デジタル技術を使って社会や生活の変化を促すデジタル・トランス・フォーメーション=DX。ものづくりまち・新潟県三条市で、DXを推進し、街の価値を上げる取り組みを取材した。

三条市 企業の「デジタル化」を支援

発注されたサイズに合わせ金属の資材を加工して、製造業者へ納品する三条市の「野崎忠五郎商店」。

この記事の画像(21枚)

150年の歴史と信用に支えられたこちらの企業では、8代目の野崎寛行さんを悩ませる問題があった。

野崎忠五郎商店 野崎寛行 常務:
お客様が発注した紙を見て、工場で社員が作業をする

野崎忠五郎商店 野崎寛行 常務:
発注の紙を持っての行き来で、時間の損失が発生する。紙を紛失するリスクもある

そんな野崎忠五郎商店に1月、三条市役所の車が。商工課の飯塚絵美さんに同行した企業と野崎さんは打合せを行った。

内容は、デジタルツールを使って、社員同士が情報共有するシステムについて。

野崎忠五郎商店 野崎寛行 常務:
デジタル化を自社だけで進めるのは難しい。三条市を経由して、デジタル化のスタートラインに立ちたい

これは、三条市が2022年度に行っている事業の一つ。

市内でデジタル化を検討している企業を支援するもので、現在までに6社が利用している。

三条市商工課 竹田翔大 係長:
DXデジタル・トランス・フォーメーションは、企業などがデジタル技術で経営の形を変えたり、事業を再構築する意味を持つ。三条市内の製造業は情報を紙でやり取りしているところが多くある

三条市・サポート企業の狙い

DXに興味を示す企業とDX化をサポートする企業をマッチングする三条市の狙いは?

三条市商工課 竹田翔大 係長:
一つの企業で業績が伸びれば、三条市の税収が増える。デジタル化の成功により、先行事例が波及することで、地域として業績を上げたい

野崎忠五郎商店のDX化をサポートする「インサイトラボ」は、企業の要望に適したデジタルコンテンツの提案を行う東京の企業で、2020年に新潟へ進出。

三条市と組んだ企業支援をチャンスと考えている。

インサイトラボ 遠山功 社長:
東京に本社があって、新潟に数年前進出したので、会社があまり知られていない。行政と手を組むことで、仕事を受注する企業への信頼を築ける

インサイトラボ 遠山功 社長(右)
インサイトラボ 遠山功 社長(右)

デジタル化で効率UP・人材不足解消へ

三条市で屋根の雪下ろしに使う安全器具を製造販売している「鈴文」。

2022年度に三条市が始めた支援事業を活用し、デジタル化を推進している。

本社から離れた工場との打ち合わせでは、製品の映像を見ながら行うことで正確さと速さが向上した。

鈴文 鈴木一 社長:
DX推進をして、生産効率を上げることで、人材不足を解消したい

3月、金属資材の卸をする野崎忠五郎商店には、三条市とDX化をサポートするインサイトラボが訪れ、試験導入したツールの報告を受けた。

1カ月ほど前から社員の情報伝達をデジタル化。工場の生産状況などを同時に共有することができるようになった。

野崎忠五郎商店 皆川源吾さん:
デジタル化で紙に書く作業が減った。今まで、内線などの会話で5~10分かかっていたのがなくなったので、効率が上がった

情報が正確に早く伝わることで、製品の納期短縮やロスの削減を実感。8代目の野崎さんは、DXの推進に可能性を感じていた。

野崎忠五郎商店 野崎寛行 常務:
効率が良くなった分、その余裕を社員に還元したり、商品開発など会社の成長につなげたい

DX推進で“ものづくり”を世界へ

実は、今回のDX推進は野崎さん本人の変化にもつながっていた。1月の会合で、インサイトラボのスタッフがパソコンに情報を打ち込むのに対し、野崎さんはノートとペン。

しかし、3月の報告会ではパソコンを使っていた。

野崎忠五郎商店 野崎寛行 常務:
デジタル化のやり方が分からないのもあったし、「やれない」という先入観で見ていたと思う

DXの推進で、“ものづくりのまち”の価値を上げると考える三条市。

三条市商工課 竹田翔大 係長:
DXを推進する企業で収益が上がり、より情報発信できるようになることで、世界に燕三条のものづくりを発信していける

デジタル技術で、潜在能力を最大限に引き出す“ものづくりのまち”をあすにつなげる挑戦だ。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
NST新潟総合テレビ

新潟の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。