行動制限のない大型連休に、新型コロナの5類移行。観光地はもちろん、被災地にも、にぎわいが戻りつつあると言える。一方で震災の記憶を語り継ぐ、いわゆる「語り部」たちが伝承活動に不安を抱えているというアンケート結果が出た。ポストコロナ時代の震災伝承の在り方に迫る。
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オンラインで広がった「伝承の輪」
佐藤敏郎さん:
一言コメントして、あとは「お願いします」でいいですよね。
![宮城県石巻市で語り部活動をしている佐藤敏郎さん(59)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/8/700mw/img_6867dde83ffee3b9fc17a32eea233986239944.jpg)
東日本大震災の津波で、大川小学校に通っていた次女・みずほさんを亡くした佐藤敏郎さん(59)。被災経験の有無に関係なく、伝承活動に関わる全国の若者とオンラインでつながり、常にそれぞれの思いに耳を傾けている。
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石巻市で被災・名古屋で語り部 岩倉侑さん(20):
若い世代はよく分からない時の話をされて、「あれが大事、これが大事」と言われても、自分の事として捉えるのは難しい。地震に限らず、豪雨だったり台風だったり、関心を持たせることが大事だと最近思う。
神戸在住の大学生 岡崎菜々子さん(20):
“日常の幸せを作るために”と思ったら、防災をすごく身近に感じるんじゃないかというのを最近になって感じるようになって、その点でも自分の伝え方とか変わってきたかなって…。
オンラインで全国の人とつながり、防災などについて話し合う「ソナエトーク」。佐藤さんは元々、オンラインの活動を模索していたが、新型コロナの感染拡大が始まった2020年4月からこの活動を始め、月1回ペースで開催。今回で37回目を迎えた。
![オンラインで防災などについて話し合う「ソナエトーク」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/8/2/700mw/img_82c5708f7aad0be0dc6c89645d29067d256635.jpg)
佐藤敏郎さん:
オンラインは地域・立場を超えるし、きょうは世代を超えた。そういうのって、なかなかオンラインじゃないとできないと思っている。
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語り部を支援する「3.11メモリアルネットワーク」が、被災3県の伝承団体を対象に行っているアンケートによると、2020年、被災地を訪れた人は、新型コロナの影響で前の年より大幅に減少。オンライン語り部や動画配信など、震災を伝えるための工夫が進んだ。語り部などの震災学習プログラムに取り組む団体のうち、2022年は9割近くがオンラインを活用していた。
![リモートでの語り部活動](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/8/700mw/img_f8bdbf41727aacbc7cdee896ac6d3ba5270976.jpg)
佐藤敏郎さん:
オンラインガイドも始めたら、1度に1000人とか2000人を案内できたりしたわけですよ。裾野がとても広がったと思う。「コロナ禍が収まったら現地に必ず行きます」というきっかけになった。
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また、同じアンケートにより、2022年1年間に、被災3県の35の震災伝承施設を訪れた人の数は、約115万人で過去最多となった。中でも、震災伝承プログラムを実施する9団体と、伝承施設5施設によると、高校生以下の割合が増えたのが特徴で、「修学旅行の代替としての利用が増加した」などの回答が寄せられた。
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その一方、活動を続ける上で「不安を感じる」と答えた団体は2022年96%にのぼり、コロナ禍が始まった2020年を大きく上回った。
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不安を感じている語り部の1人が、宮城県南三陸町にいるというので、取材に向かった。
変わる震災伝承のカタチ
![復興進む南三陸町](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/7/d/700mw/img_7d3d1728731c1b4004b339fb0d4edaa5188824.jpg)
「語り部バス」のガイドを務める伊藤俊さん(48)。伊藤さんが勤める南三陸町のホテル観洋では、震災を経験した職員が語り部となり、町内をバスで巡っている。
![「語り部バス」でガイドを務める伊藤俊さん(48)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/b/f/700mw/img_bfbbd06da14c1abe503754c9e0d004c0248000.jpg)
南三陸ホテル観洋 伊藤俊さん:
今見たら防潮堤しかないんですが、本当は住宅があったんですよ。
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語り部バスの効果もあり、ホテル観洋の修学旅行などの受け入れ数は、2021は過去最多を記録したという。
南三陸ホテル観洋 伊藤俊さん:
近場で有効な旅行ができる場所ということで、(修学旅行先に)選ばれるケースが増えたので、コロナ前と後では大きく変わった部分かなと思います。
![南三陸町さんさん商店街](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/2/3/700mw/img_234b0c614e1d52df59e312674c30ce92237243.jpg)
取材したのは、新型コロナが5類に移行する約2週間前。伊藤さんは“新たな壁”に向き合うことになると感じていた。
南三陸ホテル観洋 伊藤俊さん:
コロナ禍で出かけられる時期が少なかった分、“楽しむ”ことが、旅行の動機として大きいんじゃないかな。どうしても、大きな観光地や大勢の人が訪れるような場所に集中しているのかなというのが実感としてはあります。
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修学旅行先が、すでに従来の行先に戻っている学校もあるという。伊藤さんは震災の教訓をつなげていくためにも、被災地を訪れてもらう工夫や、担い手の育成が必要だと感じている。
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南三陸ホテル観洋 伊藤俊さん:
伝え手もしっかり皆さんにお伝えできるような、工夫・研さんが時代の変化とともに必要ではないかと思います。
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新型コロナの影響を受けながらも、つなぎ、広げてきた伝承の輪。5類移行は、語り部たちの活動にどんな影響を与えるのか。大きな転換点を迎えているのかもしれない。
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(仙台放送)