内戦が激化しているスーダンに残留する日本人を退避させるため、自衛隊機が近隣国のジブチに派遣され、23日到着した。政府は、場合によってはスーダン国内で陸上自衛隊が日本人を陸路輸送することも想定している。戦闘が続く国で自衛隊による日本人退避の陸上輸送が実現すれば、自衛隊史上初めてとなる。

23日のフジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)では、日本人退避のための自衛隊派遣の課題について議論した。戦闘が行われている地域からの自国民退避のオペレーションは、どの国の軍隊にとっても非常に危険で困難なものだ。日本の場合、救出を待つ自国民や、救出にあたる自衛隊員らの生命がさらに危険にさらされかねない、“自衛隊特有の制約”が課されているとして、出演者らが改めていくべきだとの主張を展開した。

以下、番組での主なやりとり。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事、元大阪市長):
陸上輸送の場合、最低限の武器だけでは足りないこともあるのではないか。

河野克俊氏(元統合幕僚長):
普通なら、自分たちを守る状況以外は武器を使えないが、(日本人退避のための)陸上輸送では任務遂行上必要なときは武器を使える。例えば、バリケードを取り除かなければならない場合は威嚇射撃とか(可能だ)。正当防衛、緊急避難以外は相手を傷つけてはいけないという要件はそのままかかっている。ちょっとは柔軟な武器の使用はできるのだが、重火器は全然想定していない。

橋下氏:
任務遂行型の武器使用が認められている形になっているけれども、任務遂行できるだけの武器までは装備されてないのではないか。

河野氏:
いや、その場合は持って行く。

櫻井よしこ氏(ジャーナリスト、国家基本問題研究所理事長):
それを使えるかどうか。空路で(退避日本人を)運べればいいが、陸路輸送になるような場合、日本の自衛隊だけの車列、コンボイは非常に困難だ。だから、ほかの国々との連携が取れるのかどうか。武器の使用についてはやはり政治決断をしなければいけない。私たちの国は、ついこの間、自衛隊機を(海外に)出すなどと言ったら大騒ぎだったが、今は全然反対がない。去年12月閣議決定された安全保障戦略三文書で、ジブチを邦人救出の拠点にするというのが入った。それまでは海賊対処だけだった。海賊がいなくなったら、ジブチに駐留する自衛隊をどうするのかとなるが、そうはならず、ジブチは非常に重要なところだから邦人救出のための拠点にするという文言が入った。だから今回(自衛隊機が)ものすごく早く行けた。少しずつ変わっている。もっと変わって、この武器使用についても普通の国のようにしないと、派遣される自衛隊員らは大変だ。

橋下氏:
それをやるのが政治家の使命だ。自衛隊員としてはいかんともしがたいところがあるわけだから。

河野氏:
いま櫻井さんが言われたように、私が若い頃は自衛隊を外に出すなんて大騒ぎだった。今は派遣するといっても何の議論もない。皆当然のことと思っている。それだけ自衛隊に対する信頼感があり、国内世論も変わった。今までは、自衛隊に相当制約をかけてオペレーションさせてたわけだが、もうそろそろ次の段階に入ってもいいのではないか。

橋下氏:
そうですね。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
けさの橋下論は「脱・想定外」。今の話にも関わってくることか。

橋下氏:
ええ。今は憲法9条が前提で自衛隊の活動は全部細かく法律で決めることになっている。自衛隊の活動について政治家がもっと活動しろ、活動しろということになってきて、法律は本当に複雑になってきている。法律が複雑になればなるほど、想定外がどんどん生まれる。(スーダンのような)危険地域(での活動)も、ある意味有事の時にはやってはいけないことだけをきちっと書いて、あとはもう現場で判断して、頑張ってやってくれというような、ネガティブリスト方式に変えるべきだ。ただ、ここはいろんな意見がある。僕の持論は憲法から変えていくこと。日本の法体系をガラッと変えるためには、憲法を変えてから法制度を変えるというのが僕の持論だ。少なくとも法律上変えられるのであれば、ネガティブリスト方式にして、危険地域でのオペレーションの場合にはやってはいけないことだけを書いて、あとは自由にやってほしいという法制度にしないと、自衛隊員の命を危険にさらすわけだから。今は法律に書いてあるか、書いてあるかと、書いてあることしかできない。河野さん、現場の自衛官としては、これは法律に書いているか、できるかできないかの判断ばかりではないか。

河野氏:
おっしゃる通り。悲しいかな、これは自衛隊の歴史に負っている。今の陸上自衛隊は警察予備隊から来ている。海上自衛隊も海上保安庁の一部局が分離発展してできた。源流をたどると警察だ。従って今の自衛隊法は警察法のようなポジティブリスト方式になっている。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長、解説委員):
例外的にできることだけを規定している。

河野氏:
そうだ。本来の軍組織はネガティブリスト方式だ。すべて(の国が)そうだ。いま憲法9条に自衛隊明記という話がある。明記すれば違憲論はなくなるが、自衛隊法は恐らくそのまま残る。いま自衛隊が抱えている矛盾は、自衛隊を憲法9条に明記するだけでは変わらないはずだ。

橋下氏:
憲法改正はもう絶対必要だ。政治家たちは改正することが目的になっている。自衛隊を憲法に明記することは必要かも分からないが、隊員の安全を守るためにネガティブリスト方式にするための憲法改正や、国を守るための憲法改正ではなく、なにかちょっと改正することが目的になる改正論はおかしくないか。

櫻井氏:
おかしいわね。その点では、先ほど日本社会がすごく変わっていると申し上げたが、私はこの変化がいい方向に行くのではないかと思う。先の安保三文書を読んでみると、事実上の憲法改正に等しいと思える。今まで日本は専守防衛で、国際社会は善なる存在だという前提で憲法は書かれている。向こう(の国)が良い意図を持っているのだから、こちらが悪い意図を持たなければ大丈夫だということだった。しかし、安保三文書で、意図は関係ないと書いてある。敵がどのように考えるかというのは一夜にして変わるかもしれないから、本当に大事なことは、その国がどういう軍事力を持っているかを見て、それに対応して我々も軍事力を整備すべきだと。これ、憲法の精神を逆転させている。憲法改正はできていないが、実態としてどんどん変わっている。ジブチの位置づけもものすごく変わった。橋下さんがいうネガティブリストにするために法律の改正が多少いるとしたら法律改正する。憲法改正よりもずっと簡単だ。ネガティブリストに変えて、自衛隊員の命を守りながらミッションを果たしてもらう必要がある。自衛隊員も人間なのだから。

松山キャスター:
基本できるという原則で、できないことだけを規定し、幅を持たせるということ。

河野氏:
そうだ。

橋下氏:
憲法改正を言う政治家は多いが、自衛隊明記だけで逃げてはいけない。本当に国を守る、隊員の命を守る、邦人を守るということのための憲法改正をやるべきだ。

河野氏:
今回の派遣も、これをやってはいけない、これをやってはいけないということを与えて、あとはいいよということであれば、隊員としては非常にやりやすい。

橋下氏:
今は、これをやっていい、これをやっていいということだけ。

松山氏:
ポジティブリストが前提だ。

櫻井氏:
自衛隊員はすごく真面目で法律を守る。

河野氏:
六法全書を抱えてオペレーションしなきゃいけない。

櫻井氏:
こんなことありえない。

日曜報道THE PRIME
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