2021年の選挙で、県政史上2人目となる5回目の当選を果たし、就任18年目を迎えている村井嘉浩宮城県知事。4月4日、新年度の訓示に臨んだ。5月に5類移行が見込まれる新型コロナ対策に、物価高騰対策。県営病院と民間病院を2拠点に統合・合築する「4病院の再編計画」など課題は山積している。難しい「かじ取り」を迫られる中、どのような県政運営を目指すのか、以下に訓示全文を記載する。

富県躍進に向けて

新年度のスタートに際しまして、職員の皆さんに、今年度にかける私の思いをお話したいと思います。今年度は、「新・宮城の将来ビジョン」による県政運営がスタートし、3年目を迎えます。人口の本格的な減少局面を迎える中、新型コロナウイルス感染症や物価高騰等への対応にも、しっかりと取り組みながら、富県躍進に向けて様々な取組を推し進めていく年にしたいと思います。 

震災からの復興「ソフト面の取り組み継続を」

東日本大震災の発生から 12 年が経過しました。これまで、被災した市町や国、関係機関と力を合わせ、復旧・復興に向けた様々な取組を進めてきた結果、ハード面については、概ね完了しました。一方で、被災された方々の心のケアや地域コミュニティの再生、産業・ なりわいの回復などのソフト面の取組は、ある時点をもって完結するもので はなく、今後も一つ一つの課題に応じた丁寧かつ継続的な支援が必要です。また、現在においても、復興のためにご尽力をいただいている任期付職員の 方々がいらっしゃることに、改めて心より感謝を申し上げます。

新型コロナ「5類移行・円滑に」

新型コロナウイルス感染症への対応については、引き続き、基本的な感染対策の励行や、ワクチンの早期接種を県民に対して呼びかけてまいります。5月8日以降は、特段の事情が生じない限り、感染症法上の5類感染症に位置付けられることから、国の方針を踏まえ、関係者と十分に協議しながら、新たな段階へ円滑に移行できるよう、柔軟かつ適切に対応していきます。 
また、国際情勢の影響などによる物価高騰についても、動向を注視し、県民生活や県内経済活動の回復に向けた支援策など、タイムリーな対策に取り組んでいきたいと考えております。 

県・取り組み「4本柱」

ここからは仕事に当たっての心構えについて、「宮城県行財政 運営・改革方針」における「取り組みの4本柱」に沿ってお話いたします。

1点目は、「財政基盤と組織体制の強化」です。 令和2年の国勢調査による本県の人口は230万人でしたが、今後、2045年には、およそ 180万人になると言われています。急速に人口が減少することで、産業の衰退や地域の担い手不足などが進行し、幅広い分野に深刻な影 響を及ぼす恐れがあります。やはり、民間の力を最大限活用しながらスリムな行政体にしていくことが必要です。そのためにも、これまで以上に県民や企業、大学、市町村など多様な主体と連携し、多様化・複雑化する課題に対応してください。

2点目は、「ICT 活用と働き方改革の推進」です。自然災害の大規模化、経済情勢の急激な変化など不測の事態に対して、迅速かつ的確に対応していくためには、庁内DXを推進して業務プロセスの最適化を図ることが重要であります。そのため、職員一人ひとりがこれまでの仕事のやり方を見直し、デジタル技術を積極的に取り入れるなど、働き方改革を進めてください。特に、管理職の皆さんには、職員の改革への意欲を引き出すとともに、テレワークを促進し、育児・介護など様々な事情を抱える 職員も働きやすい環境づくりを進めてください。

3点目は、「人財育成とコンプライアンスの徹底」です。 宮城県庁は、40歳前後の職員が他の年齢層と比べて少ない状況にあるため、若い年齢層からのマネジメント力の向上が必要になります。また、新型コロナウイルス感染症や物価高騰などへの対応により、事務量は増大しておりますが、一度ミスが発生すれば、県民の信頼を失いかねません。所属長を中心に、改めて内部統制システムの整備を図るとともに、「誠実性と倫理観」 を持って業務にあたってください。

4点目は、「危機対応と震災の経験の継承」です。震災から12年が経過し、震災対応を経験していない職員の比率が高くなっています。一方、自然災害や家畜伝染病は近年多発していますので、引き続き、気を緩めることなく、日頃から危機対応力の向上を図るとともに、震災の経験の継承に努め、災害等の発生時に円滑に行動できるよう備えてください。 

