岩手・盛岡市の老舗百貨店「川徳」は、2023年に経営体制を刷新し、利用客の増加へリニューアルを図る。決断に至った背景や再建に向けた思いを荒道泰之社長に聞いた。

老舗百貨店「川徳」が経営再建へ

盛岡市菜園に本店を構え、岩手を代表する百貨店として親しまれてきた川徳は2022年末、東京の中小企業支援ファンド「ルネッサンスキャピタル」の支援により経営体制を刷新する事業再生計画を発表した。

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2022年に就任した川徳の荒道泰之社長は、「実は2年くらい前から、こういう(経営再建の)話はあった。コロナで20%近く売り上げが減少し、非常に厳しい状況になってきた」と話す。

最盛期には年商約400億円を誇った川徳だが、近年は百貨店離れもあり売り上げが減少。そこに新型コロナウイルスが追い打ちとなった。

金融畑出身の荒道社長は、厳しい経営状況をメーンバンクの岩手銀行に相談し、今回の計画が浮上したと言う。

川徳・荒道泰之社長:
まず、カワトクブランドは守らなければいけない。それを守るためにどういった形で再生スキームを作っていくのか、一生懸命考えていただいた

今回の計画では、県内の金融機関が持つ債権を「ルネッサンスキャピタル」へ売却。ファンドの主導で経営再建を進める。

川徳・荒道泰之社長:
金融機関も債権カットという大きな経営判断が必要になるため、納得してもらえるような再生計画を作るのは大変だった。百貨店がなくなった地域は疲弊する。それを金融機関もよく理解していて、今回の再生計画になったと思う

「盛岡で一番斬新なデパートだった」

川徳は1866年、盛岡市鉈屋町で川村徳松が木綿商として創業。1875年に肴町に進出してからは、呉服や洋品雑貨など業務を拡大した。

1956年には、のちに旧中三盛岡店となった鉄筋3階建ての店舗が完成。屋上遊園地には盛岡を一望できる観覧車も設置され、人々の憩いの場として親しまれた。

その後、1980年に本店を菜園に全面移転し、現在の「パルクアベニュー・カワトク」が誕生した。

利用客からは、「盛岡で一番斬新なデパートだった。今でもそうだし、しっかり存在感を高めていただきたい」「やっぱりカワトクに来る人は多い。盛岡に1つくらいないと、こういうデパートがね」「欲しい物がある。楽しい。月に1回は来る」などの声が聞かれた。

カワトクを“地域発信の拠点”に

ファンド主導で行われる今回の経営再建。4月には事業を継承する新会社が発足するが、会社名は「川徳」そのままで、荒道社長も引き続きトップとしてかじ取りを担う。

川徳・荒道泰之社長:
地元の百貨店であり続けたいと思う。ただ、色々な知見を持っている人にご協力いただかないといけない。今後は、ルネッサンスから紹介いただいた知見を持っている人にも役員になってもらおうと思っていて、いずれそういった形で支援をいただく

入居テナントのリニューアルの計画もすでにスタートしている。県内企業からは、知的障がいがある作家のアート作品を商品化する「ヘラルボニー」が引き続き入店する予定だ。

また、夫婦での買い物を楽しんでもらうため、ファッションフロアではメンズとレディースのブランドを1カ所に集約した新たな売り場も設けるなど、魅力向上に取り組む。

川徳・荒道泰之社長:
老若男女、いつでも来ていただける機会創出というか、それがこれからのカワトクには必要なのかなと。常に日常使いという形でカワトクを使ってもらえるようにしていきたい

まもなくスタートする新生「川徳」。荒道社長は「経営が再び軌道に乗ったあとは、地域の百貨店として地元資本に戻したい」とし、その目標期間を「3年から5年」と掲げる。

川徳・荒道泰之社長:
カワトクは、やはり地域の商材とか、地域の産品を全国に発信する、できれば世界にも発信するハブ(拠点)になるのが我々の使命だと思う

(岩手めんこいテレビ)

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