ロボットが街中を走り、荷物を届ける!

そんな世界が、より現実になりそうだ。改正道路交通法の施行により、4月1日から自動配送ロボットが公道を走行できるようになったのだ。

そもそも自動配送ロボットとは、自動で走行して物流拠点や小売店舗などから、荷物や商品を配送するロボットだ。EC市場の拡大などで宅配需要が急増する中、物流分野における人手不足や過疎地の買い物弱者の問題などの課題解決のため活躍が期待されている。

3月27日には、経済産業省の敷地内でお披露目のイベントが行われ、自動配送ロボット関連事業者8社のロボット8台が、直進や旋回といった基本的動作に加え、人がロボットの前に飛び出してロボットが急停止する様子などを披露した。

8台の自動配送ロボット(画像提供:経済産業省)
8台の自動配送ロボット(画像提供:経済産業省)
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ロボットが急停止する様子(画像提供:経済産業省)
ロボットが急停止する様子(画像提供:経済産業省)

自動配送ロボットの公道走行に関しては、経済産業省が2019年度に官民協議会を立ち上げ、国内の実装に向けた検討を開始。2020年度以降、全国各地で多くの民間事業者による実証実験が実施されてきた。

実証実験の主な事例(画像提供:経済産業省)
実証実験の主な事例(画像提供:経済産業省)

そして、昨年4月に道交法改正案が成立。2023年4月1日に施行され、事前に都道府県公安委員会に届け出することで、“遠隔操作型小型車”として公道走行が可能となる。

なお、最高速度は6km/h。車体の大きさは長さ120cm×幅70cm×高さ20cm(現行の電動車椅子相当)。通行方法は「歩行者と同じ通行場所」「歩行者相当の交通ルールに従う」「歩行者に進路を譲らなければならない」と決められている。

自動配送ロボットの公道走行 4つのポイント(画像提供:経済産業省)
自動配送ロボットの公道走行 4つのポイント(画像提供:経済産業省)

今後、街中を移動する自動配送ロボットを見る機会も増えていきそうだ。では、実際4月1日に届け出をして、サービスを始める企業はありそうなのか? また、将来的に自動配送ロボットにはどんなことが期待できるのか?

経済産業省物流企画室の担当者に詳しく話を聞いてみた。

物流のラストワンマイルを走行

――自動配送ロボットについての改正道路交通法の施行は、どんな部分が画期的?

これまで、歩道を走行する自動配送ロボットは、特別な許可を得て、実証実験として走行していました。今回、自動配送ロボットが、「遠隔操作型小型車」として、公道を走行する1つのモビリティに位置づけられたことが、大きなポイントだと感じています。


――自動配送ロボットの利用は、私たちにどんなメリットがある?

荷物や商品の配送においては、非対面での受け取りや、配送員が不足する深夜早朝における受け取りも可能となることが、メリットの一例であると考えています。また、農家の方が畑で収穫した野菜を、自動配送ロボットに載せて道の駅まで運ぶといったように、労働者の作業を補助する役割を担うこともできると考えております。

野菜を運搬する自動配送ロボット(画像提供:経済産業省)
野菜を運搬する自動配送ロボット(画像提供:経済産業省)

――自動配送ロボットが歩行者にぶつかることはない?

自動配送ロボットには、センサーやカメラが付いており、障害物を検知した場合には、回避したり、自動で停止したりする仕組みになっています。そのため、ロボットが人にぶつかることはありません。


――最高速度 6km/hだと、ラーメンのような時間が経つと伸びてしまうものを運ぶのは難しい?

自動配送ロボットは、地域の配送拠点から個人宅に向けてなど、いわゆる物流のラストワンマイルと呼ばれる部分を走行することを念頭においており、何十キロも走ることは想定していません。サービスの設計次第ですが、人が自転車などで作りたての食事を運ぶサービスもありますので、一概に難しいわけではないかもしれません。

ロッカーから商品を取り出す様子(画像提供:経済産業省)
ロッカーから商品を取り出す様子(画像提供:経済産業省)

4月1日からサービス開始というわけではない

――都市部より地方部の方が使われることは多くなりそう?

一般的には、人が多い都市部の方が需要が多く、地方部では人手不足などの課題が大きいと考えられます。そのため、サービスの内容や地域課題によって、様々な場所で活用されることを期待しています。


――41日にサービスをスタートする企業はありそう?

4月1日は改正道路交通法の施行日で、その後、サービス開始に向けて、企業が届出など必要な手続きを行います。このため、4月1日からサービス開始というわけではありません。ただ、制度改正後に届出を行うという意思表示をしている企業は既に出てきており、準備が出来次第、サービスが開始されていくと考えています。また、今後、自動配送サービスを進めていきたいという声は多くの企業から聞いています。


――自動配送ロボットの現時点での課題は?

ロボットを製造したり、運用する際のコストが高いという声はあります。需要を増やしてコストを下げるために、自動配送ロボットを多くの人に認知してもらい、活用してもらうことや、同時に管理できるロボットの台数を増やすことで運用する際のコストを下げていくといったことで、こうした課題が解決していくと考えています。


――自動配送ロボットには今後どんなことが期待される?

今回、低速で小型の自動配送ロボットが位置付けられましたが、更に技術開発などが進めば、より大きなロボットで、より大きなものを運ぶなど、更に様々なロボットが登場していくことを期待しています。
 

4月1日から街中をたくさんの自動配送ロボが走り出すというわけではなさそうだが、今後準備が出来次第、サービスを開始する企業も出てきそうだ。今後、自動配送ロボットのサービスが普及することで、社会課題の解決に貢献していってほしい。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。