土砂災害特別警戒区域が全国最多の約1万カ所もある広島県。近年の度重なる豪雨によって甚大な被害が発生した。50年後、警戒区域に住む人が”ほぼいない状態”を目指して県と市町は取り組みを本格化させている。

土地所有者を対象に説明会

広島市は土砂災害特別警戒区域いわゆる「レッドゾーン」に住む人を減らすための説明会を市内8カ所で実施した。レッドゾーン内の土地所有者などが参加し、具体的な内容やスケジュールについて、市の職員からの説明に真剣な表情で耳を傾けた。

初開催となった1月10日、広島市南区で行われた説明会
初開催となった1月10日、広島市南区で行われた説明会
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レッドゾーン内の土地所有者:
わたしたちの財産はどう補償してもらえるのか

広島市の担当者:
補償についての考えはない状況です

危険な場所から安全な地域へ誘導

近年の度重なる豪雨により、レッドゾーンを含む住宅団地などで甚大な被害が発生している広島県。多くの人命と財産が失われた。

2014年8月豪雨によって広島市で起きた土砂災害
2014年8月豪雨によって広島市で起きた土砂災害

そこで県と広島市など13の市町はレッドゾーンに住む人を安全な地域へ誘導する「逆線引き」という取り組みを行うことにした。一般的に、道路や公園などの公共施設が整備され人が建物を建てて住む区域は「市街化区域」と呼ばれ、農地や緑地の保全が優先される区域は「市街化調整区域」と呼ばれる。

今回行われる「逆線引き」とは、レッドゾーン内にある市街化区域の土地を市街化調整区域に組み込むこと。市街化調整区域に編入された土地は、原則として、新たに建物が建てにくくなる。

広島市 都市整備局・岡村泰博 都市計画課長:
まずは利用されていない土地から先行的に取り組んでいこうとしています。広島市では239カ所を今回の対象としていますが、ほかの市町に比べて広島市が抱えている箇所数が多くて時間を要してしまったというのが現状です

50年後、レッドゾーンの居住者ゼロへ

広島県は土砂災害特別警戒区域が全国で最も多く、約1万カ所が今回の措置の対象になる。先行的に市街化調整区域に編入される場所へテレビ新広島の鈴木崇義記者が向かった。

鈴木記者:
広島市安佐南区にやってきました。高台から見ると、住宅団地の開発が進んできたのがよくわかります。ちょうどこの高台から下の住宅地まで草木が生い茂る斜面が、先行的に実施されるということです

「市街化調整区域」へ編入される場所を指す鈴木記者
「市街化調整区域」へ編入される場所を指す鈴木記者

対象箇所が多いことから、まずは市街化区域の周辺で建物のない未利用地から実施される。県は今後20年間で「逆線引き」を完了させ、50年後にはレッドゾーンの居住者がほぼゼロになる状態を目指している。こうした措置に、広島市南区で自宅の一部がレッドゾーンになっている住民は…

自宅の一部がレッドゾーンの住民:
いま初めて聞いたので実感はないが、土砂で被害を被ることは、周りのみんなに迷惑がかかるし本人もつらいことだからね。理解しないといけないんでしょうね

広島市は「現在、住宅がある土地はすぐに編入措置を取ることはない」としながらも、住民に取り組みの主旨を理解してもらい“災害に強い都市構造の形成”を一歩一歩進めていきたいとしている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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