ENEOSと三菱商事がタッグを組み、物流業界が抱える2024年問題の解決に乗り出した。

秀総一郎記者:
自宅に届く荷物の配送拠点として活用するのは、ガソリンスタンドです。

ENEOSと三菱商事は、宅配荷物の一時保管や、最終的な配送拠点として、エネオスのガソリンスタンドを活用する新たな事業を開始する。

2026年度の本格的な運用開始を目指し、2023年4月から東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県で実証実験が始まった。

ガソリンスタンドに搬入された荷物を配達するのは、インターネット経由で単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」だ。

ギグワーカーは、どのガソリンスタンドで集荷し、どこに配達するかをアプリ上で確認できる。

物流業界をめぐっては、ネット通販の市場拡大に伴い、宅配荷物の量が急増。2024年4月からの2024年問題への対応が急がれる。

今回の取り組みでは、最終配送拠点から配送先までの区間「ラストワンマイル」を短縮し、ドライバーの負担軽減や、配送の効率化などにつなげたい考えだ。

三菱商事 次世代エネルギー部門 リファイナリー事業部・田村太郎さん:
広がったネットワークを生かして、モビリティーであったり、地域のコミュニティーであったり、そういうものに資する新しいサービスというのをのせていければ、と思っている。
ガソリンスタンドならではの新規事業
「Live News α」では、マーケティングアナリストの渡辺広明さんに話を聞いた。
堤 礼実 キャスター:
渡辺さんは今回の試み、どうご覧になりますか。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
ガソリンスタンドは28年連続で減少しており、1990年代中頃のピーク時と比べて半減している。
今後のクルマのEV化と、少子高齢化によるドライバーの減少を考えると、ガソリンスタンドが生き残るためには、新しい収益の柱が求められている。
今回の取り組みは、社会に求められる「Must」と、ガソリンスタンドだからこそできる「Can」が一致した新規事業と言える。
堤 礼実 キャスター:
「Must」と「Can」とは、具体的にはどういうことでしょうか。
マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
まず、ガソリンスタンドに求められている「Must」。2024年にドライバーの時間外労働が制限されることで、ドライバー不足がさらに加速するとされ、「宅配の崩壊」がささやかれている。
ドライバーの負担軽減のためには、配送拠点のさらなる整備や効率化が求められており、今回の試みはその一助になりそうだ。
続いてガソリンスタンドができることの「Can」。ガソリンスタンドは、車両のスムーズな出入りを前提として設計されており、広いスペースがとれる店舗なら、時間をかけずに物流拠点に転換できるのではないか。
エネオスの、全国で1万2000カ所を超えるガソリンスタンドをうまく活用できると、物流業者が自前で再整備するよりも、かける時間もコストも少なく、配達の効率化やドライバーの負担軽減につなげられる。
ガソリンスタンドからのサービス拡大に期待
堤 礼実 キャスター:
さらには、ガソリンスタンドが地域の課題解決の拠点になっていくといいなと思うのですが、いかがですか。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
地方ではシニアを中心に、いわゆる「買い物難民」の増加が懸念されているが、コンビニが併設してあるガソリンスタンドから、商品の配送なども考えられる。
配送にたずさわるギグワーカーは、ガソリンスタンドを待機場所として利用でき、さらに配送の空き時間には、車の洗車などのサービスを担ってもらうと、収入のアップも期待できる。
今回の実証実験で、収益への課題を洗い出し、全国にサービスが広がることを期待したい。
堤 礼実 キャスター:
物流の課題解決につながり、ガソリンスタンドの経営を安定させ、地域で暮らす方たちにもメリットがある。こういった取り組みが広がるといいですね。
(「Live News α」4月25日放送分より)