日本国内では、刑務所を出所した人などが再び罪を犯すことを示す「再犯者率」が高止まりの状況だ。
岩手・盛岡市にある盛岡少年刑務所では、出所後の生活を見据えた取り組みのもと、社会復帰を目指す受刑者がいる。
「成長できる」机に向かう20代受刑者
20代男性のA受刑者は、強盗致傷などの罪で盛岡少年刑務所に服役している。服役中だが、県立杜陵（とりょう）高校の生徒でもある。
A受刑者(20代・男性)：
知らないことを知るのが楽しみ。人間として成長できると思う
A受刑者は、固く閉ざされた刑務所の中で、社会復帰を目指し机に向かっている。
盛岡市郊外に位置する盛岡少年刑務所に服役しているのは、主に35歳までに刑期が終わる成人男性。2023年3月時点で約150人が収容されている。
1日7時間半「刑務作業が好き」
施設内の扉を開けると、「扉を閉めてください。扉を閉めてください」と警報音が鳴り続け、警備の厳しさを物語っている。
施設の中にある第一工場では、平日の7時間半、受刑者が刑務作業を行っている。作っているのは、全国で定期的に販売される木工の製品だ。
A受刑者は、工場長として検品を任されている。
A受刑者(20代・男性)：
今、すごく刑務作業が好きです。自分たちが作っている製品も人の支えになるかもしれない
地域の小学校から預かった古い椅子の修理など、社会貢献活動も行っている。
2022年、小学校に椅子を返却する際には、工場長として挨拶をするA受刑者の姿があった。
A受刑者(20代・男性)：
生徒たちがけがなどしないよう、丁寧に作業を行い仕上げをしました
2人に1人が再犯している
A受刑者は、酒に酔い他人に暴行を加えて金を奪う行為を繰り返した強盗致傷と傷害の罪を犯した。懲役12年の実刑判決を受け、4年前から服役している。
A受刑者(20代・男性)：
酒との付き合い方をわかっていれば、そうはならなかったと思う。（被害者には）申し訳ないと思っています
過去には窃盗の罪も犯していて、日々、罪と向き合っている。
椅子の修理作業をするA受刑者法務省によると、犯罪で検挙される年間の人数は、2004年以降減少傾向にある一方、刑務所を出所した人などが再び罪を犯すことを示す「再犯者率」は、2020年に過去最高の49.1%に達し、高止まりが続いている。（出典：令和4年版犯罪白書）
2人に1人が罪を繰り返す現状について、A受刑者は理由があると話す。
A受刑者(20代・男性)：
環境だと思う。身寄りも行く場所もない中で生活するとなっても、金が必要になる。そういう人たちが再犯してしまうのかなと思う
「学ぶことで仕事の幅を広げてほしい」
こうした現状を改善しようと、盛岡少年刑務所で行われているのが、通信制の高校教育だ。
全国に6カ所ある少年刑務所のうち盛岡を含む2カ所だけの取り組みで、高校卒業の資格を取得することで出所後の就職の幅を広げたいとしている。
盛岡少年刑務所・佐々木智宏法務教官：
収入を得て一生懸命働くことが犯罪をしない大事なポイント。学力や資格を習得して仕事を選択する幅を広げれば、再犯率の低下につながるのでは
受講しているのは生活態度が良好とされた受刑者5人だ。
A受刑者(20代・男性)：
身に付くものがあるなら学びたいという気持ちで生活している。やらせてもらえるなら意欲的に参加したいと思った
2023年3月3日には、刑務所で3人の受刑者が卒業式を迎えた。
1年間の授業を終えたA受刑者も、未来の自分の姿を重ね合わせていた。
A受刑者(20代・男性)：
3年間必死にやってきた姿だと思う。同じように胸を張れるようになりたいという気持ちで見ていた
A受刑者が勉強に励むもう一つの理由
A受刑者が勉強に励む理由がもう一つある。それは服役では拭い去れない、母への償いのためだ。
A受刑者(20代・男性)：
母から「高校だけは卒業しろ」と言われていたけど、聞く耳を持たずに高校に行かないで…。母が思う道を行ってあげられれば良かったという気持ちが強いです
しかし、卒業までは、勉強に励んでいることを母に伝えないと決めている。
A受刑者(20代・男性)：
やり遂げた時に「高校卒業資格を取ったぞ」と母に言うのも親孝行になると思うので、今は伏せていたい。ずっと悲しませてきたので、できる親孝行をしたいと思う
社会への復帰、そして母への思いを秘めて、A受刑者の学びは続く。
（岩手めんこいテレビ）
