現役プロ野球選手も驚くほど、昭和の野球界では今では考えられない常識がたくさんあった。
1月15日放送の「ジャンクSPORTS」(フジテレビ系)では、契約更改やヤジ合戦など、今と昔のプロ野球界を比較した。
契約更改でブチギレの理由は…?
年末の風物詩、プロ野球の契約更改。
各選手はその年の活躍に合わせて、翌年の年俸額が球団から提示され、その金額に納得すれば契約が成立する。そして契約後にその結果について記者会見を行うのが通例だ。
最近では事前の交渉でほぼ合意に至っていることが多く、契約はスムーズに進む。そのため、記者会見も和やかなムードで行われる。

しかし昔は、提示された金額に納得がいかず、選手が感情むき出しで怒りをあらわにして、険悪な会見になることもあった。
中でも激しくブチギレていた選手が、1991年に5年連続で2桁勝利をあげ、エースとして活躍を残した西崎幸広さん。
会見に姿を見せた西崎さんは、セカンドバッグをたたきつけ、「5年連続2桁勝利でやってきたのが全然加算されない。1200万円下がりました。近くにいくまでサインしません」と不満をこぼす。
さらに同日、西崎さん以上にブチギレていた選手が、この年18セーブで最優秀救援投手賞を受賞した武田一浩さん。
会見で「何もありません。もう辞めます、リリーフ。戦うよ、もう今年は本当に。もう一生リリーフやらない」と静かに怒りをあらわにしてため息をはいた。
怒りの理由を本人に聞くと、まず当時の映像に「怒っているね」と苦笑。そして、球団とした約束が違ったのが怒りの理由だと教えてくれた。
「前年にリリーフになって、昔はあまりリリーフが評価されなかった。前年の契約更改であまり上がらなかったので、球団代表と話して『来年もリリーフやったらちゃんと上げてやる』と。当時は5000万が一流プレーヤーで5000万くらいまで行くかなと話していて。次の年にセーブ王を獲ったのに契約更改で3100万から4200万って言われた。
前年に約束していたのに5000万まで上げてくれなかった。話にならないと2分ほどで席を立とうとしたら、『4700万にするから』と言われたけど、それは違うんじゃないかって激高した。2、3分で500万も上がるんだったら、最初からその金額を言って欲しい。曲がったことが嫌いだったので。今のプロ野球と違って昔はお金に渋かった」
こう当時を振り返り、「今スタジオの選手の給料が上がっているのは、俺たちのおかげでもある」と語った。
現役選手たちの契約更改交渉術
今は“和やか”と言いつつも、契約更改時にイラッとすることもあるという。

去年の日本シリーズでMVPに輝いたオリックスの杉本裕太郎選手は「イラッとすることがあっても裏でキレています」と話し、同じくオリックスで二刀流でも活躍する山崎(※崎はたつさき)福也選手は「今の時代にキレたら大炎上」と苦笑した。

昭和のプロ野球界をよく知る野球解説者・里崎智也さんは「5年連続2桁勝利で1200万ダウンはヤバい」と怒った理由にも納得し、「今だったら1億は余裕」と断言する。
今の選手たちも契約更改時の交渉はそれぞれが工夫しているようで、杉本選手は「僕はちょっと甘えた感じで『上げてくださいよ~』とおねだりしている」と話す。

昨季タイトル3冠の大活躍を見せた阪神・青柳晃洋選手は「僕は金額を言われたときにひたすら無になる」と明かす。
番組MC・浜田雅功さんが「例えば2億だったら?」と問いかけると、無の表情に。2億5000万円でもまだ「無」で、3億になるとはにかんだ。
昨季自身最多の12勝を果たした巨人・戸郷翔征選手は、契約更改時の交渉術について里崎さんのYouTubeチャンネルを参考にしているという。
里崎さんは「僕は自分の想定より低く年俸が提示されたことは1回もない」と強調。
プロ野球歴15年の大ベテランが、年俸アップのテクニックについて解説した。
“悪魔のささやき”に要注意
現役の選手に対して、まずは球団からの“悪魔のささやき”のような質問に注意してほしいと指摘する。

