テレワークができる企業も増えた中、ひとつの課題となっているのが、上司・部下のコミュニケーション不足だろう。新年度がスタートし、社内で面談をした人もいるかもしれないが、“本音”で話し合うことはできただろうか?

そんな中、ビジネスチャット「Chatwork」を提供している、Chatwork株式会社がこんな調査を実施した。

Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より
Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より
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調査は「Chatwork」のアカウントを持つ20代~70代の男女1438人を対象に、2月21日〜3月7日に行われたもの(対象地域は全国・メール送付による調査)。

この調査によると、まず「上司・部下とのコミュニケーションで課題を感じるか」との質問に対し、「とても感じる・少し感じる」と回答したのが計60.8%。「あまり感じない・全く感じない」としたのは39.3%で、約6割のビジネスマンが上司・部下とのコミュニケーションに何らかの課題を抱えていることがわかった。

Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より
Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より

また「課題をとても感じる・少し感じる」と答えた人の中で、「コミュニケーションの課題を解決したいと、とても思う・少し思う」人は計87.1%と、9割近くが上司・部下とのコミュニケーションを改善したいと望んでいるという。

Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より
Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より

そんなコミュニケーションの問題を解決できるひとつの場が、個人面談。業務上の問題や悩みなどについて、サシで話せる貴重な機会でもある個人面談だが、「本音で話せる」人は16.6%だというのだ。

「ある程度話せる」が最も多く63.5%という結果も出ているが、「ほとんど話せない・全く話せない」という人も計19.9%と、本音で話せる人の数を上回る結果が出た。

この数字は上司側・部下側の立場それぞれの人が含まれるため、上司・部下ともになかなか“本音トーク”ができていない現状があるようだ。
そんな個人面談で「よく話す内容」について「業務進捗・会社の方針・スキルの向上・人間関係・キャリア・心身の状態・プライベート」の7つの中から聞いてみると、「業務進捗」が最も多く、「会社の方針」「スキルの向上」が続いた。

Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より
Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より

一方、「個人面談で話したい・話すべき」と思う内容については、「業務進捗」が最も多いことは変わらないものの、続くのは「キャリア」「スキルの向上」。

「キャリア」については、個人面談でよく話す内容としては7つのうちの5番目なのだが、実は「話したい」と思われているテーマのようだ。

Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より
Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より

逆に「会社の方針」については、「話したい・話すべき」テーマとしては4番目に順位を落とすなど、実際に行われている個人面談は“本当に話したい内容”と多少の乖離があることもわかった。
 

Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より
Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」より

だからといって、個人面談が軽視されているわけではなく、「個人面談は必要だと思うか」という質問には「とても必要だと思う・必要だと思う」と回答した人が合計で83.6%と、多くの人が個人面談は重要なものだという認識だった。

会社の中で「腹を割って話す」「本音でぶつかる」というのはなかなかハードルが高いことかもしれないが、円滑な社内コミュニケーションのために面談で“本音トーク”をするためには上司・部下ともに何が必要なのか。Chatwork株式会社にお話を聞いた。

個人面談が相談の場ではなく、単なる業務連絡の場に

――今回「上司・部下のコミュニケーション」に関する調査を実施した経緯・理由は?

元来、離職理由などの調査からは「人間関係への不満」が、組織への不満の本音として多い傾向が読み取れる結果が多くあります。さらに、テレワークの導入など、オフィスで対面する機会も減ったことが、社内コミュニケーションにどのような影響を及ぼしているのか、その実態を調査する目的で実施しました。


――「上司・部下とのコミュニケーションで課題を感じる」という人が計6割以上。この「コミュニケーションの課題」とは、具体的にはどんなこと?

