カレーやスパイスなどを展開するハウス食品や、カレーハウスCoCo壱番屋、マロニーなどをグループ傘下で運営・提供しているハウス食品グループの中で、長年、主力ブランドとしてみなさまに愛され続けてきたバーモントカレーが、今年で発売60周年を迎える。

ここでは、「りんごとハチミツ」のキーワードで知られるバーモントカレーの歴史をひもとき、同商品がシェアトップで走り続けられる秘訣に迫るため、ハウス食品食品事業一部ビジネスユニットマネージャー・山本篤志さん、ハウス食品グループ本社広告統括部企画制作課長・生田幸平さんに、フリーアナウンサー・佐藤里佳さんが話を聞いた。

「マイルド」「食べ飽きない」相反する要素の両立

発売60周年を迎えるバーモントカレー
発売60周年を迎えるバーモントカレー
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――発売60周年を迎えるバーモントカレーですが、どういった経緯で生まれたのでしょうか。

山本篤志さん(以下、山本):
バーモントカレーが誕生する以前のカレーは、大人の男性好みのサラッとした辛いものが一般的でした。

しかし、家庭における消費者の主役が、“働きに出る男性”から“子ども”に移っていくなかで、「お子さまでも食べられるマイルドなカレーをつくろう」という話が出て開発がスタートしました。

マイルドな味をつくるために、果物や乳(=乳成分を含む素材)など、さまざまな素材の配合を試し、行き着いた先が「りんごとハチミツ」だったのです。

――そうなのですね。なぜこれほどに支持されるのでしょうか。

山本:
バーモントカレーは、お子さまから大人まで、皆さまに美味しく召し上がっていただける「マイルドなコク」がポイントです。

辛すぎず、ごはんと共にいただく時に飽きも来ない、バランスの取れたやさしい味になっていて、それが長く愛され続けてきた理由になっていると思います。  

「マイルドな味」と「食べ飽きない味」は実は相反する要素です。これを両立させるには、果物や乳によってコクを出しながらも、「ほどよいスパイス感」を出す必要があります。

どれくらいのバランスなら、お子さまも食べられて、大人でも満足できる味になるのか。

この追求は本当に難しく、何百回と試行錯誤を繰り返したと聞いています。  

ハウス食品食品事業一部ビジネスユニットマネージャー・山本篤志さん
ハウス食品食品事業一部ビジネスユニットマネージャー・山本篤志さん

山本:
ハウス食品では、マイルドという軸はぶらさずに、時代によって変わるお客さまの嗜好に合わせて、その都度、味の改良を重ねてきました。

1963年に発売が開始されてから、今回=発売60周年のリニューアルで15回目の改良になります。

――改良の継続が、長年、愛されてきたポイントなのですね。

アレルギーを持つ人から地球環境まで配慮

山本:
これは誕生秘話ではないのですが、15回の味の改良の中でも、2018年にはアレルゲンである「ごま」原料を不使用に変更しました。

一つのアレルギー要素を抜くだけで風味はガラリと変わります。

今まで愛してくださったファンの方々のことも考えて、風味を変えずにカレーを改良する必要がありましたが、これも研究を重ねて実現し、ゴマアレルギーの方もバーモントカレーを楽しめるようになりました。

他にも、アレルギーを持つ人にも召しあがっていただける「特定原材料(7品目)不使用シリーズ」のバーモントカレーというものもあります。

もちろん、おいしさはそのシリーズでも維持しています。

――今回のリニューアルでは、どのような改良をされたのでしょうか。

山本:
大きく三つの改良を実施しました。現在は健康を意識される方が増えているので、まず一つ目として「一皿あたり食塩相当量を0.1グラム減らす」ことを実現しました。

また、二つ目の改良は、バーモントカレーにある、甘口・中辛・辛口のうち、「辛口」の味を変えたことです。「まろやかでスパイシー」というキャッチコピーにも表れている、味の改良です。

そして三つ目として、バーモントカレーのトレイから石油由来のプラスチック原料を削減し、一部、植物由来のものを使うように改変を行いました。(市販の大箱タイプに限る)

それにより、年間206トンのCO2削減見込みです(GHGプロトコルガイドラインに基づき、排出されるCO2を、2021年度の生産数量をもとにハウス食品グループ本社にて算出)。

