総人口や出生率を試算する「将来推計人口」が公表され、50年後の日本の総人口は8700万人になる見通しであることが分かった。

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国立社会保障人口問題研究所は、5年に一度公表する「将来推計人口」によると、日本の総人口は2056年に1億人を下回り、2070年には現在の約7割の8700万人に減少すると発表した。

前回の推計と比べ、長期の出生率の見通しは低下したものの、外国人の入国者が増加すると見込んでいる。

人口減少の進行がわずかに緩和され、1億人を下回る時期は、前回より3年延びた。

また、2070年の平均寿命は、男性は85.89歳に、女性は91.94歳に伸び、高齢者の人口は38.7%に上昇するという。

人口減少にあった国づくりへの転換が現実的

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
日本の人口減少、どうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
日本の人口問題を考える際に、2つの議論があると思います。一つは、どうやって出生率を上げて、人口を増やすか。もう一つは、人口減少は避けられないものとして、それを前提に、国のあり方や、経済成長を考えようというものです。

日本の1.33%という出生率は、実はアジアの中で、飛び抜けて低いという数字ではありません。

中国は、一人っ子政策から転換して日本よりも出生率が高いですが、工業化を進めて経済が成長している韓国、台湾、シンガポール、マレーシアなどは、日本よりも出生率が低くなっています。

住宅や教育費への負担が重くなると、子どもの数が減る傾向にあり、これは、そのまま日本にもあてはまります。

日本で人口を増やそうとしたら、社会保障や働き方に加え、住宅や教育政策も大きく転換しなければならず、お金も時間もかかります。

もちろん、子どもの数を増やすことも重要ですが、戦略的に人口減少にあった国づくりへの転換が、現実的な対応なのではないでしょうか。

堤 礼実 キャスター:
人口減少が進む中で、どのような国づくりが求められるのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
実は、いまから高齢化への対応を進めても、財政上の縛りもあって人口減少に追いつかない可能性があります。

都会よりも地方の方が人口減少が早く進むため、効率的で便利な街づくりとして、地域の中核都市に人々を集めるコンパクトシティの整備が必要。

さらに、日本全土のインフラ整備などが本当に必要なのか、時代にあった国づくりについて、もっと議論すべきです。

人口減少が経済格差を広げる

堤 礼実 キャスター:
これからの日本は、かつて経験したことのない対応が、求められるのかもしれませんね。

エコノミスト・崔真淑さん:
人口が減ると、競争原理が働かなくなり、イノベーションが起こりにくくなる可能性があります。そうなると、資本主義や民主主義の停滞につながり、低成長によって格差がさらに広がることが考えられます。

人口が減少する中でも、イノベーションや生産性を向上させることは可能であることを、日本が示すことができると、世界に希望を与えることになるはずです。

堤 礼実 キャスター:
人口減少は、長年の日本の課題です。もちろん、国としての政策も重要ですが、私たち一人一人も、この課題をしっかりと受け止めて、経済成長のためにも一人あたりの生産性を上げていくことが求められているのかなと思います。

(「Live News α」4月26日放送分より)

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