話し始めるときに同じ音を繰り返したり言葉が詰まったりする「吃音(きつおん)」の症状をもつ人は、100人に1人といわれ、特に子どもたちはうまくコミュニケーションがとれないことで、不安や孤独を抱えるケースも多いという。そんな子どもたちに寄り添いたいと活動している女性を取材した。

富山市で「あそびの会」を開催

2月26日、富山市で言葉がなめらかに出ない「吃音」のある子どもたちに向けたイベントが開かれた。スタッフをとりまとめていたのは、立山町に住む嶋田唯さん。この日開いたのは、「吃音」の子どもたちのためのスポーツ教室。

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嶋田唯さん:
おはようございます。皆さん名札を付けていただきたくて。例えば私だったら、「嶋田唯、吃音があります。言葉が出ないけどゆっくり聞いてください」とか。子どもたちが、自分でも学校などで使えるように自己紹介を書いてほしい

嶋田さん自身、幼いころから吃音に悩んできた。

嶋田唯さん:
「あんまり吃音わからんね」って言われるんですけど、わからないように見せているっていうか、自分の中では悩んだりする

100人に1人の割合で症状があるとされる、言語を音声として発するときの障がい「吃音」。幼児期(2~5歳)に発症する場合がほとんどで、その要因は生まれた持った体質によるものが大きいという報告もあるが、詳しいことはまだわかっていない。

音を繰り返す「連発」、音を引き延ばす「伸発」、言葉を出せずに間があいてしまう「難発」という、大きく3つの症状がある。

このうち、嶋田さんの症状は「難発」。

ーー唯さんは今、富山市在住でしたっけ?

嶋田唯さん:
今…。私自分の住んでるところが言えなくて…

苦手な言葉は喉がブロックされるような感覚で声が出ないため、別の言葉で言い換えることもあるという。

嶋田唯さん:
子どものころから吃音があることを人に言えなくて隠していた。吃音は人に言っちゃだめだとか、からかわれるからもう知られたくないって。自分の殻に閉じこもっていたようなことがあった。子どもたちにはそういう思いをしてほしくない。「ひとりじゃないんだよ」っていうことを伝えたくて活動を始めた

子どもたちのために、2年前から活動を始めた嶋田さん。当事者や言語聴覚士が参加し情報交換などを行う団体、「富山言友会」に所属していて、ここで出会ったメンバーと一緒に「吃音がある子どもと保護者のためのあそびの会」を立ち上げた。

「吃音の子どもたちのためにできることは何か」2月の定例会では嶋田さんが中心となって、自分たちや周りの子どもがどんな悩みを抱えているかなど意見を出し合った。

定例会参加者:
保護者も吃音のことを知らない。どんなに(子どもが)言いにくいかがわからない。でも子どものことを思って鍛えなくちゃとか心を強くしなくちゃとか(考えてしまう)

定例会参加者:
友達に吃音のことを話しても、深刻な内容だと話せなかったりした

嶋田唯さん:
吃音のことが知られていない限り、自分も吃音のことを伝えるのは勇気がいる。でもみんなが知っていれば「実は吃音なんだよね」と伝えやすくなる。きょう出た意見を参考にこれから色んな支援につなげていければ

「自分ができることを」子どもたちへメッセージ

2カ月に一度開いている子どものための「あそびの会」では、工作やゲームなどさまざまなイベントを催している。今回はスポーツ。

園児から小学6年生までの10人余りが参加。同じく吃音当事者で、石川県で子どもたちに向けたスポーツ教室を開いている松井佑介さんを講師に招いた。

松井佑介さん:
言いやすい言葉でいいからな。自分の言いやすい言葉で

「苦手な言葉は言い換えても良い」、「自分ができることを見つけてほしい」、そんなメッセージもさりげなく伝えていく。

嶋田唯さん:
吃音がある子は、みんなの前で声を出すことに苦手意識がある子が多いんですけど、こういう運動を通して、自然に声を出す練習にもなるのかなと

嶋田さんは、こうした活動の様子をSNSでも情報発信している。吃音について広く知ってもらい、当事者同士で交流できる場づくりも続けていきたいと考えている。

嶋田唯さん:
私の場合は吃音を治さないと、吃音を乗り越えたって言えないと思っていた。でも吃音の症状が変わらなくても、治らなかったとしても、例えば人に伝えて自分の生きやすい環境を作ったりとか、自分の得意なことを伸ばして自分の好きな道に進んだりとか、そういうところからアプローチして自分の世界を広げていってほしいなと

これからの時期は進学や進級で環境が変わり、心が不安定になることから、吃音の症状が重くなる子どももいる。吃音のある子どもと保護者のための「あそびの会」は、次回は4月に開催する予定だという。

(富山テレビ)

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