バーモントカレーは体にも環境にもやさしい仕様になっているのですね。

企業姿勢の起源は社会貢献意識の高さに

ハウス食品グループ本社広告統括部企画制作課長・生田幸平さん(右)
ハウス食品グループ本社広告統括部企画制作課長・生田幸平さん(右)

消費者のことを考え尽くした上で生まれたバーモントカレー。この“ユーザーファースト”な企業姿勢の起源は何か。ハウス食品グループ本社、生田幸平さんは「食を通じて人々の心身を豊かにしたいという願いがある」と語る。

――ハウス食品グループとして、どのような社会貢献活動をされているのでしょうか。

生田幸平さん(以下、生田):
1996年から「はじめてクッキング」教室という活動を展開しています。自分たちでカレーをつくって食べることを体験し、全国の子どもたちに「食」への興味をもっと広げてほしいとの思いから始めました。

「はじめてクッキング」教室に参加する園児
「はじめてクッキング」教室に参加する園児

生田:
「はじめてクッキング」教室は、2023年でのべ1000万人の園児が体験する見込みです。食材に直に触れることで食べ物の大切さを知ったり、料理をする楽しさを知ることを通じて、子どもたちの心身の成長に貢献できたらと思っています。実際にこの活動を実施した園から、「日頃なかなか食が進まなかったり、食べ残しをする子どもが、おかわりをするほどモリモリ食べました」といったお声をくださいました。

――1996年から、いわゆる「食育」をされてきたのですね 。

生田:
実はそれ以前からも食育的なものは実施してきたと聞いています。

また、弊社では、好き嫌いや栄養の偏り、孤食といった子どもをめぐる食の環境を改善したいとの思いから、「子ども食堂」の支援活動も行っています。

全国の子ども食堂に、ハウス食品グループの食品と季節のレシピ、そして子ども食堂に宛てた社員からのメッセージをお届けしています。

こちらは「えがお便」という名で精力的に継続して取り組んでいます。

加えて、近年社会課題になっている「食品ロス」の削減にも挑んでいます。

食品ロス削減のためのレシピをHPで提供
食品ロス削減のためのレシピをHPで提供

生田:
「もっとカレーだからできることプロジェクト」というのですが、期限が近づいていたり、捨てられがちなさまざまな食材を、「おいしくまとめられる」というカレーのチカラを活かして調理し、食べていただく啓発活動をしているのです。

レシピ等を提供し、まさに「おうちで食品ロスの削減」を推進しています。

――レシピを見ましたが、意外な組み合わせも多く、驚きました。

生田:
私自身、「これはさすがに難しいのでは」と感じた食材の組み合わせもあったのですが、カレーにするとキチッと味がまとまるんです。カレーの奥深さ、懐の深さを感じましたね。

――レシピを活かすことで、味覚も満たされるし、環境にもやさしくできる。食品ロスも防げる。とても大切な取り組みですね。カレーの「まとめるチカラ」に、万能さすら感じます。

ハウス食品グループが考える未来の展望とは

カレーの特質を活かした社会活動は、ハウス食品グループの本能ともいえる取り組みなのかもしれない。カレーを消費者の喜びや環境保全につなげたい。その思いが、めぐりめぐって味の「マイルドさ」につながっていると言えそうだ。

ハウス食品グループ本社・大阪本社
ハウス食品グループ本社・大阪本社

――バーモントカレーと 、ハウス食品グループの未来の展望について教えて下さい。

山本:
バーモントカレーは60年続いたハウス食品の看板商品です。その「60年続いた歴史」を未来につなげていきたいです。

60周年を「区切り」とせず、この先も10年、20年、60年とお客さまに愛される形に「進化していくきっかけにしていければと思っています。

生田:
われわれハウス食品グループ本社では、「つくろう、未来の笑顔。 」というテーマのもと、情報発信や多岐にわたる取り組みを進めてまいります。

地球の恵みを受け取り、届ける企業として、おいしさと健やかさを提案する企業として、今の食の豊さを未来につなげていきたい。

そのために、あらゆる場面で健やかな食をつなぎ、笑顔ある未来を支える活動を展開していきます。

衣装協力:JOSEPH