岐阜県飛騨市に、SNS映えする「りんご飴」の製造販売と、地元の伝統文化を守り続ける「提灯職人」の2つを1人で手がける「二刀流」の女性がいます。

若い人に見てもらうために…りんご農家の女性が作る映える「りんご飴」

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岐阜県飛騨市古川町の野中早織さん(51)は、りんご農家の女性です。

りんごに串を刺して作っているのは、キラキラのりんご飴。使っているりんごは、もちろん自分の農園で育てたものです。

けさまるりんご園 野中早織さん:
減農薬栽培で、除草剤は使わずに。傷があるとちょっと飴にはよくないので、傷のないものを

直売所や地元の産直市場で販売しています。

りんご飴を納品したら、インスタグラムで発信。

SNSでもプチバズリ中です。

定番のプレーンタイプに、シナモン、ミルク、キャラメル味も。そのかわいい見た目と味が評判を呼び、全国各地から問い合わせがあるといいます。

この日も、買い求める人が次々に訪れました。

女性客A:
シャキシャキしていて、子供も喜んで食べるので、何回も買っちゃいます

女性客B:
時季によって違う種類のりんご飴が食べられるので、すごくおいしいかなと思って

みるみるうちに売れていき、用意した100個のりんご飴は2時間ほどで完売しました。

5年前からりんご農園の経営に携わっている野中さん。りんご飴の「誕生」は、りんごを若い人に知ってもらいたいという思いからでした。

野中早織さん:
1年目、(りんごを)買いに来たのがおじいちゃんおばあちゃんばかりで、若い人に全然知名度がないので、どうにか知ってもらいたくて、りんご飴なら若い人にも見てもらえるかなと思って。りんごをただ作って売っても楽しくないので、違うことやろう、みたいな

「今あるもの」に「新しい価値」を添えて、りんご農家を楽しんでいます。

町内の店が全て廃業し自らが提灯職人に 「伝統と革新の二刀流」

野中さんのもう1つの仕事が、提灯職人です。

キラキラのりんご飴からは程遠い渋い仕事ですが、提灯は飛騨市古川町でとても大切にされてきました。

絢爛豪華な屋台の曳き揃えで知られる、4月の古川祭。

400年以上の伝統を誇るこの祭りに「古川提灯」は欠かせません。

コロナ禍では中止していましたが、2022年は3年ぶりに明かりが灯りました。しかし、手がける職人は次第に減り、古川の提灯店がすべて廃業した時期もありました。

野中早織さん:
せっかく「祭り、祭り」って盛り上がっているのに、提灯なかったら本末転倒。古川祭にはなくてはならないものなので。同じ製法の人をやっと福井で見つけて、教わりながら訪ねて行ったりして

伝統を守るため、野中さんは自らが職人となる道を選びました。作業する時は、気に入っているBGMを流します。

野中早織さん:
まさかの日本のヒップホップなんですけど…。ノリがいいでいいよね。歌詞を聞いているとおもしろい、「若者こうなんやな」って

令和の若者を感じながら、伝統の提灯を直す。ヒップホップが流れる中、提灯が持つ歴史に触れます。

野中早織さん:
これはもう結構古いと思うんですよ。「大正11年3月」。江戸時代のも来たことありますし、開けてみないとわからんので楽しみはあるんですよ

りんご農家として「今あるもの」に「新しさ」を。提灯職人として「歴史」を「未来」に。

野中早織さん:
そんなに本人、大変なことしとると全然思ってないんですよ。本当に楽しんでやっとるもんで。お客さん待ってみえるんで、りんご飴と提灯、どっちもそうなんですけど。「よかったわ」って言ってもらえるのが一番…それを聞くためにやってますよね

岐阜のパワフルな「二刀流」は、「伝統」と「革新」の二刀流でもありました。

※今シーズンの野中さんのりんご飴の販売は終了しています。

2023年1月13日放送
(東海テレビ)

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