新型コロナウイルスの感染拡大とともに、「テレワーク」や「在宅勤務」という言葉もよく耳にするようになった。

そのような中、株式会社パーソル総合研究所が「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」の調査結果を6月10日に発表した。

調査は全国の20〜59歳の正社員2700人を対象に、3月9〜15日にインターネット定量調査で行われた。また対象となる正社員の内訳は、テレワーカー1000人、同僚にテレワーカーがいる出社者(非テレワーカー)1000人、テレワーカーをマネジメントしている上司層700人となる。

調査結果では、テレワーカーが占める割合が2〜3割の職場で、不安感・孤独感を持つ人が最も高く、テレワーカーと出社者が混在する「まだらテレワーク」に注意が必要だとした。

テレワーカーで少しでも不安を持っている人は6割超

まずはテレワーカーが抱く不安を見てみると、1位「非対面のやりとりは、相手の気持ちが察しにくく不安だ」(39.5%)、2位に「上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか不安だ」(38.4%)が続いた。

不安に関する設問は12項目あるが、どの項目に関しても約30〜40%の人が不安を抱えているという結果となった。

また、12項目のうち1つでも不安を持っている人の割合は64.3%で、半分以上のテレワーカーが何かしらの不安を抱えていることが分かった。

提供:株式会社パーソル総合研究所 「テレワーカーの不安」

一方で、そのテレワーカーを管理する立場である上司はどうなのだろうか?

上司の不安に関する設問として、「長時間労働になっていないか心配になることがある」など9項目で調査したところ、どの項目に関しても30%〜40%の上司が不安を抱えていた。

1位は「業務の進捗状況がわかりにくく不安に思うことがある」(46.3%)、2位は「非対面のやりとりは、相手の気持ちが察しにくく不安だ」(44.9%)となった。

また9項目のうち1つでも不安を持っている上司の割合は75.3%で、テレワーカー本人よりも何かしらの不安を抱えているという。

テレワーカーに対して出社者の半数以上が不満や疑念

そして最後に出社している側だが、出社者がテレワーカーに対して、1つでも疑念・不満を持っている割合は、58.1%とこれも半数を超えていたのだ。

提供:株式会社パーソル総合研究所 「出社者の疑念・不満」

出社者が抱えている疑念・不満の上位には、1位「仕事をさぼっているのではないかと思うことがある」(34.7%)、2位に「相談しにくいと思うことがある」(32.3%)が続く結果に。

自宅などで仕事をするテレワーカーの様子は、社内にいる同僚には分からないため、出社している側からすると、誰にも見られていないことをいいことに「仕事をさぼっているのではないか」と疑ってしまう人もいるようだ。

テレワークの頻度が多いと孤独感も高くなる傾向

またこの調査では、テレワーカーの「孤独感」についても調べている。28.8%が「孤立していると思う」と約3割が孤独を感じており、加えて、テレワークの頻度が多い人ほど孤独感も高くなる傾向があるという結果となった。

提供:株式会社パーソル総合研究所 「テレワーカーの孤独感」
提供:株式会社パーソル総合研究所 「テレワークの頻度と孤独感」

テレワーカーは自宅で1人、同僚とも会話をすることなく黙々と作業することから、不安や孤独をより感じやすくなっていることはあるかもしれない。

不安感や孤独感は”まだらテレワーク”が要因も

このテレワーカーの不安感や孤独感だが、職場におけるテレワーカーが占める割合によっても違いがあることが分かった。

テレワーカーが、「1割程度」「2〜3割程度」「4〜5割程度」「6〜10割程度」に分けると、比率が2〜3割の時がテレワーカーの不安感や孤独感がピークとなったのだ。以降はテレワーカーの割合が増えるにつれ、不安感と孤独感は減少傾向にあった。
 

提供:株式会社パーソル総合研究所 「職場のテレワーク比率と不安感・孤独感」

その一方で、職場におけるテレワーカーの比率が高くなると、出社者のテレワーカーに対する疑念・不満は高くなっていくという。

提供:株式会社パーソル総合研究所 「職場のテレワーカー比率と出社者の疑念・不満感」

出社者は「テレワークを実施している人が多いのに、なぜ自分は出社しているのか?」という気持ちとなり、そしてテレワーカーが増えるほど不公平感を持つのかもしれない。

「出社勤務者に雑用をふられる傾向があり不満だ」と回答した人が、テレワーカーの比率が6〜10割程度では、1割程度の時と比べて1.7倍というのも、この不公平感のあらわれだろう。

今回の調査で、テレワーカーが不安や孤独を感じている一方で、出社者は不公平を感じていることがあることも分かった。

新型コロナウイルスの影響もあり、今後もテレワークは続きそうだが、何か対策はあるのだろうか? 今回の調査を担当した株式会社パーソル総合研究所・研究員の青山茜さんに話を聞いた。

今後テレワークが長期化すればするほど不安感は増加していく

ーーこの調査をしたきっかけを教えて

本件調査はbeforeコロナの昨年(2019年)から計画していました。

当初の予定は2020年の東京オリンピックを控え、テレワークが拡大することを見据えたテレワーク実態・意識調査でしたが、今年になり、新型コロナ感染拡大の影響からテレワークが急速な広がりを見せている状況を踏まえ、テレワーカーの不安感・孤独感にフォーカスした内容に調整し、調査の実施に至りました。


ーー調査実施は3月だが、現在は意識に変化があった?

