メッセージを会話形式のように送受信できる「チャット」機能。スマホアプリ、SNS、オンラインゲームなどで使われているが、子どもたちのトラブルのきっかけにもなるという。

陰部の撮影、金銭を要求するケースも

習い事の総合情報サイト「テラコヤプラス by Ameba」が、2021年12月~2022年1月、小学生~高校生の保護者1024人に行った調査では、次のような“チャットトラブル”が寄せられた。

遊び半分で画像を共有することも(画像はイメージ)
遊び半分で画像を共有することも(画像はイメージ)
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・「小学生の男の子たちが、遊び半分でお互いの陰部を撮影し、グループLINEで共有していたと問題になった」(小学5年生の保護者)

・「同級生とその従兄弟から、お金を要求された。本人は誰にも言えず、なんとかお金を集めようとしていたが、その様子がおかしかったので、チェックしたところ事実が発覚した。私が相手の両親に話し、事なきを得た」(中学3年生の保護者)

悩ましいのが、トラブルはさまざまな端末を入口に起きる可能性があること。調査では、子どもたちがどんな端末でチャットなどを利用するかも調べている。

端末ごとの利用状況(出典:テラコヤプラスの調査結果より)
端末ごとの利用状況(出典:テラコヤプラスの調査結果より)

すると、利用割合が最も高いのはスマートフォンで「利用している」(66.3%)、「利用していない」(31%)、「わからない」(2.7%)だった。一方で、ゲーム機器、パソコン、タブレットといった端末でも一定数が利用していたという。

チャットは身近な存在になっていそうだが、トラブルはなぜ起きてしまうのか。子どもを被害者・加害者にしないため、親は何ができるのだろうか。

チャットの内容が現実とリンク

いじめ防止・相談プラットフォームの運営企業「マモル」の代表で、自らもいじめ防止、ネットリテラシーの講演を行う、くまゆうこさんに聞いた。

くまゆうこさん(提供:マモル)
くまゆうこさん(提供:マモル)

――子どものチャットトラブルが目立つ年代は?

小学校高学年~中学生ですね。ラインを初めて使うようになって、いじめやトラブルに発展するケースが目立ちます。高校生くらいになるとインスタグラム(画像・動画投稿がメイン)に移行するほか、自制するようになり、落ち着く傾向にあります。


――トラブルのきっかけとなるパターンを教えて。

複数人が参加できるグループチャットが多いです。今の子どもは小学校高学年くらいで、クラスメイトのチャットルーム(○年□組など)を作るようになります。ここでのやり取りが現実とリンクして、特定の人を攻撃するといったトラブルが起きます。

このほかだと、ゲーム内のボイスチャットでのトラブルも目立ちます。熱中して言葉遣いがひどくなる、自分や知人の個人情報を晒してしまう・晒されてしまうといったことが起きます。

チャットは精神的なダメージを受けやすい(画像はイメージ)
チャットは精神的なダメージを受けやすい(画像はイメージ)

――トラブルにつながりやすいのはなぜ?

チャットは気軽にメッセージを送れる、発言することができますが、同時に「1人対多数」の構図になりやすいです。例えば、1人が1回しか文句を言わなくても、指摘される方は何回も攻撃されていると感じる。そのため精神的なダメージを受けやすい、疎外感を覚えやすいです。

家族のラインで「気になったところ」を伝えてみよう

――子どもがチャットを利用する際の注意点は?

自分の気持ちを文字で伝える、スタンプなどで表現するのは大人でも難しいですよね。特に子どもは気軽に送るので不快な思いをする・させることも考えられます。基本的なことですが、メッセージの送信前に見返すことはさせた方がいいでしょう。

また、最近は自分の写真・動画を送ることに抵抗がない子どもが多いとも感じます。他人の手に渡ると知らないところで使われる可能性もあるので、扱いに注意してください。

家族のラインで気になったところを伝えてみよう(イラスト:さいとうひさし)
家族のラインで気になったところを伝えてみよう(イラスト:さいとうひさし)

――チャットの扱い方を学べる方法はある?

家族のラインでやり取りする時、内容で気になるところ(怒っているように感じた、嫌な印象を受けたなど)を互いに伝えるようにしてはいかがでしょう。子どもは実体験になるので、してはいけないことを理解しやすいです。親も指摘されて、学べることがあると思います。


――ボイスチャットを利用する際の注意点は?

音声の印象だけで相手を判断しないことです。相手が身分や性別を偽っている可能性もあること、個人情報をうかつに話さないことは事前に伝えておくべきでしょう。


――チャット全般で、家庭でのルールは必要?

あってもいいですが、禁止事項だけを押し付けるのはお勧めしません。例えば「写真を送ってはだめ」と伝えても、子どもは本質を理解できません。実際の被害例と合わせて、それをするとどうなるのか、どうすれば防げるのかを親子で考えて決めた方がいいと思います。

リアルな関係は「ブロック」では解決しない

――子どもがチャットに夢中な場合、親はどうすればいい?

お風呂やご飯をとらずにのめり込んでいる、子どもがやめたくてもやめられない状況なら、親が干渉して時間制限などを考えるのも手段です。ただ、関係が悪化する可能性もあるので、親子でのコミュニケーションができていることが前提となります。


――トラブルに巻き込まれたらどう対処すればいい?

チャットトラブルは発生から時間が経過すると、状況が悪化しがちです。親は対処を短時間で判断しなければならず、パニックにもなるので、身近で相談できる人を事前に考えておくことをお勧めします。現実的にはきょうだい・ママ友などでしょうか。

専門家に頼ることもあっていいと思うのですが、身近な人が似た事例を経験していたり、解決策を持っていることもあるので、初動は近しい人に相談してみるべきでしょう。

子どもと一緒に扱い方を学んでみては(画像はイメージ)
子どもと一緒に扱い方を学んでみては(画像はイメージ)

――チャットトラブルに関連して伝えたいことは?

チャットの関係は相手をブロックすると終わりますが、リアルだとそうはいきません。社会ではデジタルのコミュニケーションがうまくできるかどうかは仕事ぶりにも関わりますので、親御さんは「チャットなんてやってるの?」と思わず、子どもと一緒に扱い方を学んでほしいですね。


くまゆうこさんによると、子どもはチャットの経験を重ねることで、相手を傷つけない言葉遣いや送るタイミングを理解していくという。心配だから使わせないのではなく、親子一緒に、正しい扱い方を学ぶのがいいかもしれない。

(記事前半の調査結果は「テラコヤプラス by Ameba調べ」)

(表紙デザイン:さいとうひさし)

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。