神奈川県海老名市にある有鹿神社(あるかじんじゃ)が18日、Twitterに動画を投稿したところ、5万件のいいねがつくほどの話題になっている。(4月21日時点)
この記事の画像(24枚)神職の役職名称『禰宜』の周知のためにデザインされた有鹿神社のネギ禰宜というキャラクターが、半年分の穢れを祓う夏越の祓に茅の輪をくぐる年中行事の動画です。
動画が撮影されたのは神社の境内で、「ネギ禰宜(ねぎねぎ)」という頭が長ネギの形をした長身のキャラクターが登場する。
長ネギの部分は2m以上あり、頭を下げて進む先にある「芽の輪」を通ろうとするが、輪っかは腰の高さほどしかない。果たしてくぐれるのか?
長い頭や首、肩が輪に引っかかって苦戦するが、なんとかくぐり抜けに成功する展開になっている。
これは「夏越の祓(なごしのはらい、または、なごしのはらえ)」という儀式で、半年分の穢れを祓い清めるとともに年の後半の無事を願って、毎年6~7月に各地の神社で行われているそうだ。参拝者が「茅(ちがや)」という草を束ねた「茅の輪(ちのわ)」をくぐる風習は「茅の輪くぐり」とも呼ばれているという。
儀式を行うのはまだ先なので、実はこの動画は去年撮影したものだそうだ。
ネットで有名なパンダ宮司がいる神社
この動画を見たTwitterユーザーの反応は…
・禰宜さんの首が心配
・腰に気をつけて
・折れそう…ハラハラ
・この緊張感なに
・見た目の衝撃ぃ
など、長ネギの頭の部分と厳かな儀式にいろんな意味で衝撃だったようだ。
ところで、このキャラクターの見た目や、有鹿神社という名前にピンときた人もいるのではないだろうか?
こちらの神社は、パンダの被り物を身に着けた「パンダ宮司」をはじめ、キャベツや干支など様々なキャラクターがいることで、これまで様々なメディアに登場しているのだ。
茅の輪を作っているのも私です
これらのキャラクターや、今回話題になった「ネギ禰宜」の中にいるのは、有鹿神社の宮司の娘で、本当に「禰宜」をしている小島実和子さんなのだという。
動くのも大変そうな「ネギ禰宜」の姿で、なぜ「茅の輪くぐり」をしたのか?なぜ「茅の輪」はあのサイズで、大きくしないのか?
「ネギ禰宜」の中の人で、まさに「禰宜」の小島実和子さんに聞いてみた。
――なぜ「ネギ禰宜」で「茅の輪をくぐり」をする動画を公開したの?
2017年に「パンダ宮司」で正式な茅の輪のくぐり方を説明指導する動画を撮影しました。それ以降、季節の風物詩としてキャラクターによる茅の輪くぐり動画を撮影し、SNSにアップしています。
――なぜ茅の輪はあのサイズなの?
当社では2015年頃から茅の輪を製作しはじめました。
1つ目の理由としては、神職が1人で草を刈るところから作っているためです。
また、当社の特殊神事である水引祭の還御祭は6月14日で、例祭は第二日曜日。そして「夏越の祓(茅の輪くぐり)」は6月30日と、祭事のスケジュールが詰まっているという理由もあります。
もう一つ、茅の輪が近所のお店に出向いたり、地域の田んぼに行ったり出張するため、車に載せられる大きさにとどめています。旅する茅の輪と呼ばれ、茅の輪にもTwitterのアカウントがあります。
――茅の輪は誰が作っている?
ネギ禰宜やパンダ宮司のキャラクターと同じく、私 小島実和子が製作しています。
作り方は、U字型の園芸支柱を2つ組み合わせてO字型にして荒縄を巻いたベースに、刈り取った草を麻紐で巻きつけながらとめます。
葉っぱが散らかるので屋外で作業しますが、蚊取り線香や虫除けスプレーを忘れると大変痒いです。
たまに禰宜をするのは「タマネギ」と呼ばれます
――「ネギ禰宜」はどんなキャラクターで、なぜ作った?