調査は3月に実施しておりますが、テレワーカーの調査対象者は「2019年12月以前から1ヵ月に2日以上テレワーク実施者」という条件で絞っています。

新型コロナへの対策にともなって「にわかテレワーカー」となった人ではなく、これからテレワークが拡大・常態化することを見越し、「テレワークが常態化してる層」に何が起きているかを把握するためです。

別途、全国2万人規模の緊急テレワーク調査を3月と4月と5~6月に3回実施していますが、4月に行った第二回調査の「初めてテレワークを実施した層」と比較すると、テレワークの不安感は「初めてテレワークを実施した層」よりも継続して恒常的にテレワークをしている層の方が大きいことがわかりました。

これは今後テレワークが長期化すればするほど不安感は増加していくことを示唆しています。


パーソル総合研究所が6月11日に発表した「第三回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」の結果で、テレワークの不安について4月と5月を比較すると、「上司からの公平・公正な評価」「成長できる仕事の割り振り」など、社内の評価・キャリアへの不安が高まっていた。また、これらの不安は若い年齢ほど強かったという。

提供:株式会社パーソル総合研究所 「不安に関する4月と5月の比較」

濃密な「ホウレンソウ」が対処法の1つ

ーー出社者の疑念・不満感への対処法はある?

「テレワーカーはさぼっているのではないか」という疑念に対しては 「業務状況の見える化」が対処法としてあげられます。進捗状況が見えることで、業務が滞っていないことを確認できれば 「さぼっている」という疑念は取り除けるでしょう。

簡単に取り組めることとしては、短くてもよいので毎日の進捗共有をするミーティングを実施することも有効です。

また、「公平な人事評価を受けられるのか」という評価に対する疑念ですが、これは上司のマネジメントで解消することが可能です。

今回の調査結果では、「上司が業務の状況などの【部下の情報】を把握している」ということが、出社者の疑念・不満感を低下させていることがわかりました。「上司は自分のことを正確に把握した上で評価している」ということが感じられれば、上司から受ける評価への納得感が増し、出社者の不満感が抑制されます。

「業務不可が増えている」「雑用がふられる」などの不満も見られるため、業務量に不公平感が出ないような仕事の割り振りも重要です。


ーーテレワーカーの不安・孤独感への対処法を教えて

【不安感について】
テレワーカーの不安感は出社者と同様のことが言え、「さぼっていると思われるのでは」という不安に対しては、日々の業務の進捗共有などが有効であると考えます。業務の進捗状況の見える化が必要でしょう。

また「公平な人事評価を受けられるのか」の不安に対しても出社者と同様で、「上司がしっかり自分の業務を見ている」ことを感じることで、不安が低下していることが分かりました。テレワーカーが職場にいる上司は、より一層「観察力」を高めることが求められます

【孤独感について】
メンバー間で相互支援が活発に行われている組織風土が醸成されている職場では、テレワーカーの孤独感が抑制されていることが分かりました。離れた場所で働いていても、わからないことがあったらすぐに同僚に相談できるような組織風土づくりが有効です。

また、「自分だけ知らない情報」があるなどの情報格差は孤独感を強めるリスクがあるため、情報格差を生まないような、情報共有の仕組みが必要ですし、ルールの明文化も必要です。

上司が求められるマネジメントは

ーー調査結果が話題になってるけど、どう思う?

業種・職種・企業規模などによって格差はあれど、一部においてテレワークの定着は進むと思います。また、テレワークが継続して行われることで新たな課題が出てくると思いますので、一つ一つ解決していく必要があると思います。


ーー反響はあった?

不安感・孤独感は、発表後すぐに全国紙やネットメディアで複数報道され、興味関心の高さがうかがえました。また、本件調査とは別の全国2万人規模の緊急テレワーク調査を3回実施していますが、大変多くのメディアに取り上げられ、連日企業からも問い合わせをもらっています。

省庁や自治体からの問い合わせもあります。テレワークへの関心の大きさが窺えました。社内からも調査結果に対し、共感の言葉をいただきました。


調査員の青山さんは分析コメントで、「今後、テレワーカーと出社者が混在する『まだらテレワーク』と言える職場が増えていくだろう。『まだらテレワーク』の職場では、テレワーカーが少数派になることで周囲の目が気になって心理的なプレッシャーが増し、不安感が増す。最も不安感が高いのはテレワーカーの比率が2~3割程度の職場だ。出社者がテレワーカーに対して疑念・不満を抱いている点も無視できない」といい、上司には部下へのマネジメントが求められるということだ。

また、上司が求められるマネジメントとして、「観察力(部下に関する情報を把握するスキル)を高める」「部下とのコミュニケーションを意識的に増やす」「出社者の疑念・不満感も無視しない」ことが挙げられた。

今後、テレワークが当たり前となる企業も増えていき新たな課題がでてくるかもしれないが、まずは「まだらテレワーク」における出社者とテレワーカーへのケアが重要なようだ。
 

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