珠洲市の伝統工芸「珠洲焼」平安時代に大陸から伝わり一度は途絶えた焼き物だ。約60年前に復興し他の焼き物にない風合いが全国の愛好家から人気を集めている。その珠洲市を襲った大地震。珠洲焼を作る人々にも大きな影響を与えている。

伝統の珠洲焼を襲った二度の大地震

この記事の画像(44枚)

珠洲焼作家 篠原敬さん:
きのうの夜の地震(震度5強)でさらにやられた。全壊やね。

珠洲焼作家の篠原敬さん。

篠原さんの窯元は、2023年5月5日に相次いだ、震度6強と震度5強の揺れで、大きな被害にあった。

地震で崩れた釜
地震で崩れた釜

窯は地震で崩れ、中にはレンガが散乱していた。

篠原敬さん:
きのうの夜のでさらに割れたね。夕方そうでもなかったのにな。うわあ、本も全部やられてるな。

数日前に出来たばかりの作品は、80点あまりが割れた。

篠原さんが地震の被害にあったのはこれが初めてではない。

壊れた窯を2カ月かけて修復も…

2022年6月

篠原敬さん:
すごい状態、あっちの方が…200点が割れた。

2022年6月に珠洲市を襲った最大震度6弱の地震。作品が割れ、窯の一部が崩た。

篠原敬さん:
この隙間とかね、ずれているでしょ?レンガ積み直さないといけない。

釜を直す篠原さん
釜を直す篠原さん

窯は2カ月かけて、手作業でレンガを積み直し、2022年12月に完成した。

窯にも火が入り、地震を乗り越え、再起を誓った矢先。

釜に火が入り笑顔の篠原さん
釜に火が入り笑顔の篠原さん

その窯が再び崩れたのだ。

篠原敬さん:
やりかえなきゃあかん。アーチから作り直さないといけないわ。

篠原敬さん:
朝からいろんなこと考えたよ。
記者:
いろんなこと…
篠原敬さん:
窯のことね。

篠原敬さん:
作家人生、あと何年かわからない。手もいかれてきているって言う時に…直す意味があるのかなって。

篠原さん以外にも珠洲焼作家に大きな被害…「廃業も…」

地震の被害にあった珠洲焼作家は篠原さんだけではない。

珠洲焼作家 田端和樹夫(たばたわきお)さん:
亀裂もだし、レンガも下がってきたりしているし…。

田端和樹夫さんも、2022年12月に直したばかりの窯が崩れた。

田端和樹夫さん:
向こうの倉庫に行ってみますか。半端じゃない。

記者:
下に散乱しているのって落ちてきたものですか?
田端和樹夫さん:
全部落ちてきたもの。

2023年8月の個展で並べるはずだった作品は約900点が割れた。

田端和樹夫さん:
これみたら作る元気ないですよ。

田端和樹夫さん:
また地震きたら、また終わり。なんのために自分が作っているのかわからん…本当にしょうがないですよ、そういう言い方しかないですよ…しまった、壊れている。

2年半前から続く地震はこの日に400回を超えた。

田端和樹夫さん:
廃業ですよね…廃業しなきゃしょうがないかもわからん。

記者:
田端さん廃業って言ってました。
篠原敬さん:
前回はわしはまだまだ廃業せんって窯直したけどね。200万かけたって言っていた。まだまだやるって…

記者:
今回のはだいぶ、来てたみたいです…
篠原敬さん:
田畑さん?僕も今回、きているよ…前回よりも…。

電話の鳴る音:
ジリリリリリ
篠原敬さん:
はい。篠原です。

  

篠原敬さん:
作品が割れたのはいいんです。なんとか今、片付け始めています。

篠原敬さん:
窯は頭が残っているけれど、全部、やり替えなきゃダメです。

篠原さんのもとには、被害を知った人たちからの励ましの電話が鳴りやまない。

次々と取材にも対応…「自分の気持ちを整理できる」

さらに…

取材に訪れた記者:
TBSです…よろしくお願いします。

取材に訪れた記者:
去年6月の時はどうでした?

取材に訪れた記者:
(地震があって)何を一番最初に思いましたか?

取材に答える篠原敬さん:
まずは、作品と窯は大丈夫かって。今回(窯は)修復不可能なので、やり直さないといけない。

取材に答える篠原敬さん:
体もガタきていて、体力的にもしんどいなって思いますけど。なんとかしないとね。

記者:
毎回、同じ事を聞かれるじゃないですか。
篠原敬さん:
毎回、同じこと聞くよね。

篠原敬さん:
でもね、ありがたいことに…自分の気持ちを整理できる。聞かれると。聞かれるたびに、メール返すのもそうだけど、頑張りますって言っちゃった限りはやらなきゃいけない。なんとかなるでしょ。

今回の地震では、珠洲市で1人が死亡、39人が重軽傷を負い、全壊は16棟、半壊15棟、一部破損が704棟と、1年前とは比較にならないほどの大きな被害が出た。(15日午後1時時点)

篠原敬さん:
秋草文の骨壺。中世の人たちは、こういう秋草を描いて、人生の終末を表して、それに骨をいれた。かっこいいだろ?秋草。これ割れなかった。

篠原敬さん:
さあ!(記者に手袋を渡す)

葛藤を抱えながらも、篠原さんは、珠洲焼と向き合う意味を問い続けている。

(石川テレビ)

石川テレビ
石川テレビ

石川の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。