1席「1万5000円」。阿波おどりの観覧席の料金をめぐって地元が揺れている。

阿波おどり観覧 1万5000円のVIP席を設置

5月15日に取材班が向かったのは徳島市。
夏の一大イベント「阿波おどり」に向け、早くも盛り上がりが高まっている。

この記事の画像(12枚)

「ヤットサー ア ヤットヤット」と声を出しながら、踊り手たちが夏の本番に向けて、練習に励んでいた。

踊り手:
今年の夏は、徳島が人があふれて身動きが取れないという感じになってほしいと思います。

しかし、この阿波おどりをめぐる動きが今、物議を醸している。
それが「高額すぎるVIP席」

まつりの期間中、徳島市内には踊りを観覧できる有料の演舞場が「藍場浜」と「南内町」に2つ設置される。

このうち「南内町演武場」では、2023年からSS席を新設し値段は6000円。しかし、これはまだ安いほう。100席限定で用意される「特別観覧席」は実に1万5000円もする。

特別観覧席は正面から臨場感ある踊りを体験できる、まさに“VIP席”。

新型コロナの対策が緩和された今年。日本と世界から50万人以上の人出が期待される中、主催者は1万5000円という強気の価格設定に踏み切った。

「誰が買うの?」「県外の人が買うなら」徳島市民の声

しかし、地元の人に「1万5000円の観覧席で阿波おどりを見たいか?」聞いてみると…

徳島市民:
安価でみなさんが見やすいほうが良いのでは。

徳島市民:
徳島市民はなかなか買って見ようとは思わない感じだと思うんですけどね…。

徳島市民:
県外から来てくれる人が買うならいいんじゃないかなと。徳島外から来る人が少ないので、そこに目を向けてくれるならいいかなと…。

踊り子を50年続けている清水理さんは、地域の祭りの興業化に危惧感をあらわにする。

本家大名連 清水理連長(75):
一言でいっても法外な金額。誰が買うのかなと。踊り手からすると阿波おどりというのは、地域の踊りなのだから、そこまでするのかなと…。

高額化の背景に“物価高騰”

それでも観覧席の高額化に踏み切った背景には、昨今の物価高騰があった。

電気代の値上がりに加え、会場警備のスタッフが集まらずに人件費が上昇するなど、予算では賄いきれず、赤字になる恐れが強まったのだ。

祭りを主催する「阿波おどり未来へとつなぐ実行委員会」は、「阿波おどりの魅力や迫力を感じてほしいと考え、特別観覧席を設置しました。踊りは広場や街中で無料で見られるので、ぜひ徳島にお越しいただきたいです」と話している。

過去には億単位の赤字問題も…

榎並大二郎アナウンサー:
徳島の「阿波おどり」をめぐっては、以前も億単位の赤字問題があり、存続の危機に瀕するところもありましたから、どうやって折り合いをつけていくのかというところですよね。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
確かにプレミアム感をつけて、違う部分を強調したい部分があるのかもしれません。でも、みんなで楽しく阿波おどりっていう雰囲気、これまでの伝統を考えると、特別席作ることによって興ざめする人も出てきてしまうんじゃないかな。

宮司愛海アナウンサー:
興業化が進むことで、このお祭りが地元の方々にとって、遠い距離間のものになってほしくないですね。そのために地元の方に対して、どういう風に向き合っていくのか、今後も大切にしてほしいですね。

榎並大二郎アナウンサー:
観光客の人も地元の人も楽しめる祭りであってほしいですね。

(「イット!」5月15日放送分より)