G7広島サミットを5月に控え、4月7日、G7各国の若者が広島を訪問した。彼らは「Y7サミット」の参加メンバー。Y7以外にも「〇7」と呼ばれるグループが次々と生まれている。一体、どのような団体なのか?
若者がG7首脳に政策提言
Y7サミットとは「Youth=若者」の頭文字のYをとったもので、G7各国を代表する若者によって開かれる国際会議。東京で4月9日から13日までの5日間の日程で開かれ、経済や環境、平和などの問題について議論し、最終日にはその成果を共同宣言にまとめる。
この記事の画像(10枚)開催を前に、参加メンバー11人が広島県の湯崎英彦知事を訪問。
広島に滞在中、被爆者から被爆体験を聞いたり、原爆資料館を見学するなどして被爆の実相に触れた。
千葉宗一郎さん(30):
広島を訪問して、学生や被爆者、さまざまな方々のお話を伺うことで、それをY7の共同声明文に盛り込みG7に届けることは大変意味があります
このY7はエンゲージメントグループと呼ばれる各国政府から独立した団体で、Y7サミットはG7サミットの公式付属会議の1つと位置づけられている。議論の成果はG7各国の首脳に政策提言として伝えられる。
こんなにある「◯7」
Y7のようなエンゲージメントグループは、実はたくさんある。C7、W7、B7、S7、L7、T7。それぞれ何の頭文字だろうか?
正解は、CはCivil(市民・NGO)、WはWomen(女性)、BはBusiness(ビジネス)、SはScience(科学)、LはLabour(労働組合)、TはThink(シンクタンク・研究機関)である。
なぜ、このような多様な団体が存在するのか?サミットを研究している名古屋外国語大学の高瀬淳一教授に話を聞いた。
名古屋外国語大学・高瀬淳一 教授:
G7は最初は経済と政治の話をしていたんですが、環境問題とかいろんな社会問題を扱うにつれて、市民運動団体の意見をちゃんと聞こうというふうに変わっていきました。ちょうどそのころ、市民運動団体の代表たちが集まって「C7」というのを作るんですね。そのC7に促される形でビジネスのリーダーたち「B7」、それから労働者の「L7」などいろいろな“なんとか7”ができあがりました
これらのエンゲージメントグループがまとめた意見は、「シェルパ」と呼ばれる補佐役によって首脳に届けられる。シェルパとは、エベレスト登山を手伝う案内人のこと。
名古屋外国語大学・高瀬淳一 教授:
山の頂上(サミット)への意見をまとめるお手伝いということで、慣習として、提言の準備をする官僚や政治家をシェルパと呼びます。だいたい議長国のシェルパがエンゲージメントグループの代表から意見を聞いて文書を受け、それを閣僚会議や首脳会議に出します
サミットの持つ“柔軟性”
3月、エンゲージメントグループにもう1つの団体が加わった。それは「P7」Pride 7。LGBTQなど性的少数者の支援団体が立ち上げたグループだ。3月30日にはP7サミットが開催され、日本は性的少数者の権利保護がG7各国の中で遅れているなどといった意見が出た。P7は4月中に政策提言を取りまとめるとしている。
このようなエンゲージメントグループは自発的に立ち上がった団体で、設立条件などに正式な決まりはないという。高瀬教授はこれがサミットの持つ柔軟性だと話す。
名古屋外国語大学・高瀬淳一 教授:
サミットは国連憲章のように制度がきちっとあるわけじゃない。緩やかにできてるから、国際問題のいろいろな変化に対応できる。G7、G8と参加国すら変えられるわけですから
名古屋外国語大学・高瀬淳一 教授:
柔軟な組織であるから、例えば市民の意見も受け止めようとか、もうちょっとビジネス界の意見も聞いてみようという柔軟な動きができます。世界情勢が変わっていく中で、新しいことに柔軟に対応するための組織としてサミットが意味のあるものになってきているということだと思います
G7広島サミットでは、インドや韓国といったG7メンバーではない国の首脳を招いた「拡大会合」も開かれる。サミットは「頂上」を意味するが、参加国首脳たちだけでなく、G7以外の国々や多様な分野の団体の意見も取り入れる“裾野を広げた大きな山”と言えそうだ。
(テレビ新広島)