観光庁は、日本を訪れる富裕層の外国人を地方に呼び込むため、「モデル観光地」として11のエリアを選定した。

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「モデル観光地」に選ばれたのは、沖縄・奄美や鹿児島・阿蘇・雲仙、せとうち、鳥取・島根、奈良南部・和歌山那智勝浦、伊勢志摩および周辺地域、北陸、松本・高山、那須および周辺地域、八幡平、東北海道の11エリア。

モデル観光地は、“1回の旅行で100万円以上を消費”する富裕層の外国人をターゲットとする。

環境を整えて富裕層を都市部から地方へ

外国人富裕層の訪問を、大都市部だけでなく、地方へも呼び込もうとする今回の取り組み。

モデル観光地では、宿泊施設の整備や専門家の派遣、観光ガイドの人材育成などを集中的に支援する計画で、地方での消費拡大を目指す。

観光庁によると、コロナ禍前の2019年の外国人富裕層は、訪日客全体の1%ほどであるにもかかわらず、消費額は11.5%を占めていたという。

しかし、大都市圏での消費が多く、地方での消費が少ないことが課題となっていたため、訪問先を広げ、地方経済の活性化を図る。

「安い」から「良い」日本をアピール

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
海外の富裕層を狙ったインバウンド策、馬渕さんの目には、どのように映っていますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
「日本はこれから何で儲けるか」をみんなで真剣に考える時期にありますが、インバウンドは大きな柱になります。

実際にインバウンドの数が、予想を上回るペースで回復しており、その経済効果も膨らんでいます。

コロナ以前のインバウンド需要は4兆円規模でした。為替やインフレの影響もありますが、2023年は5兆円達成の見通しで、今後は10兆円もうかがえる勢いがあります。

このインバウンド需要をさらに盛り上げるためには、やはり富裕層の取り込みがカギになります。

堤 礼実 キャスター:
政府の狙いもそのあたりにあるようですが、海外の富裕層に日本の地方で楽しい時間を過ごしてもらうためのカギは。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
インバウンドの一人当たりの消費額は、約21万円。これはコロナ前の2019年と比べると約5万円アップしていますが、まだまだ少ないです。

そこで、政府は1人あたり100万円以上消費する外国人富裕層を地方に呼び込むために、今回の取り組みをスタートしたわけです。

この目標をクリアするためのポイントは、「安い日本」ではなく「良い日本」の魅力をアピールすることです。

これまでのインバウンドは、「安くていいもの」を主に訴求してきました。しかし、日本のサービスや商品は、もっと付加価値を認められてもいい、素晴らしいものが多いです。その魅力をしっかりアピールしたいですよね。

ホスピタリティを世界標準へ

堤 礼実 キャスター:
海外からの訪問客への「おもてなし」でクリアすべき課題をあげるとすると、どういった点があるのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日本流の「おもてなし」はインバウンド客にも好評ですが、富裕層が満足する、世界標準のホスピタリティを提供できる人材を育てていく必要があります。

例えば、私たち日本人でも気がつかない、インバウンド客が喜ぶ日本の魅力をどう体験してもらうのか。高級宿泊施設や、体験型ツアーに対応する専門スタッフの育成が急がれます。

先ほど、「良い日本」の魅力を訴求すべきとお話ししましたが、最高の体験を提供する「良いスタッフ」もラグジュアリー・インバウンドの成功に欠かせません。

堤 礼実 キャスター:
やはり、カギになってくるのは“ヒト”ということなんですね。

国が進める政策というのは、きっかけであって、それを成功させるには、地域の方たちはもちろん、私たちみんなで「おもてなし」の心をもって「また行きたい!」と思ってもらえる、さまざまな感動体験の提供が欠かせないように思います。

(「Live News α」3月28日放送分より)

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