衆参補選・統一地方選で見せた菅氏の“存在感”
「こんなに人が集まっているのは久しぶりに見た」
4月21日、千葉県のJR市川駅前を訪れた人がつぶやいた。衆院千葉5区の補欠選挙の応援演説に入った菅義偉前首相を一目見ようと、ロータリーには大勢の人が詰めかけた。「菅さん頑張って」との声援も飛んだ。

今回の衆参の補欠選挙と統一地方選挙で、菅氏は精力的に応援演説を行った。北海道、山口県、和歌山県、千葉県など、各地をまわって存在感を見せた。前首相としての集客力もあり、ある自民党幹部は「自分が応援に行くよりも菅さんのほうが票につながる」と話した。

菅氏の今の一丁目一番地「出産費用の保険適用」
各地での応援演説をする中で、菅氏が決まって口にする言葉がある。それは「出産費用の保険適用」だ。
現在、出産の費用は、自然分娩の場合は、健康保険が適用されず、自費で負担しなければならない。政府は、4月から出産一時金を42万円から50万円に引き上げた。

しかし、菅氏は「一時金が引き上がると出産費用も上がってしまう。発想を思い切って切り替えて出産を保険適用にし、自己負担分を助成すれば、誰でも安心して出産することが可能になる」と訴えた。
かつて菅氏は、首相時代に不妊治療の保険適用を主張し、実現の道を開いた。その菅氏の一丁目一番地の政策が、「出産費用の保険適用」だ。
これを受け、政府が3月31日に発表した岸田首相の異次元の少子化対策のたたき台では、「出産費用の保険適用の導入を含め出産に関する支援等の在り方について検討を行う」との文言が盛り込まれた。永田町では、岸田首相が菅氏の影響力に配慮したとの見方が出ている。
補選は「大接戦多い。しっかり説明を」と自民に苦言
菅氏は、衆参5つの補欠選挙で自民党が4勝1敗となったことについて「自民・公明の連立政権が評価されている」とする一方、「大接戦の場所が多くある」と指摘し、「しっかり説明していく必要がある」と苦言を呈した。

ある自民党関係者は「菅氏は経験も実力もあるので、放っておくと怖い。政府としては取り込みたいと思うのが普通だ」と語った。
非主流派ながら存在感を示す菅氏に、岸田首相は、どう対応していくのか。その距離感が図る指標の一つとなりそうなのが、出産費用の保険適用に向けた検討の行方だ。
保険適用の課題として指摘されるのが、出産費用の地域格差だ。2021年度の厚生労働省の都道府県別出産費用の調査では、一番高い東京都(56万5092円)と一番低い鳥取県(35万7443円)では、20万円以上の開きがある。格差の大きい中、保険を適用する標準的な診療報酬をどう定めるのかは簡単ではない。
衆院の解散総選挙、来年9月の見通しの自民党総裁選を睨んで、今後、岸田首相が最終的にどういう決断をするのかが注目される。
(フジテレビ政治部)