福岡市の再開発事業「天神ビッグバン」によって誕生した、天神ビジネスセンターのオフィスで、まるでSFのような“再生医療”の研究が行われている。都市部で展開する再生医療の最前線にカメラが初潜入した。
オフィスビルに作られた研究室
オフィスフロアの一角に作られた無菌の研究室。九州大学発のベンチャー企業「サイフューズ」の研究拠点だ。
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「サイフューズ」秋枝静香代表:
次世代型のモジュール式クリーンルームは、はめ込み式のクリーンルームになっていまして、天井のパネルからきれいな空気を循環させることで、部屋の中を無菌に担保します
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「サイフューズ」秋枝静香代表:
福岡市内のアクセスのいい、細胞を運びやすい場所でラボを構えることに注力して探していました。「天神から再生医療を届けよう」と一丸となって応援してもらいましたので、ここで再生医療をやっていくと決心しました
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オフィスビルでも安全に研究できるよう、大手企業と共同開発したコンパクトな無菌室に、今回初めてテレビカメラが入る。記者も防護服に着替え、準備万端。研究の最前線に潜入だ。
患者から採取した細胞で作る「再生臓器」
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「サイフューズ」臨床培養士・松林久美香さん:
こちらが細胞版の3Dプリンタ、いわゆる「バイオ3Dプリンター」になります
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研究の「肝」、特殊な3Dプリンタは入力されたデータを元に細胞を積み上げる。プリンタにとってのインクの役割を果たすのが、人の細胞を培養して作った団子状の組織だ。
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ーー団子になるまでどのくらい?
「サイフューズ」臨床培養士・松林久美香さん:
だいたい2~3日ほど培養して、プリントに使用しています
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プリンタが動き始めると…。
「サイフューズ」松林久美香臨床培養士:
ロボットの先端についているノズルで団子を吸い上げて、下に設置している針が並んだ「剣山」といわれる部品の上に設置していきます
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この3Dプリンタは、患者から採取した細胞を元に作成した、わずか0.5mmほどの「団子」を小さな針の山に積み上げていく。
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生きた細胞を使うことで細胞自身が自然とくっつき合う性質を生かし、血管や神経などの再生臓器を作るという技術だ。
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できあがった血管に触れてみると…。
テレビ西日本・楢崎春奈記者:
思ったよりすごく弾力があって、もっと繊細かなと思ったんですけど、しっかりしています。団子が組み上げられて、こんなしっかりくっついてひとつの血管になるんだって思うとすごい技術です
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3Dプリンタから生まれた血管は、人工透析の現場で臨床試験が進められている。透析によって何度も針を刺し、傷んでしまった血管の代わりにこの血管を移植するのだ。
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患者自身の生きた細胞から作るため、拒絶反応などのトラブルが起きにくく、2~3年後の実用化を目指している。
「アジアの玄関口」福岡から世界へ
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「サイフューズ」臨床培養士・松林久美香さん:
さまざまな業種の企業さまと同じビルで研究することで、私たちの会社も経済の一員なんだなという意識が強くなりました。研究開発だけでなく、さまざまな形で社会や地域に貢献していきたい
さらに、アジアの玄関口という地の利を生かし、サイフューズは台湾の企業とも提携を結ぶなど、福岡から世界へ再生医療で希望を届けたいとしている。
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「サイフューズ」秋枝静香代表:
多くの方々に「再生医療」を知っていただきたいですし、身近にあるということを知っていただきたいと思っています。現場で苦しんでいらっしゃる患者のために少しでも貢献できればと思っておりますので、社員スタッフ一同、全力で取り組んでいきたい
行政側としても、最先端技術を誘致し、世界で活躍する企業を育てたいという思惑がある。企業側、行政側の思惑が一致し、天神に拠点を設けることになったというわけだ。
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都会のど真ん中にあるオフィスから、多くの患者の希望となる新しい医療技術が羽ばたこうとしている。
(テレビ西日本)