新型コロナの感染拡大が続く中、医療現場を取材すると、一部の抗ウイルス薬が「処方したくてもできない」という課題が見えてきた。

患者が急増…医療ひっ迫「ただごとではない」

近森病院 感染症内科部長・石田正之医師:
スタッフが十分ではないところは、処方のハードルが上がって当然

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近森病院・筒井由佳薬剤部長:
相当難しい気がする。医師が1人でやるとなると

高知市にある近森病院の医師と薬剤部長が、「スタッフが少ない医療機関では処方が難しい」と指摘する抗ウイルス薬。それが、2022年に国内で使用が始まった「パキロビッド」と「ゾコーバ」だ。

パキロビッドは、主に重症化リスクがある人や高齢者に処方される。一方で、国産のゾコーバは、重症化リスクに関わらず、12歳以上が対象となっている。パキロビッドは重症化予防効果が高いとされ、ゾコーバは症状を早めに改善できるとされている。

今回、高知市のクリニックの訪問診療に同行取材したところ、この2つの薬の処方をためらう実態が見えてきた。

高知市の朝倉医療クリニックの院長・武市牧子医師。看護師に「防護服1セットちょうだい」と指示し、取材班に「きょうは、とりあえず付いてきてちょうだい」と声をかける。取材班も防護服を着用し、コロナ患者の訪問診療に同行した。

向かった先は、クリニックに隣接する入所型の高齢者施設だった。診察した80代の女性患者には発熱、せき、けん怠感などの症状があった。

朝倉医療クリニック院長・武市牧子医師:
足の裏をしっかり消毒しておかないと、(ウイルスを)ばらまくことになる

午前中に看護師1人と、高知市と土佐市の計5カ所の高齢者施設を回らなければならない。

朝倉医療クリニック院長・武市牧子医師:
(診る患者が)急増している。忙しさからみても、「ただ事ではない」と感じ取ってもらえれば

担当する施設で次々と入所者が発熱し、臨時の訪問診療の要請が急増しているという。

重症化リスク下げる効果も…処方のハードル高く

大きくなる診療の負担が、ある抗ウイルス薬の処方を難しくしていた。

朝倉医療クリニック院長・武市牧子医師:
パキロビッドは禁忌薬が多い。ゾコーバも30種類以上ある。ジェネリックを含め全部チェックするのは実際、至難の技

武市医師が指摘する抗ウイルス薬の併用禁忌薬。つまり、特定の薬を使っている患者には「飲み合わせ」が悪く、抗ウイルス薬を処方できないということだ。この併用禁忌薬が、パキロビッドとゾコーバはそれぞれ約30種類ある。

「これを全て確認することはできますか?」と、スタッフが少ない複数の医療機関を取材すると、「時間的にもマンパワー的にも難しい」という回答が得られた。

スムーズな処方へ…医療現場の取り組み

禁忌薬が多く、処方のハードルが高いパキロビッドだが、近森病院の医師は、適正に処方すれば医療のひっ迫を軽減できると話す。

近森病院 感染症内科部長・石田正之医師:
パキロビッドは重症化リスクのある患者が対象で、重症化リスク・入院リスクを下げてくれることが分かっているので、対象の患者にしっかり薬を届けることは重要

近森病院では、パキロビッドの処方にあたり、禁忌薬の確認を医師と薬剤部などが連携して行っていた。

近森病院 感染症内科部長・石田正之医師:
薬剤部で処方薬を全部チェックして、その情報が我々に返ってくる

禁忌薬に問題がなければ、医師が患者に副作用などのリスクを説明し、同意書を得る。そして、薬剤部が国に報告するためのチェックシートを記入する。

この作業負担について近森病院の石田医師らは、次のように話す。

近森病院 感染症内科部長・石田正之医師:
複数の職種がやっているから、それぞれの負担が3分の1、4分の1になる。スタッフが十分ではないところでは、だれか1人がやらなければいけないとか、そういう負担になり、処方のハードルが上がって当然

近森病院・筒井由佳薬剤部長:
全体的にいろんな手順があるので大変。医者が1人でやるには(患者1人に)1時間くらいかかる

クリニックなど小さな医療機関では、どうすれば禁忌薬が多い抗ウイルス薬をスムーズに処方できるのか。近森病院では、関係機関とある取り組みを進めている。

まず、高知市内の高齢者施設で入所者の禁忌薬などを事前に確認し、その情報を医療機関や医師会、薬剤師会などと共有する。そして、入所者のコロナ感染が判明したら、すぐに処方できるよう、体制の構築を進めている。

適切な薬を効率よく患者に処方するために、医療現場の模索が続いている。

(高知さんさんテレビ)