京都で実現された着物文化の新たな楽しみ方。

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季縁・北川淑恵代表:
このラグランドレスのポイントは、袖を長くすることによって着物をにおわせる、歩いたときにヒラヒラっとするので…。

日本の艶やかな伝統文化である着物が、気品を感じさせるドレスへと大変身ーー。

京都・二条城の近くにショールームをおく、ファッションブランド「季縁」。

季縁では、「伝統を現代に紡ぐ」をコンセプトに、着る機会がなく、タンスにしまわれたままの着物などを、ドレスやワンピースのように現代の生活に合わせ、アップサイクルしている。

季縁・北川淑恵代表:
(着物)一着で一着作りたいんです。この流れの柄だったように、ドレスにしても同じ柄の流れに維持をしてドレスの縫製をしています。

柄の特徴はそのまま美しいドレスへ
柄の特徴はそのまま美しいドレスへ

季縁のドレスの特徴は、着物の美しさを生かしたデザイン性の高さだ。

取材したこの日、代表の北川さんが買い付けに訪れたのは、売れ残った着物やデッドストックの生地が山積みに集まる会社「優彩」だった。

優彩 営業・増谷祥人さん:
やっぱりできるだけ捨てたくはないんで、なんかの方法で利用してもらいたいのがあるので…。
ほんまは着物として着ていただきたいんですけどね。それがやっぱり、なかなか厳しいんで。

地元の職人の力を活用

地元の職人の手によって、着物に新しい命が吹き込まれている。

立体的な形で作られた着物を、再び一反の反物に戻すという高度な技術が必要な作業は、「紀平張」のような地元の職人の力を活用している。

京都の”匠”の技術を絶やさないための、利益が循環する仕組みを構築している。

これまでの伝統を現代にフィットする形で紡ぎながら継承する、新たなアップサイクルのカタチ。

季縁・北川淑恵代表:
私が考える文化というものは、私たち生きている人たちの生活が豊かである、その内包されたものが文化だと思っている。

日本中には、本当に知られていない価値がたくさんあると思っていて、それをいかに何かに変換をして、どこかに届けるということは、いろんな人たちがアイデアを持って伝えていかないといけないべきものだと思っています。

新たな価値を生みだす柔軟性

「Live News α」では、一橋ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
今回の試み、どうご覧になりますか。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
創業年数が100年・200年以上の企業数は、日本が世界1位です。では日本に、なぜ長寿企業が多いのか。様々な理由が挙げられますが、その一つに柔軟性があります。

時代の変化に合わせて、事業の定義や商品の使い道を、柔軟に変えることができる強みがあります。

今回の取り組みのように、着物を現代により取り入れられやすいドレスを仕立てる「布」として捉えることも、そうした動きの一つです。

堤 礼実 キャスター:
確かに、すでにあるものを違うことに使ったりすることで、ヒット商品が生まれたりしますよね。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
視点を転換することで、新たな価値の可能性が見えてくることを、マーケティングでは「リフレーミング」といいます。

これは伝統産業ではとくに大切になってきます。例えば「かすり染め」が着物の織物だけでなく、デニム生地にも転用可能だと気づいたり、着物の帯をテキスタイルとして捉え直して、インテリヤやアートに転用することで、新しい価値の提供や、新しい市場が生まれます。

固定観念を捨て伝統を未来へ

堤 礼実 キャスター:
確かに、伝統産業も時代に合わせてアップデートしていかないと、私たち消費者との接点を失うことになりかねないですよね。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
京都老舗企業は、「伝統とは革新の連続であり、変化しないと生き残れない」と、よく言います。

伝統とは、「こうあるべき」という固定観念のトラップにかかると、かえって伝統を途絶えさせてしまうリスクを高めてしまうのです。

日本には、さまざまな伝統文化があります。これは日本にとって大きな財産です。

グローバル化が進み、多様な文化に触れる機会が増えると、日本のアイデンティティがより重要になります。

私たちのライフスタイルや価値観が変化する中で、過去から受け継いできた大切な文化を、どう未来につないでいくかは重要な課題です。

古いものを生かして新しいものを生み出すことで、次の100年につながっていくのではないでしょうか。

堤 礼実 キャスター:
変えてはいけないもの、時代に合わせて変えるべきものを見極めることは大切なことだと思います。それは物だけではなく、言葉や考え方なども、そうですよね。

私自身も日本の良き伝統や文化を、柔軟に受け止めて、次の世代へと、伝えていけたらと思います。

(「Live News α」4月17日放送分より)