「人口減少対策」積極的チャレンジを

ここからは、今年度、特に力を入れていきたいことについてお話します。まずは、人口減少対策です。この問題については、結婚、妊娠・出産、子育てのライフステージに応じた切れ目のない支援に取り組むとともに、若者の経済的な安定を図るための質の高い雇用の創出・確保など、総合的な対策を講じることが重要です。 このため、「次世代育成・応援基金」も活用しながら、自然増に向けては、引き続き、産前産後ケア等の拡充を目的とした市町村交付金の増額や、不妊検査に対する独自支援に取り組み、また、社会増に向けては、幅広い産業分野で女性が活躍できる環境の整備や、現代の若者のライフスタイルに合わせた働き方の普及などに取り組みます。

これらに加え、社会全体で子ども・子育てを支える機運醸成の一環として、置き型授乳室の本格的な普及に着手するほか、子育て世帯等への住宅新築に 対する支援も強化するとともに、女性の就労環境改善に資する伴走型の事業者支援などにも力を入れることとしております。この分野は今後も重点化を図っていきますので、部局の枠を超えた積極的なチャレンジをお願いします。

外国人の受入促進に向けては、外国人材の県内企業への就職支援や在住外国人が生活しやすい環境整備に取り組むとともに、公立日本語学校の開設に向け市町村と連携し開設準備を着実に進めます。

環境分野では、脱炭素社会の実現に向けて、昨年度策定した「みやぎゼロカーボンチャレンジ 2050戦略」に基づき、各主体における温室効果ガスの 更なる排出削減に向けた取組を促進するほか、県自らも、県有施設の脱炭素化に計画的に取り組みます。また、地域と共生した再生可能エネルギー発電事業を推進するための新税の検討を引き続き進めてまいります。

産業分野では、テック系スタートアップ企業に対する支援の本格的な実施や、ハッカソンを契機とした、技術力の高いデジタル人材の育成及びDX関連産業の集積、副業・兼業の人材確保などに取り組みます。

農業分野では、RTK基地局の活用促進を図るなど農業・農村DXを推進するほか、輸出の拡大や大規模施設園芸の推進等による農業収益の向上、環境負荷を低減する農畜産業の促進、農山漁村における関係人口創出などに取り組みます。

水産林業分野では、スマート水産業の推進や、閉鎖循環式陸上養殖に係る研究施設整備や技術導入支援に取り組むほか、令和7年度に本県開催が決定した「第48回全国育樹祭」に向けた準備を着実に進めてまいります。

土木分野では、頻発化・激甚化する水災害等に対応するため、新・災害に強い川づくり緊急対策に取り組むなど、災害に強い県土づくりを進めます。また、インターチェンジやコンテナターミナルなど、富県躍進を支える公共インフラ整備に取り組むほか、国際定期便の再開を受けたインバウンドの回復を図ります

教育分野では、本県児童生徒の体力・運動能力の向上に向けて、「体力・運動能力向上センター」を設置して取組を推進するほか、県立高校におけるICTを活用した遠隔授業の実施など、教育DXにも取り組みます。

また、 特別支援学校に在籍する医療的ケアが必要な児童生徒に対し、看護職員同乗による通学時の送迎をモデル的に実施します。このほか、政策医療の課題解決に向けた4病院の再編については、各設置者と取り交わした新病院整備の方向性に係る協議事項確認書に基づき、今年度中の合意を目指して、さらに詳細の協議を進めます。また、地域共生社会の実現に向けて、今年度から新たに、障害特性を踏まえたIT関連業務の受注や在宅での就労機会の確保に向けた取組を実施します。

最後に、DX については、来週の幹部職員向け講話で詳しくお話いたしますが、特に、マイナンバーカードを活用したデジタル身分証アプリについては、防災分野だけでなく、地域の商業・観光業の活性化、インフラの維持管理、食品ロスの削減、子育て世代のサポートなど、様々な分野に活用の幅を広げていって、県民サービスの向上を図ってまいりたいと考えています。 そして、これを進める際には、県だけでなく、市町村と協力し、ベンチャー企業や能力のある個人・学生の参入を促しながら、取り組んでいきたいと考えております。 皆さんからの積極的なアイデアを大いに期待しています。 

全庁一丸となって県を躍進させる

結びになりますが、今年度も様々な課題が次々出てくると思います。そのような中においても、目の前の課題だけに忙殺されるのではなく、将来を見据えながら、新ビジョンの実現に向けて一つ一つ手を打っていくことが重要であると考えております。新ビジョンの理念に掲げた「富県躍進」の旗印のもと、時代の状況にあわせて常に変化をし続け、本庁、地方、部局を問わず、 全庁一丸となって宮城県を躍進させていきましょう。 

仙台放送
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