神職の役職名称の「禰宜」の周知のためです。
私自身が禰宜ですが、一般には聞きなれない職名であるため、以前から名刺交換や自己紹介の際に苦労していました。
神職の業界用語では、神職と兼業でたまに禰宜を務めることを「タマネギ」と言いますが、私は神職が本職なので、タマネギを避けて長ネギのデザインとしました。
――「禰宜」とはどんな役職?
会社の社長にあたる宮司を補佐し、会社の一般社員にあたる権禰宜(ごんねぎ)を統率指示する中間管理職です。
ネギ禰宜の影響で、そばかすが増えました
――「ネギ禰宜」は何でできている?
厚紙と園芸用支柱、模造紙とトレーシングペーパー、マスキングテープと粘着テープ。100均ですべて揃います。
――だいたいの長さや、重さは?
今回の動画のものは279cmですが、200cmぐらいが扱いやすいです。
279cmだと長すぎて、収納場所から屋外へ運び出す際に壁の角にぶつかったり、近くにいる人をなぎはらってしまうことがあります。
重さは測ったことがありませんが、1.5~2kgほどかと思います。
――「ネギ禰宜」で輪をくぐるのは大変そう、首や腰など体を痛めたりしない?
模造紙を巻いたものなのであまり重くありません。支えているのは鼻や頬骨なので化粧が落ちます。ファンデーションが落ちたまま境内清掃をしてそばかすが増えました。日焼け止め塗るのを忘れないように注意しています。
――なにか特別な訓練をしているのでは?
特別な訓練はしていません。しいていうならば、日頃の神職の作法で体幹が鍛えられていたり、境内清掃で草刈機やブロワーを担いで作業していたりで、どっしりしております。
風を受けると抵抗が大きいので、風が強い時はネギヘッドはかぶらないようにしています。
新しい神楽を作りあげたい
――なぜ有鹿神社のキャラクターは、どんどん増えているの?
有鹿神社の由緒書に、祭の際に神楽をし、数多くの動物が集ったとあります。残念ながら古来の神楽は伝わっていませんが、新しい神楽を作りあげたいと模索しています。
作る都度に立体造形の技術が向上していくので手腕を磨くことにやぶさかではありません。
日本人は八百万の神々に日々感謝して生活してまいりました。陽の光、水、大地など自然のもの、家、食べ物など全てのものが神様の現れであるというアミニズム的な意識が、私に八百万のキャラクターを作らせようしているのかもしれません。
SNS的には、キャラクターは出落ち感が強いので、新しいキャラクターを製作して登場させることで喝入れにもなっています。
――キャラクターの登場で参拝者は増えたの?
増えました。微増しました。コロナ禍で移動の制限がありましたので微増でも健闘していると言えるでしょう。目立つのは、お子さん連れのご家族の参拝が増えたことです。
――将来的な目標は?
コロナ禍が終息したら祭祀舞自主練会(神社などで披露される舞の練習をする)を再開して、新しい神楽を再興したいです。
〜🌱{神職の役職名称『禰宜』の周知のためにデザインされた有鹿神社のネギ禰宜というキャラクターが、半年分の穢れを祓う夏越の祓に茅の輪をくぐる年中行事の動画です。pic.twitter.com/GyseSaqP8x
— 【公認】有鹿神社 ネギ ⛩🌱 (@arukajinjanegi) April 17, 2023
有鹿神社には「パンダ宮司」の大きなパネルも置かれているが、あれはいつもキャラクターをかぶってはいられない小島さんの代わりなのだそうだ。
また参拝者を歓迎するため、小さなパンダのフィギュアをいろんな場所にこっそり置いたりしているという。お参りする人はパンダがいくつ見つけられるか挑戦してみてはいかがだろう。