生活の足として多くの人に欠かせない自転車。4月には、あるルールが変わるのを知っているだろうか?

そのルールとは「ヘルメット着用の努力義務」。道路交通法が改正され、自転車に乗る際、ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。

これまで対象は13歳未満だったが、4月から全員に
これまで対象は13歳未満だったが、4月から全員に
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これまでは13歳未満が対象だったが、全ての人に範囲を拡大する。その背景には相次ぐ自転車の事故がある。

車や歩行者と衝突…死因の6割は頭のケガ

2022年11月、埼玉県川口市。赤信号で車が止まったその時、車の横を通過しようとした自転車が、突然開いた助手席のドアに衝突。そのまま転倒した。

赤信号で停車 その横を通過しようとした自転車が、助手席のドアに衝突(2022年11月 埼玉・川口市)
赤信号で停車 その横を通過しようとした自転車が、助手席のドアに衝突(2022年11月 埼玉・川口市)

さらに2022年9月、岡山市では車の陰から飛び出してきた子供と、走ってきた自転車が出会い頭に衝突。自転車が子どもの上に重なるように転倒した。

車の陰から飛び出してきた子供と自転車が、出会い頭に衝突(2022年9月 岡山市)
車の陰から飛び出してきた子供と自転車が、出会い頭に衝突(2022年9月 岡山市)
自転車は子どもの上に重なるように転倒
自転車は子どもの上に重なるように転倒

そして中には、自転車に乗っていた人が命を落とす悲惨な事故も。

トラックと自転車が衝突 男性はヘルメットをかぶっていなかった(2022年8月 東京・板橋区)
トラックと自転車が衝突 男性はヘルメットをかぶっていなかった(2022年8月 東京・板橋区)

2022年8月、東京都板橋区でトラックと自転車が衝突。自転車に乗っていた70代の男性が頭などを強く打ち、搬送先の病院で死亡した。当時、男性はヘルメットをかぶっていなかったという。

約6割の死因が「頭のケガ」
約6割の死因が「頭のケガ」

警察庁のデータによると、自転車に乗っていた人の交通事故で、死亡した人の約6割の死因が「頭のケガ」だったのだ。

こうした被害を減らすため、4月から始まるヘルメット着用の努力義務化。施行前の今、ヘルメットを着用している人はどれくらいいるのか。平日の1時間ウォッチしてみると、通過した372台のうち、ヘルメットを着用していた人はわずか2人だけだった。

平日1時間ウォッチングした結果
平日1時間ウォッチングした結果

罰則などはないが、街の皆さんはヘルメット着用についてどう考えているのか?

「罰金ないなら」「荷物になる」意見は様々

30代男性:
努力義務なので、正直そんなに自分的にはつけることもないかなって。でも、事故とかも怖いので、子供とかはつけたほうがいいのかな。

30代女性:
朝とか忙しいし、バタバタして出ると(ヘルメットを)忘れたと思ったら、特に罰金とかなければ、そのまま出ちゃうんじゃないかな。

“努力義務”だから、かぶらないという人もいればこんな意見も。

60代女性:
ヘルメット持ってお買い物とか、置いておいて大丈夫なのかなって心配もあるので。

19歳女性:
髪の毛とか崩れちゃうし、邪魔。高校がかぶらなきゃいけなかったんですけど、それが嫌で電車通学したくらいなので。

70代女性:
荷物になるというのと、格好悪い。私らおばあちゃんが、ヘルメットして自転車に乗ってるの絵にならないよね。

「努力義務だから」「罰金などないなら」「髪が崩れる」「荷物になる」などの意見があった
「努力義務だから」「罰金などないなら」「髪が崩れる」「荷物になる」などの意見があった

様々な理由で、ヘルメットをかぶるのに抵抗がある人が多いようだ。中には…。

30代女性:
子供は乗ってて倒れたりとかで、ヘルメット着けててよかったと思うことはあるんですけど。自分が倒れて危険だなと思うことはあまりない。

「自分は危険をあまり感じない」という意見が。しかし、街ではこんなヒヤッとする瞬間も見られる。

街ではヒヤッとする場面も…車のドライバーが急ブレーキ
街ではヒヤッとする場面も…車のドライバーが急ブレーキ

取材班:
あっ!今、自転車と車がぶつかりそうになりました。

交差点を進もうとした自転車と車が衝突寸前。慌てて車のドライバーが急ブレーキを踏んだ。

自分では大丈夫と思っても、いつ事故に巻き込まれるかわからない。では事故に遭った際、ヘルメットの着用アリなしで、どれだけ変わってくるのか?

