名古屋の「scope(スコープ)」は、北欧の食器や家具などを販売する、いま人気のネットショップだ。社長は、使い捨てや買い替えなどでゴミを出すのが嫌い。長く飽きずに愛用できるものを探して選んでほしいという思いで、扱う商品を決めている。社長が考える、暮らしを豊かにする生活用品とは何か。

シンプルで使いやすい北欧雑貨販売する人気のネットショップ

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岐阜県土岐市の物流倉庫に、数か月に一度、海外から大きなコンテナで荷物が届く。

荷物の受取人は、平井千里馬さん(51)。名古屋を拠点に、北欧の食器や家具などを、インターネットで販売している、いま人気の通販会社「scope」の社長だ。

平井千里馬さん:
(届いた荷物が)どういうもんか見ます?こういう普通のお皿なんですけどね。このぐらいのサイズって、僕らの食卓ではすごく使いやすいんです

箱の中から出てきたのは、フィンランドのシンプルな食器。皿にはカップに合わせたくぼみが無く、皿だけでも使える。カップも寸胴でシンプルでこれだけでも使えるし、皿と合わせても使うことができる。

「長く飽きずに捨てることなく愛用できるものを探して、自分たちの生活にあって良いと思うものを選んでいる」という平井さん。

アラビア社の「ルノ フロストベリー」という食器は、2011年に生産されなくなったが、製造元のアラビアとも話をして、3年前から復刻を始めたという。フィンランドのブランドだが、日本でしか買うことができない。

ほかには真っ白な皿や…。

無垢材を使ったイス。

美しいガラスの食器。

食器や調理器具、生活雑貨やインテリアなど、scopeで扱うのはどれもシンプルで使いやすい北欧の暮らしの道具で、その数は約2000点。楽天市場の年間ベストショップに何度も選ばれている。

一番の売れ筋はイッタラ社の「ティーマ」のプレートだ。

平井千里馬さん:
一番最初にscopeで、これを使いたい、(商品に)加えたいって思ったのが、この「ティーマ」のプレート。フィンランドに行けば、どこの家庭にもあるんじゃないかっていうぐらい広く使われているものです

フィンランドで生まれた「イッタラ」の「ティーマ」シリーズ。70年以上続くベストセラーだ。scopeでは、日本で使いやすい直径12センチのモデルを特別注文した。

「ティーマプレート12cm(ホワイト)」(1個1980円)。

平井千里馬さん:
ヨーロッパの食器なので、まぁまぁ大きいんですよね、サイズが。どうやったら使いやすくなるのかなって考えていた時に、特別注文してscopeのために作ってもらったんです

「実際はないじゃん」は絶対やりたくない…“生活を売る”という発想

平井さんは愛知県田原市の出身で、23年前の2000年、当時まだ先駆けだったネット通販の会社を創業した。

そして、海外の展示会で、北欧のライフスタイルに出会った。

平井千里馬さん:
(出張で)フィンランド、スウェーデンと行って、フィンランドのデザイナーと密に付き合うようになって。その人たちの生活を見ていると全然派手じゃないし、普通の生活の中にあるものをみんなデザインしているんですよ。ずっと使い続けられる物が多いなって、僕は思った

2020年に、岐阜県土岐市に家を借りた平井さん。この家で、scopeで扱う商品を実際に使って、日常生活で使えるかどうか試している。

平井千里馬さん:
この新しい食器の柄が「ツンドラ」っていって、フィンランドのデザインではあるんですけど、日本の小紋感もあったりとかするし、和食器っぽい匂いも

2022年12月に復刻された「イッタラ」のガラス食器「ツンドラ」。

親子丼やみそ汁と並べて、ホームページ用に撮影をする。

平井千里馬さん:
“商品を売る”っていうよりも“生活を売る”みたいな発想が昔からどこかにあって。「実際こんな風に食べるわけないじゃん」ってことは、絶対やりたくないんですよ

<ホームページの紹介文>
「和食器としても洋食器としても使える優れモノにしてくれている、なんかイイんです、ツンドラ」

「好きが高じて」入社…築50年の「昭和の家」を食器や家具で豊かに

名古屋市守山区の一軒家で暮らす酒井智美さんさん(50)は、もともとscopeのファンで、15年前に入社した。

酒井さんの自宅に伺うと、scopeで購入した商品にあふれていた。家の中で目に入るものは、ほとんどがscopeで購入したものだという。

この住宅は築50年の「昭和の家」で、建て替えやリフォームも考えたが、scopeで買い揃えた食器や家具が、暮らしを豊かにしてくれた。

酒井智美さん:
昔は割と、“一発デザイン”みたいな、アイデアものとか買っちゃったりしていたんですけど、いずれそういうのって飽きちゃうとか残っていないので、そういう目線では選ばなくなりましたね。ずっと使えるもの、ちょっと最初、高いなと思ったりもするんですけど、結果、ずっと使っているので

