静岡県に本社を置くスズキのトラックが、タイで人気だ。移動販売の屋台や、常設のカフェ、理容室など、さまざまな用途に利用されている。荷台の改装工場は大忙しで、注文から納品まで3カ月待ちだそうだ。何がタイ人の心をつかんだのだろうか。
ピックアップトラック 人気の理由は税金
この記事の画像(17枚)タイの首都バンコク。世界でも有数の“渋滞大国”としても知られる。
多く走っているのは、運転席の後ろが荷台となっているトラック、「ピックアップトラック」だ。
タイでは新車販売の約4割をこのタイプが占め、“ピックアップトラックの聖地”とも言われている。
その理由は税金の安さだ。
乗用車を買う時にかかる税金は30~50%なのに対し、ピックアップトラックはほとんどの車種が3~15%と格安だ。
農業や工業が盛んなタイでは、荷物を運ぶ実用的な車とみなされ、税金が安く抑えられている。
本体価格が100万円だとすれば、乗用車の税込み価格は130~150万円なのに対し、ピックアップトラックは103~115万円と、大きな差が出る。
屋台で人気の車はスズキ「キャリイ」
トヨタやいすずなど日本メーカーが大きなシェアを握るピックアップトラック市場の中で、独自の市場をつくっているトラックがある。
浜松市に本社を置くスズキの「キャリイ」だ。いま、その活用方法がタイで注目されている。
たくさんの飲食店が出店するバンコクのイベント。
タイ料理からアイスクリームまで、店はすべてトラックを改装したもので、よく見るとほとんどがスズキのトラックだ。
なぜキャリイを選んだのか、聞いてみた。
果物店:
妻の弟が車の整備士なんだけど、「スズキのキャリイが良い」とすすめてくれた
タイやきそば店:
荷台の容量が大きいし便利。値段も安いし節約できる。いちから商売を始める時に助かる
日本の軽トラックよりひと回り大きなサイズだが、タイでは同じようにコンパクトなサイズのトラックは、スズキ以外にほとんど販売されていない。
屋台文化が根付くタイでは、トラックの荷台を屋台として利用する人も多く、使い勝手の良いサイズ感と値段が人気の理由だろう。
カフェや理容室としても活用
その人気は屋台に留まらない。
華やかな装飾が施されたオシャレなカフェ。
さらに、荷台のカバーを開くと理容室に早変わりする車もある。移動式の理容室として使われ、地元で人気となっている。
新型コロナが蔓延していた1~2年前には、PCR検査を行う車としても20台が活躍していた。
荷台の改装工場は大忙し
そして需要が増えた結果、大忙しとなっている場所があった。
溶接やアルミの加工に追われる作業員たち。トラックの荷台専門の改装工場だ。
サッチャルン・オートトラック ボムさん:
車のボディデザインに合わせて、鍵などを取りつけている。これもスズキのキャリイ用です
客の注文に合わせて、バンタイプや冷蔵庫付きなどに改装する。
店の前にずらりと並んでいるのは、スズキのキャリイだ。改装費用は30~70万円ほどで、依頼の7割がスズキのものという。発注が年々増え、いまは3カ月待ちだそうだ。
使い方いろいろ 現地法人も提案
想定外の人気を得ているスズキのトラック。
バンコクで開催されているモーターショーに行くと、スズキのタイ現地法人が自らモデルカーを作って、新たな使い方を提案していた。洋服や靴を修理する工房をイメージしている。
スズキモーター タイランド・天野実社長:
キャリイでも、こういうことがいろいろできると提案して、地道に努力を積み重ねていくことが(販売拡大に)大事と思っています
キャリイの年間の販売台数は4000台。
年間45万台にのぼるタイのピックアップトラック市場では小さな規模だ。
だが、その存在感はますます大きくなっていきそうだ。
(テレビ静岡)