2020年6月施行の改正道路交通法で新設された「妨害運転罪」。他の車両の通行を妨害する目的で、急な進路変更をしたり急ブレーキをしたりする行為は、“あおり運転”として厳しく処罰されることになった。

こうした中、弁護士ドットコム株式会社が行った調査で、約2割の人が「あおり運転をしたことがある」と回答し、そのうち約6割が「あおり運転をしたことを後悔していない」と回答したことが分かった。

調査は今年3月、「弁護士ドットコム」の一般会員1241人を対象にインターネットで実施。「“あおり運転”をしたことがありますか」と尋ねたところ、「ある」と答えたのは22.8%だった。

あおり運転をしたことがありますか?(提供:弁護士ドットコム)
あおり運転をしたことがありますか?(提供:弁護士ドットコム)
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「ある」と回答した人の割合を年代別にみると、50代男性が40.2%と最も高く、60代男性が29.6%、40代男性が28.5%。女性は50代が最も高く13.9%だった。

“あおり運転”をしたきっかけについては、「前の車のスピードが遅かった」(58.7%)が最も多く、「急な車線変更で前に割り込まれた」(27.2%)、「向こうから先に“あおり運転”をされた」(8.5%)が続いた。

あおり運転をしたきっかけはなんですか(提供:弁護士ドットコム)
あおり運転をしたきっかけはなんですか(提供:弁護士ドットコム)

そして、“あおり運転”を後悔しているかについても質問しており、「後悔している」は43.5%、「後悔していない」が約6割となる56.5%という結果となった。

あおり運転をしたことについて、後悔していますか(提供:弁護士ドットコム
あおり運転をしたことについて、後悔していますか(提供:弁護士ドットコム

“あおり運転”をしたことが「ある」と回答した人に、自由回答で具体的なエピソードについて尋ねたところ、以下のようなコメントが寄せられた。

「“あおり運転”されるほうが悪いことが多い。早く進まないのであれば後ろに道を譲るべきだ」(福岡県、50代男性)

「“あおり運転”の意識は無かったが、車間距離を詰めすぎて、同乗者にあおり運転になると言われた」(三重県、60代男性)

「相手が危険な割り込みをして来たため、指導するために追いかけた」(兵庫県、50代男性)

一方、“あおり運転”をされたことが「ある」と答えたのは、7割以上(71.6%)だった。

あおり運転をされたことがありますか(提供:弁護士ドットコム)
あおり運転をされたことがありますか(提供:弁護士ドットコム)

“あおり運転”に対してどう対処したかを複数回答で尋ねたところ、「道を譲った」(36.7%)が最も多く、「何もしなかった」(29.2%)、「スマホやドライブレコーダーで記録した」(8.7%)と続いた。

あおり運転に対して、どう対処しましたか(提供:弁護士ドットコム)
あおり運転に対して、どう対処しましたか(提供:弁護士ドットコム)

この調査で最も興味深いのは、“あおり運転”加害者の約6割が「“あおり運転”をしたことを後悔していない」という結果だ。なぜ、後悔していないと思えるのだろうか?

弁護士ドットコム株式会社の担当者に、“あおり運転”の加害者が後悔していない理由を聞いた。

“あおり運転”加害者は男女ともに50代が多い理由

――「あおり運転」に関する調査を行った理由は?

あおり運転を処罰する「妨害運転罪」が創設されてから3年あまりが経過しましたが、あおり運転による被害は後を絶ちません。

非常にリスクの高い行為だという認識は社会的にも広がっているはずなのに、なぜ、あおり運転はなくならないのか、その背景に迫りたいと考え、調査しました。


――「あおり運転」をしたことがある人は約2割という結果、どのように受け止めている?

率直に「多い」と感じました。あおり運転の加害者は、「相手が危険な運転を先にしてきた」「自分が被害者」などと自分の行動を正当化し、違法な「あおり運転」とは認識していない方が多いと想定していたからです。

画像はイメージ
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――「ある」と回答した人の割合を年代別にみると、男性、女性ともに50代が最も高かった。この理由としては、どのようなことが考えられる?

この年代の人達は、運転免許を取得してから年数がたち、運転技術に習熟しています。

その一方で、高齢者のように運転能力が低下していないため、周囲の運転のささいなミスが許せない傾向があるのかもしれません。

また、公共の場や飲食店などで、ささいなことで感情的になり、職員・従業員などに暴力を振るう、いわゆる「キレる中高年」が近年、増えているとされています。こうした「キレる中高年」の増加が、あおり運転においても、年代の偏りを生じさせているのかもれしれません。

「自身の行為が正当と考えている」

――「あおり運転を後悔していない」が約6割。こちらはどのように受け止めている?

「あおり運転」は、とっさに感情的になって、冷静さを欠いて実行する方が多いので、後になって後悔する方が多いと想定していました。「後悔していない」の方が多いことには驚いています。


――後悔していない人が多い理由としては、どのようなことが考えられる?

自由回答欄にも「指導のため」「割り込まれたから」などとあるように、そもそも自身の行為が正当であり、あおり運転をさせるような運転をする被害者の方が悪いと考えている人が、一定数いることのあらわれと捉えています。

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――もし、あおり運転をしようという思いに駆られたとき、どうすればいい?

「車線変更が急すぎる」「スピードが遅すぎる」といった運転感覚は、ドライバーによって異なります。

自分と他者の感覚が異なることを意識していれば、他人の運転に対して寛容になれ、あおり運転したいという気持ちを抑えられるのではないでしょうか。

また、あおり運転による重大な事故、刑事処罰など、一時の感情の発散とは到底見合わない不利益を一瞬でも思い起こすことができれば、思いとどまることができるのではないかと思います。


――あおり運転をされたときには、どのように対処すればいい?

あおり運転をされた場合、安全な場所に停車して、加害者をやり過ごしましょう。加害者が停車して、下車・接近してきたような場合は、決して、ドアや窓を開けずに警察に通報しましょう。

あおり運転の被害を証明するために、ドライブレコーダーを事前に搭載しておくことも有効です。なかった場合でも、同乗者によるスマホでの撮影など、できる限り、被害状況を記録しておきましょう。

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“あおり運転”の罰則は重く、最大で5年以下の懲役または100万円以下の罰金だ。さらに、免許は一発で取消しとなり、再取得は一定期間できないことになっている。

約6割が「後悔していない」という衝撃の調査結果だったが、一時の怒りの感情に流された行動の代償は大きい。他のドライバーへの寛容さを持つドライバーが増えることを期待したい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。