「本音で話せる」人が2割未満と非常に少ないことから、具体的には以下のような問題点を解消することが課題になっているのではないかと考えます。

・相談事項を気軽に相談できない
・困っている時に抱え込んでしまう
・やってほしいことを上司から部下に指示できない
・仕事上では良い関係ではあるものの、休憩時間などの会話がない
・趣味嗜好や性格がわからず人間性がわからない
 など

休憩時間の会話が少ないことも「コミュニケーションの課題」(イメージ)
休憩時間の会話が少ないことも「コミュニケーションの課題」(イメージ)

――個人面談で「本音で話せる」人は16.6%、「ほとんど話せない・全く話せない」人は19.9%。この数字の受け止めについて聞かせて

「ほとんど話せない・全く話せない」という方は一定数いると考えており結果はおおよそ想定の範囲内でしたが、「本音で話せる」と回答した方は想定よりも少ない印象を受けました。個人面談が相談の場ではなく、単なる業務連絡の場になってしまい、本音で話せる仕組みとして運用されていないケースが多いのではないかと推測しています。


――「本音で話せる」人は少数だが、個人面談を8割以上が必要性を感じている。上司・部下が本音で話し合えない理由はどんなものがある?

上司部下の面談での話題は、業務の進捗や会社の方針に関する話題が多くなりがちで、重要性は感じているものの緊急度の観点からおざなりになってしまうケースも多いのではないでしょうか。

また、「話したい・話すべき話題」として挙げられている「キャリア」「スキル向上」という話題はそれ自体が個人の本音に近づく話題でもあるので、これらに向き合わないことがすなわち本音を遠ざけている要因にもなりうると考えます。

面談で何を話すべきか、また話したいかを上司・部下間で事前にすり合わせ、面談に対する期待値を揃えておくことで、より充実した面談となり、本音を引き出すことにつながるのではないかと考えます。

時には「プライベート」を話題にすることも必要

――個人面談で本音を引き出す・コミュニケーションを円滑化させるためには、上司・部下それぞれどんなことが必要?

いずれの立場でも自己開示が必要であると考えます。一方的に相手に質問をするだけでは本質的なコミュニケーションとは言えないので、まずは自分を理解してもらった上で、相手に話を投げかけることで建設的なコミュニケーションができると考えます。


――ちなみに、個人面談では、プライベートな事柄になるにつれてあまり話さない・話したくない人が多いという結果も。セクハラ・モラハラなどの問題もある中「プライベートな事柄」について面談で切り込むことは必要だと思う?

上司・部下間の関係性にもよりますが、「本音を話せる雰囲気づくり」に向けた、アイスブレイクの要素としては必要なのではないかと思います。

ワークライフバランスやワークライフインテグレーション(編集部注:仕事とプライベートを統合する考え方)といった言葉があるように、仕事は人生の一部でもあります。個人の理想的な働き方やキャリアパスを話す上では、家族やライフプランといったプライベートな話題も時には相互理解の促進につながるのではないでしょうか。

ただ、大前提として人によっては仕事上でプライベートな話題に抵抗を感じる人もいるので、ある程度関係性を築いてからであったり、踏み込みすぎない話題を選択するなどの配慮は必要だと思います。

プライベートついて話すことも時には必要(イメージ)
プライベートついて話すことも時には必要(イメージ)

Chatwork株式会社が「日常的に取り組める上司・部下のコミュニケーションを活発化させるコツ」として挙げているのは、個人面談を実施する頻度を増やすこと。

さらに、業務の進捗や目標の管理などの話題のほか、「あまりプライベートな話をしたくない人もいるため取り扱う話題は段階的に選択していくべき」とした上で「一歩踏み込んで仕事へのモチベーションやキャリアに関する話題やプライベートの話題を持ちかけてみる」ことで「これまでに知らなかった上司・部下の一面が見えて、関係性の変化が生まれる可能性がある」と話している。

なかなか本音で話せていないという個人面談。上司の立場にある人は、まずは一方的に内容を決めてしまうのではなく、部下と「何を話すべきか・話したいか」のすり合わせをすること。そして部下が「何を話したいか」をはっきりと伝えられるようにするため、日常的に緊張感を取り除くことが、本音でのコミュニケーションの第一歩のようだ。

(引用:Chatwork株式会社「上司・部下のコミュニケーションに関するアンケート調査」

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。