楽しい気持ちから悲しみまでも人形で伝えようと、勤めていたラーメン店を辞め、チェコに留学した男性がいる。男性は帰国後、新潟県新発田市に人形劇の劇団を結成。初めての発表会に密着した。

55歳で人形劇を学びにチェコへ!

2023年3月、新発田市のコミュニティセンターで行われていたのは、人形同士が話し、時には歌うことで物語が進む人形劇の練習。

人形劇の練習
人形劇の練習
この記事の画像(22枚)

人形劇の劇団「コチュカ」は、演出を担当する中村渓さん(61)が2022年7月に立ち上げた。

中村渓さん:
動きや表情に制約がある人形を工夫して人間が操ることで、魂が人形に乗り移って、新しい表現を人形が教えてくれる

学生時代から演劇が好きだった中村さんは、村上市でラーメン店を経営しながら、ミュージカルの劇団を主宰していたが、演劇への熱い思いから、55歳のときに周囲を驚かせる決断をした。

中村渓さん:
頭の中でもやもやしていて、6年前にラーメン店を閉めて、チェコ共和国・プラハの大学に入学した

ラーメン店をやめ、演劇を学ぶためチェコに渡った中村さん。

中村渓さん:
チェコの酒場で大人たちが酒を飲みながら、人形劇を楽しんでいた。その姿を見て衝撃を受けた

人形劇が芸術や文化として根付くチェコの「国立芸術アカデミー」の人形劇学科で、人形の制作から操作、さらには演出技法などを3年にわたって学んだ。

中村渓さん:
教授から、「日本で人形劇の楽しさを伝えたら」というアドバイスを受けた

劇団結成!手作り人形で基礎を学ぶ

2022年7月に帰国すると、中村さんは新発田市で人形劇の劇団「コチュカ」を結成。中村さんの呼びかけに集まった劇団員は、演劇の経験がない人がほとんど…

劇団員:
普通の社会人。「ちょっと、面白そうだな」と思って

劇団員:
子どものころから人形劇が大好きだった。人形劇団が立ち上がると聞いて、基礎から学んでみたいなと思った

ネズミを食べようとしたオオカミを動物たちが協力して懲らしめる物語は、人形劇の基礎を学ぶために団員が創作。人形も演者が役に合わせて手作りした。

劇団員:
シリコン製の鍋つかみにネックウォーマー…、全て100円ショップで揃えたので、費用は1000円もしていない

同じ脚本を2班に分けた練習は、演者がそれぞれ人形を作ったため、同じオオカミでも全く違う印象に。

中村渓さん:
「こういう表現もあるんだな」ということを、違う班の舞台を見ながら勉強してもらえればなと思う

人形劇が楽しめるカフェオープンへ

中村さんの夢は、人形劇の劇団を結成するだけではない。

中村渓さん:
ここで5月中旬から人形劇の劇場と小さなカフェを開く予定

中村さんは、新発田市法正橋にある古民家を買い取り、人形劇を上演するカフェのオープンを計画している。

中村渓さん:
チェコでは、夜みんなが集まって、お酒を飲みながら人形劇を鑑賞する。私もやりたいなと思って

劇団初の発表会!「これが始まり」

「コチュカ」を結成して8ヵ月…、演者が体で表現するオオカミまで登場する人形劇。

中村渓さん:
人形劇に人間がコスチュームを着て出演するのも面白いと思った

桜のつぼみが膨らんだ3月26日。「コチュカ」結成後、初めての発表会だ。

みんなで人形を作り、みんなで練習を重ね、団員の心が一つに。同じ脚本から生まれた2つの人形劇が上演された。

発表会を終えて団員の思いは?

劇団員:
これが始まり

中村渓さん:
演じている側がお客さんと一緒になって悲しんだり、笑ったり、そんな経験ができると、みんなも、もっともっと楽しくなるんじゃないかなと思う

人形で表現する喜怒哀楽を求めて、新発田市で結成された人形劇の劇団が花を咲かせるのは、もう少し先だ。

(NST新潟総合テレビ)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(22枚)
NST新潟総合テレビ
NST新潟総合テレビ

新潟の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。