職員と一緒に約3500枚のタオルを袋詰めされました。
そして、この年の8月、全国高等学校総合文化祭に出席するため、当時16歳の高校生だった佳子さまは、ご両親とともに福島県の会津若松市を訪問されています。
その際、お泊まり所となったのは東山温泉の旅館でしたが、実は大熊町から避難してきていた約900人もの被災者が東山温泉の宿泊施設に滞在していたのです。
秋篠宮ご夫妻や佳子さまを奉迎するほとんどの方は、東山温泉に滞在していた避難者だったのです。
式典などが終わり宿泊所に戻った際、旅館のロビーで避難者らとの懇談が行われたということです。当初は、予定にない懇談でした。
佳子さまは、ご両親とともに避難してきた人たちから話を聞かれたのです。
2017年には、宮城県で行われたやはり全国高等学校総合文化祭で、「せんだい3.11メモリアル交流館」を訪れ、常設展示のパネルを見ながら、津波や復興状況、仮設住宅の様子などについて、秋篠宮さまとともに説明を受けられています。
佳子さまは、説明を真剣に聞きながらうなずかれていたということです。
被災地の様子、復興の様子をこれまでも知る機会はあった佳子さまですが、被災地を実際に訪問し、被災の現場をご覧になることは今回が初めてだったわけで、佳子さまにとっては大きな印象が残られたご様子でした。
今年は初めて園遊会にも…活動広がる佳子さま
門脇小学校では「記憶を紡ぐ」という体験者が記憶を言葉と絵で表現されているコーナーがありました。
この中で、聴覚障害の方が、「耳がきこえないということ」という文章が展示されていました。
耳が聞こえないことで、防災無線に気がつかない、停電でテレビが映らない、情報が乏しく犠牲になった人たちがいることが綴られていました。
日本ろうあ連盟に勤める佳子さまにとっても思うことはおありだったことでしょう。
「確かに音が聞こえないということの恐ろしさというのはよくわかります」と感想を述べられたということです。
去年は「日本乳癌学会」の式典に出席された佳子さま。医学学会の式典に出席されたのは初めてのことでした。
そして今年は、初めて園遊会にご出席、そして初めての被災地と活動を広げられています。
その中で今回は、当時の被害がどれだけのものであったか、さらに災害により弱い立場の人たちがどのような状況におかれるか、震災の傷跡をご覧になることで、多くの知見を得られたことと拝察しています。
さらに国民に寄り添っていただける皇族のお一人となっていただけることと思いながら、お姿を拝見していました。
【執筆:フジテレビ皇室担当解説委員 橋本寿史】