“ヘルメットなし”だと衝撃4倍 死亡率も倍に

これは、人形を乗せた自転車と車の衝突実験の映像。

人形を乗せた自転車と車の衝突実験
人形を乗せた自転車と車の衝突実験

自転車は車にぶつかった後、地面に勢いよく頭をたたきつけられているのが分かる。

地面に勢いよく落下
地面に勢いよく落下

また、縁石に頭をぶつける状況を想定した転倒実験や、一定の高さからの落下実験を行ったところ、頭部への衝撃はヘルメットありの約4倍という結果になった(※実験状況下によるもの)。

一定の高さからの落下実験 頭部への衝撃は、ヘルメットありの約4倍という結果に
一定の高さからの落下実験 頭部への衝撃は、ヘルメットありの約4倍という結果に

さらに、ヘルメットをかぶっていないと、事故で死亡する確率は約2.2倍になるという警察庁のデータもある(ヘルメットありの致死率は0.26%、ヘルメットなしは0.59%)。

ヘルメットがないことで高まる命の危険。既にヘルメットをかぶっている人も、きっかけは自身の危険な経験だったと話す。

「前に転んだことがあった」
「前に転んだことがあった」

ヘルメット着用していた70代男性:
前に転んだことがあったし。ヘルメット着けてなくて、頭打ってこぶができて。

「事故で脳挫傷になってしまった。それからするようにしている」
「事故で脳挫傷になってしまった。それからするようにしている」

ヘルメット着用していた60代女性:
前に事故をして脳挫傷になってしまったので、それからするようにしています。

6年前に自転車同士の事故で入院。それ以来、かかさずヘルメットをかぶるようになったという。

「していた方が頭を守ってくれると思います」
「していた方が頭を守ってくれると思います」

ヘルメット着用していた60代女性:
自分が気を付けていても、車とか他の自転車とぶつかる可能性があるので、していた方が頭を守ってくれると思います。

サイズとマークが重要 着用のポイントは

4月の努力義務化に向けて、都内の自転車専門店ではある変化も。

「着用努力義務化になるということで、ヘルメットをご覧になる方が非常に増えている」
「着用努力義務化になるということで、ヘルメットをご覧になる方が非常に増えている」

サイクルベースあさひ 五反田店 弓削任世店長:
こちらがヘルメットコーナーです。昨年の1月同月比で比べますと、(会社として)大体2倍ほどの販売実績がございます。着用努力義務化になるということで、ヘルメットをご覧になる方が非常に増えている。

取材した日にも、ヘルメット目当てのお客さんが来店していた。

「自転車に乗る機会が増えた。色んな人とすれ違うから」
「自転車に乗る機会が増えた。色んな人とすれ違うから」

ヘルメット購入を検討(30代女性):
自転車に乗る機会が増えたので、色んな人が自転車に乗っているのとすれ違うじゃないですか。かぶった方がいいと思います。危ないなと思っているので。

では、安全なヘルメットはどう選べばいいのか?

サイクルベースあさひ 五反田店 弓削任世店長:
まず1つはサイズ感ですね。ご自身の頭のサイズに合ったものをお選びいただきたいです。

(1)自分の頭に合ったサイズのヘルメットを選ぼう
(1)自分の頭に合ったサイズのヘルメットを選ぼう

大きすぎるとヘルメットが外れてしまう恐れがあり、小さすぎても痛みを伴う可能性がある。

また、ヘルメットの選び方で意外と知られていないのが“マーク”だ。

(2)ヘルメットのマークに注目
(2)ヘルメットのマークに注目

安全基準を満たしたヘルメットには「SGマーク」や「CEマーク」などが貼られているが、中でもSGマークの付いているヘルメットは事故の際、購入後3年以内のもので、人的損害が製品の欠陥によるものと判断された場合に治療費などが賠償される。

治療費などが賠償される
治療費などが賠償される

そして、大事なのが正しくヘルメットを着用すること。ポイントを教えてもらった。

(1)後ろのアジャスターを締めてサイズを調整する。(※ヘルメットによって異なる)

ヘルメットを正しく着用するために
ヘルメットを正しく着用するために

サイクルベースあさひ 五反田店 弓削任世店長:
ズレがないような位置まで締め付けていきます。

ポイント(2)角度の調整 横のラインは前後に下がり過ぎないように
ポイント(2)角度の調整 横のラインは前後に下がり過ぎないように

次に(2)角度の調整。横のラインは前後に下がり過ぎないよう、地面と平行にする。そして、正面は眉毛と平行に合わせる。

最後は(3)あごひもの確認だ。

ポイント(3)あごひもの確認
ポイント(3)あごひもの確認

サイクルベースあさひ 五反田店 弓削任世店長:
耳たぶから、ちょうど下になるぐらいの位置に調整をしていただいて。あごひもに指が1本から2本くらい入るぐらいの長さに調整します。これでぐらつきがなければ大丈夫です。

「これでぐらつきがなければ大丈夫です」
「これでぐらつきがなければ大丈夫です」

弓削店長は「ヘルメットをかぶることによって、命が守られるケースがあると思いますので、ご自身に合った1つというのを選んでいただければ」と話す。

4月に迫った努力義務化。自分を守るためにも、ヘルメットの着用を検討してほしい。

(「イット!」2月28日放送)