G7広島サミットで各国首脳らが囲み、存在感を示した円卓テーブル。製作したのは地元の家具メーカーだ。実は、採用してもらいたいと売り込んでいたのは代表作の“椅子”で、円卓テーブルは思いもよらぬ受注だった。

3メートル超の円卓をゼロから設計

G7首脳らが囲む大きな円卓テーブル。ここで重要な議論を行ったりランチをしたり、G7広島サミットに欠かせない役割を果たした。

この記事の画像(15枚)

製作を担ったのは、広島市佐伯区の家具メーカー「マルニ木工」。その工房を石井百恵記者が取材した。

石井百恵 記者:
私の身長は162センチですが、円卓の大きさは直径3メートル10センチ!こんなに大きいんです

円卓テーブルの大きさを伝える石井百恵記者
円卓テーブルの大きさを伝える石井百恵記者

使用している木材は、廿日市市吉和や安芸太田町産のヒノキ。9人掛けの仕様で、組み立て・梱包できる作りになっている。
マルニ木工は1928年創業。家具の工業化をモットーに高度な加工技術を確立してきた。機械と職人の手作業を合わせた独自の家具作りで人気だ。

代表作は「Hiroshima(ヒロシマ)」と名付けられた椅子。

背もたれからひじ掛けへの緩やかな曲線は背あたりが良く、優しい肌ざわりと美しいデザイン性を兼ね合わせている。世界的企業のアップル本社が数千脚を導入したことで注目された。

G7サミットが広島で開催されることが決まった当初、この椅子を採用してほしいと売り込んだという。

マルニ木工 経営企画室兼ブランド統括部・土井康義 部長:
県や市、最終的には霞ヶ関の外務省も訪問して、広島にはこんな良いものがあるんですよということをアピールするところからスタートしました

しかし、注文を受けたのは椅子ではなく“円卓テーブル”だった。

マルニ木工 経営企画室兼ブランド統括部・土井康義 部長:
今までに作ったことがないですからね。本当にゼロからの設計で、よく短期間でここまでやったと思います

“一枚の板”として表現するために

思いもよらず受注した円卓テーブル。初めて挑む大きさに、技術スタッフも頭を悩ませた。特に大変だったのは“木目の出し方”。実は、この大きさの一枚木は用意できず、板の向きを変え、板の側面の木目が見えるように一枚一枚を張り合わせている。

板を何枚も張り合わせて、自然な木目を表現
板を何枚も張り合わせて、自然な木目を表現

マルニ木工 生産本部・柳田康弘 技術部長:
違和感なく一枚の板として表現できるか。木目の選別作業が一番こだわったというか難しいところでした

マルニ木工 生産本部・柳田康弘 技術部長
マルニ木工 生産本部・柳田康弘 技術部長

こうして完成した円卓テーブル。そして、「Hiroshima」の椅子もランチ用として採用された。

「広島出身の首相の顔に泥は塗れない」

完成した円卓テーブルは規格外の大きさのため部材ごとに分けて運搬し、メイン会場のホテルで組み立てた。

「グランドプリンスホテル広島」で行われた組み立て作業
「グランドプリンスホテル広島」で行われた組み立て作業

サミットで各国の首脳らが集う、まさにその場所での作業。通常とはまったく違う作業の連続に緊張が続いた。

マルニ木工 生産本部・柳田康弘 技術部長:
岸田首相も広島出身ですから、やっぱり岸田さんの顔に泥を塗るわけにはいかない。自信が持てるものができたかなと思います

マルニ木工 経営企画室兼ブランド統括部・土井康義 部長:
われわれがやってきたことはこんな形で認められたんだよ、みたいなね。本当に感慨深いなと思います

創業以来90年以上かけて培ってきた技術の結集が、世界の舞台で活躍した。さらなる飛躍のきっかけとなるか、マルニ木工の今後が楽しみだ。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。