「最初の鉄則は球団の『いくら欲しいんだ?』という“悪魔のささやき”の質問で、金額を言っちゃ絶対ダメ!正直に言うと、球団の設定より高く言ったら鼻で笑われるだけなんです。
『1億欲しい』と言ったときに球団が8000万しか用意してなかったら、無理だと言われる。低く言ったら『じゃあ、それで』となる。球団が1億出そうと思っていても、9000万と言った瞬間に『それでいこう』となる。
ドンピシャを言わない限り、得することは一切ない。僕のルールではそう聞かれたときにいつも『100億ぐらいで』と言っていました。そしたら笑って終わるんです。で、『いくらくれるんですか?』と投げかけて、全部言われた後に自分の武器(アピール)をちょっとずつ出す」
戸郷選手はこれを実践したものの「言われた金額が僕の思っていたくらいだったので、笑顔になって交渉できなかった」と明かした。
さらに里崎さんは、高額な年俸でも油断は禁物で引退後を意識した貯金とお金の使い方は、ぜひメモして欲しいと現役選手に熱く語りかける。

「今は大成功しているので引退後のことは1ミリも考えていないと思う」と里崎さん。
しかし引退後の人生の方が圧倒的に長く、今から特に“お金”に関しては勉強して欲しいと主張。
「年俸に対して4:4:2の法則!4割は税金、4割は貯蓄、2割は使っていい。2割でも結構高いから。こうしておくと引退後はしっかり貯蓄ができて、ハッピーなエンジョイ引退ライフを送ることができます」
最後に里崎さんは現役選手たちと、年俸の法則を復唱して“セミナー”を締めた。
最近は“ヤジ”が聞こえるように…
昭和の野球界ではヤジ合戦も野球観戦の目玉の一つだった。
ここ数年はコロナ禍もあり“ヤジ”や声を出しての応援は控えられていたが、最近は「ヤジが増えてきた」と現役選手たちは口にする。
青柳選手は「コロナの影響でお酒が販売できなかったんですけど、最近お酒が出てきてからヤジが増え始めました」と話し、2年連続20本塁打を果たした阪神・佐藤輝明選手も「お酒解禁してから急にヤジが聞こえるようになった」とうなずく。

ヤジが鮮明に聞こえるという佐藤選手は「今、応援歌がないので、ヤジはバッチリ聞こえます。例えば三振した後に守備につくと『俺の方が打てるぞー!』と。バット渡すから行ってくれと思う」と苦笑い。

昨季新人王の巨人・大勢選手は「阪神ファンだったので巨人にドラフト指名されてからも甲子園に応援に行っていたら、青柳さんが投げている試合でヤジが…。僕は言ってないですけど言われているのを見ていて、プロ野球選手になって言われるようになったら『こんな気持ちだったんだな』と思った」と話す。
そのときのヤジについて浜田さんが聞くと「そんなこと言っていいんですか?」となぜか遠慮する大勢選手。すると青柳選手は「僕は帽子を取るなとか言われますから」と自ら“ヤジ”の内容に触れた。
一方、ファンからではなく相手ベンチからのヤジが印象に残っているという、リーグ連覇の立役者のヤクルト・木澤尚文選手。
「僕は投げるときに声が出ちゃうんですけど、ジャイアンツベンチから『うるせーぞ、お前!』と聞こえた」
この“ヤジ”の瞬間、ベンチにいて「誰が言っているのか知っています」と大勢選手はニヤリ。なぜか「OAできるかわからないですけど」と前置きして「元木さん」とコーチの名前を出す。
木澤選手も元木大介さんの声だと思っていたようで、「試合中もサードコーチャーに入っていることが多くて、セット入って見るじゃないですか。元木さんがずっとこっち見てニヤニヤしてる。僕が投げようとするとプレッシャーをかけてくる」と不満を口にする。
そこで元木さんに“ヤジ”の真相を聞いてみると「俺じゃないでしょ。言ったとしたら木澤投手も『わー!』って言うから、それに対して熱くなっちゃった可能性もある」と弁明し、謝罪。
すると矛先は大勢選手に移り「『OAできるかわからない』って言い方がおかしい、俺を悪くしようとした」と苦言を呈す。

さらに戸郷選手の練習態度にも不満があるようで「練習で一番前を走って、若きエースとして“お前ら後ろついてこい!”と見本の投手になってほしい。そのへんがもうちょっとほしい」とこぼす。
戸郷選手自身は「若手が前に行きたがっているから譲っている」というスタンスのようで、それをスタッフが告げると「冗談じゃない、お前も若いんだ」と一蹴した。
そのVTRを見た戸郷選手はスタジオで「元木さんがスタジオにいないので内心ガッツポーズしています。出演が決まったとき『来るんですか?』と聞いたら予定が合わなくて行けないと言われてよし!ってなった」とホッとした表情を見せた。
(『ジャンクSPORTS』毎週日曜日夜7:00~8:00放送)