住友不動産が、スタートアップ企業にオフィスとともに新規取引につながるマッチングの場を提供する。     

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Z-Works創業者・小川誠さん:
介護現場の課題をテクノロジーで解決すると。

壇上で話をしているのは、介護支援のIoTプラットフォームを提供する「Z-Works」創業者・小川誠さん。

カルディオインテリジェンス・田村雄一さん:
世界中でこういった心電図診断を届けるというのが、我々のミッションになっている。

心臓の専門医が経営するAI心電図の会社「カルディオインテリジェンス」担当者も登壇。

様々な企業の新規事業担当者やベンチャーキャピタルの担当者たちが、これらのスタートアップ企業のプレゼンテーションに熱心に耳を傾けていた。

このピッチイベント「虎ノ門サミット」を主催したのは、会場のビル「虎ノ門タワー」を運営する住友不動産。今回は第3回目として医療やヘルスケア業界にフォーカスした内容となった。

自社のテナント企業やグループ会社などと、スタートアップ企業のマッチングを目的に、毎月開催している。

今回は医療系のスタートアップ10社が登壇した。

プレゼン終了後には懇談会が開かれ、会場のいたるところで名刺交換が行われた。

介護支援のIoTプラットフォームを手掛けるスタートアップ「Z-Works」創業者・小川誠さんのもとにも、早速大手企業が集まった。

Z-Works創業者・小川誠さん:
こちら貸し出しもできます。トライアルをやってまして、まずいいかどうかを試してもらわないといけないので。

マットレスの下に敷くセンサーを使った、“見守りシステム”について直接説明する場面もあった。

Z-Works創業者・小川誠さん:
こういうイベントはありがたくて、こちらから発信する機会がなかなかなくて。それも真剣に事業会社の方が聞いていただけるという機会はなかなかないので。まさにオフラインならではのイベントかなと…。

登壇した別のスタートアップ企業の担当者も、次のように語る。

カルディオインテリジェンス・田村雄一さん:
病院医療関係者だけじゃなくて、こうやって取り巻くようなパートナーというのはたくさんあるので新しい出会いというのはすごく大事。

選ばれた企業のみが出会える絶好の機会

今回のイベントは登壇企業だけでなく、参加した大手企業や主催者側にも良い機会となり、ポジティブな声が多く聞かれた。

IT企業の新規事業担当者:
スタートアップさんとの出会いがあればいいなと。もうひとつは、住友不動産がいろんな会社さんを呼んでいるのでそういった事業会社さんとの出会いもあるといいなと。

SmartHR・担当者:
普段接しない企業さんが多くて刺激になる。”ビジネスになにかつながるかも”というのがあったので、ぜひご連絡していろいろやりとりしていきたい。

SMBCベンチャーキャピタル・太田洋哉取締役:
一定の目利きをしてもらった企業が一堂に集まって、いっぺんに話をいけるのは我々にとっても非常に大きな意味がある。

イベントを主催した住友不動産は、スタートアップ企業が入居しやすいよう、敷金を抑えネット環境や家具を揃えたセットアップオフィスを用意しており、2023年5月に完成を予定している。

住友不動産ビル事業本部・藤島正織さん:
このビルの施設から大きくなっていくような成長企業が、どんどん生まれていくような流れが築いていければ弊社としてもありがたい。

今回の取り組みはWin-Win-Win

「Live News α」では、キャスター取締役CROの石倉秀明さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
今回の試み、どうご覧になりますか。

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
住友不動産、大手企業、スタートアップの3者全てに、メリットがある取り組みだと思う。

実際、銀行なども大手企業とスタートアップをつなぐ動きは活発に行なっているが、不動産会社の場合、テナント企業がたくさんあり、かつ、もしかしたら同じビルにいる会社同士を繋げることができるのは大きな特徴。

住友不動産にとっては、テナント入居も埋まるし、付加価値も出せる。また大手企業からしても、自社の課題にあったサービスを提供しているスタートアップと一気に会えることにもなる。

堤 礼実 キャスター:
実際に会社を立ち上げ、経営にあたる石倉さんから見て、スタートアップ側のメリットは。

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
例えば、創業間もないスタートアップは、審査の関係で入居できるオフィスが限られるため、住友不動産による場所の提供は単純にありがたい。

また、大きくなる1~2年で移転することも多いので、オフィス家具を準備せずに入居できるのは、費用面でも大きい。

そして最も大きいと思うのは、マーケティング面。具体的には、この場に来れば、一気に100社近い企業と接点が取れる。

その中でも、大企業とつながるきっかけが得られるのは非常に魅力的。

両者の連携で新たなビジネスチャンス

堤 礼実 キャスター:
確かに、まだ実績のないスタートアップが様々な企業と接点をもつのは、難しいことですよね。

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
今は個人向け“BtoC”より、企業向け“BtoB”のスタートアップが増加傾向にある。

こうしたスタートアップはウェブ広告などを中心に集客をするわけだが、これだと大企業から問い合わせが来ることは少ない。

そこで、銀行や知り合いの紹介などに頼ったり、手紙を送ったり自社でセミナーの開催など、試行錯誤しているスタートアップは多いが、なかなか確固たる手段がないのも事実。

大手企業を獲得したいスタートアップというのは、一定事業が成長し、収益もあるフェーズであることも多いので、そういう会社が大企業と繋がることを目的に、住友不動産のビルに入居しようという意思決定も十分あり得る。

連携しているように見えて、実は、まだまだ接点を取る手段があまりない両者をつなげていくことに、ビジネスチャンスが眠っているのかもしれない。

堤 礼実 キャスター:
今回のような交流をきっかけに、スタートアップの豊かな発想が、大企業の課題を解決に導くかもしれません。そして、大企業との取引実績をバネに、スタートアップが成長するチャンスが得られるかもしれません。こういった取り組みによって、色んな可能性が広がるのではないでしょうか。

(「Live News α」3月29日放送分より)