社長が買い集めるボロい椅子…約90年前から使われ続ける「スツール60」

平井さんは、自分で集めたフィンランドのビンテージ家具を見せてくれた。

平井千里馬さん:
ここにあるのは全部フィンランドのものばかり。「スツール60」っていう、1930年代からあるイスなんですけど。うちのスタッフはみんな「なんか社長がまたフィンランドに行って、ボロいスツールを大量に買って来た」って

フィンランドの建築家、アルヴァ・アアルトが90年前にデザインしたアルティク社の「スツール60」。丈夫で、重ねて置くことができるため、世界中の公共施設などで使われている。

平井千里馬さん:
これを見ていると、1930年代からずっと使われ続けて、今の世になっても価値を保っているって、結構強烈なことだなって思ったんですね

scopeで6万脚を販売した「スツール60」。無垢材を職人が加工して、塗料には自然の素材を使っている。時を重ねると、木の味わいが出る。

「アルテック スツール60 スコープ別注 リノリウム(3本脚)」(3万1900円)

平井千里馬さん:
古いフィンランド人で、昔から使っていて「これ古くなったから捨てよう」って。でも捨てたとしても、速攻で拾われていくんですよ。ゴミになってない。“使い捨てない国”だなって思ったんですね

“届いた瞬間ゴミ”の緩衝材はデザインにこだわり捨てられない工夫

平井さんが目指すのは、「できるだけゴミを出さない」社会。その思いから、あるものが生まれた。

割れやすい食器を包むために必要な、緩衝材として使っている大量の紙。scopeでは、商品の説明などを書いた読みものにした。

平井千里馬さん:
カトラリーをインターネットで見てもサイズ感がわからないから、原寸大で印刷して、緩衝材にプリントして、荷物に詰め込んじゃおう、みたいな

3か月に一度、新たにデザインされる、緩衝材ならぬ”緩衝誌”。ゴミとして捨てられないように、デザインにもこだわっている。

平井千里馬さん:
取っておこうって思う人もいて。今、宅配便で何か送ることって多いから、そういう時の緩衝材としてまたフル活用される。再利用された先でも、また再利用されるかもしれないし

「ちゃんとしたものをずっと大事に」“暮らしの道具”の技術と知恵を未来へ

scopeでは、工房を新たに増やし、お茶の葉を保存する「茶箱」の製造を始めることにした。湿気に強く、防虫効果が高いため、食料や衣類を入れる箱としても活用できる。

平井千里馬さん:
茶箱を製造する人がもう廃業して終わっちゃって、茶箱がこの世で、日本で作られなくなるみたいな話があったから、「誰か継がなきゃ」みたいな

昔から続く暮らしの道具。その技術と知恵を、未来へ繋いでいる。

割れたり欠けたりした器を修復する、「金継ぎ(きんつぎ)」も始めた。

日本の技を、北欧の食器にも試している。

平井千里馬さん:
金継ぎも本当にキレイに上手にやると、新品よりもいい雰囲気になるものもあったりします。いつか販売するなり、お客さんにノベルティとしてプレゼントするとか。色んな方法でもう1回世に流すことができるんじゃないかと思って

scopeを立ち上げて24年。平井さんが2022年にサイトに書きこんだ言葉。

【平井さんはサイトに書いた言葉】
「いつからこんなにゴミが増えたんだろう。いつから買い替えた方が安いなんて言葉が生活にあふれるようになってしまったんだろう」

平井千里馬さん:
「scopeで買ったものは捨てるものが無かった」、これ、すごく嬉しいパターンのコメントなんですね。好きじゃないもの買うと絶対捨てるからゴミになるから、僕はしないっていう。使い捨てじゃなくて、ちゃんとしたものをずっと大事に使っていた方が生活が良く感じられるとか、物を大事に思うし、生活も豊かになっていくような気がする

※商品の金額は変わることがあります。本文中に記載の金額は取材時のものです。

2023年2月22日放送
(東海テレビ)

東海テレビ
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