PTAは学校の「第二のサイフ」となっているのか。東海テレビの取材でわかった、PTAが学校にたくさんの備品などを寄付している実態について、名古屋市教育委員会が17日、調査の結果を発表した。
寄付の認識がないほど学校とPTAが一体化していたのでは…?
5月16日、名古屋のPTA会長らを前に、陳謝した河村たかし市長。
河村たかし名古屋市長:
(学校が)PTAからお金を要求しとるような話がありましてですね、申し訳ないと。おかしいと思ったら言ってちょー

PTAから学校への備品などの寄付を、ルールを無視して多数受け入れていたことが判明したことを受けて謝罪した。
名古屋市のある小学校の理科室。教頭からPTA会長に相談し、会費から約43万円を支出して、4台のエアコンを寄付してもらっていた。

東海テレビでは、名古屋市立の小中学校371あるPTAに対してアンケートを実施し、PTAから学校への寄付の有無を尋ねた。

コロナ対策の消毒液といった消耗品から、エアコンや大型扇風機などの設備・備品、そして給食調理器具まで。本来は公費でまかなうべきではと疑問に思えるものが次々と明らかになった。
判明した寄付のほぼ全てが、名古屋市教委が自ら定めた寄付受け入れのルールを無視していたこともわかった。
名古屋市教委の坪田知広教育長:
このズレは遺憾なことですね。これは事実確認を急がないといけないと思います

ーー本来受け入れてはいけないものと思い、学校は市教委と調整しなかったのではないか?
名古屋市教委の坪田知広教育長:
そうだとしたら、ますます不適切な話になりますね
ーーPTAが「第二のサイフ」になっているのか?
名古屋市教委の坪田知広教育長:
そうはなってはいけないと思っていますので、どうしてこういうことになったのか、構造的なことをちゃんと把握しないといけないと思います
エアコンや階段ベンチ…1億超円の“寄付”
PTAが学校の「第二のサイフ」になっているのではないか。市教委は3月、ようやく本格的な調査に乗り出し、5月17日、調査結果を公表した。
名古屋市教委の坪田知広教育長:
一番金額が大きかったのは、エアコンで89万8480円です。モニュメントと階段ベンチが135万円
名古屋市立の学校・幼稚園で、過去5年間にPTAから受け入れた寄付についての調査をしたところ、その総額は1億8,400万円あまりで、その約8割にあたる1億4,800万円相当については、市教委で定めた手続きをとらず、受け入れが適切かの判断をしていなかった。

全体の4割にあたる約160校が、手続きをとらずに寄付を受け入れていた。
市教委の生涯学習課長:
寄付してもらうとか寄付するとか、一緒にやっている意識の中で、それが寄付にあたるという認識がなかった、不十分だった
寄付の認識がないほど学校とPTAは一体。まさに「第二のサイフ」になっていたのではないだろうか。
市教委の生涯学習課長:
PTAから学校に対する寄付につきましては、PTAと学校がよく話し合いながら、PTA側のあくまで好意による自発的な意志で行われております。いわゆる「第二のサイフ」という指摘はあたらないのではないかと思っております
PTAが自発的に寄付をしているため問題はなく、あくまで手続き上の問題であると強調した。今後、各学校を回って、手続きを徹底するように伝えるという。
河村市長は…。
河村たかし名古屋市長:
なかなか当局は否定しておりますけど、僕が聞いたところでは、学校側から何かやるにつれて「予算が足らんで半分寄付してくれ」とか、そう言われとるんだと。手続きを無視してという形式的なところに(問題を)逃げさせてはいかんわけ。学校とPTAの変な癒着関係みたいなものはあれせんかと

教育行政学が専門の千葉工業大学・福嶋尚子准教授に見解を聞いた。
福嶋尚子准教授:
まだまだ実は(ルール無視の寄付が)あるんだけれども、ささいなものがもしかして入っていない可能性とか。手続きを8割がしていないというのは、まあそうだろうなというか、ちょっと後ろめたいところがあり、わざと(手続きを)していない可能性も否定できない
また、名古屋市立小中学校PTA協議会の高橋功会長は取材に対し「PTAが本当に好きで寄付しているわけではない。公費でまかなえるものは公費でまかなうべきが大原則で、全校調査が見直しのきっかけになるといい」と話した。
今後の“予算”について
今後のポイントを整理した。

1.「寄付」だけではない
今回の調査は、物などの寄付の手続きについての調査だった。しかし、PTAが行っているのは物の寄付だけでなく、教室のカーテンのクリーニング代、卒業証書の筆耕代、急病の児童が出たときのタクシー代、部活動に関係する費用などをPTAが出しているといったケースも多い。PTA頼りでいいのか、物の寄付に限らず点検することが必要だ。
2.名古屋市だけではない
名古屋市には寄付受け入れについてのルールがあるため、今回はそのルールが守られているかという調査となったが、多くの市町村にはルール自体がない。また、名古屋市に比べると財政状況も悪く、PTA頼りの実態がある市町村も多いのではないだろうか。
3.学校への予算増を
PTAは入退会自由のボランティア団体だと広く知られてきている。お金の面でPTAに頼るのではなく、子供たちのために予算を増やすことが重要だ。
東海テレビ「かわるPTA」で取材を続けています。pta@tw.tokai-tv.co.jpまでご意見・情報をお寄せください。
(東海テレビ)