1月9日、大阪・淀川の河口付近で目撃された体長約8メートルの野生のクジラ。
発見から1日経った10日朝、クジラの様子を取材しました。

マッコウクジラ 10日朝も淀川にとどまる

3連休最終日の9日、大阪市にある「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」にもほど近い、淀川の河口近くの公園には、突然現れたクジラを見に来た多くの人の姿が。スマホで写真を撮ったり、心配そうに見つめていました。

突然現れたクジラにSNSでは、クジラに「淀ちゃん」と名前をつけて応援する声もあがりました。

国立科学博物館 動物研究部・研究主幹の田島木綿子さんによると、「このクジラはマッコウクジラとみられ、大阪湾に普通はマッコウクジラのような種類は来ない」といいます。
社交性があり、普段は群れで行動することが多いというマッコウクジラ。しかし、見つかった場所が浅瀬だからか、クジラはその場に止まり、全く泳ぎません。

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めざまし8が、発見から1日経った10日朝にクジラがいた場所に行ってみると、クジラは前日にいた場所からほとんど動いていませんでした。5分間間隔くらいで潮を吹くような様子も見られましたが、ほとんど移動しておらず、衰弱しているようにも見えます。

専門家「弱っていて流された可能性」

このクジラは、なぜ淀川河口付近まで入ってきてしまったのでしょうか。
北海道大学大学院水産科学研究院の松石隆教授によると、「海のしけによる体力の消耗などで、呼吸を楽にするため湾内に逃げ込んだ可能性も否定できない」といいます。

このクジラについて、動物研究家のパンク町田氏に話を聞きました。

淀川河口付近に入ってきた理由についてパンク町田氏は「弱っていたところ、流れに身を任せているうちに流されたのではないか。親に見捨てられてしまった可能性もある」と指摘します。
さらに、10日朝のクジラの状況を見てもらったところ、「もうこれは、人間で言えば病の床についているというような状態だと思う」といいます。

5分間隔で潮を吹いている様子もありましたが、これはどういう状況なのでしょうか。

アジア動物医療研究センター パンク町田 センター長:
マッコウクジラであれば、長ければ20分くらいは息を止めていられる潜水できる動物なのですが、具合が悪いと呼吸の回数が増えたり、あるいはもっと悪くなれば減ってきたりと、呼吸の回数が変化してくるので、これは1つの体調を表した呼吸のリズムだと思います。

「弱っていたところ、流されてしまったのではないか」という指摘がありましたが、弱る原因は何なのでしょうか。

アジア動物医療研究センター パンク町田 センター長:
おそらく、まだこのクジラは若いクジラです。ですから、完全な大人のようにうまく獲物を捕らえることができなくて体力が衰えてしまったなど、いろいろな仮説は立てられますけど、明確なことは分からないです。

この汽水域(川が海に注ぎ込むなどし、海水と淡水が混ざり合う水域のこと)や淡水にいることは、マッコウクジラにとってどのような影響があるのでしょうか。

アジア動物医療研究センター パンク町田 センター長:
慣れればある程度、大丈夫は大丈夫なのですが、浮力が違いますし体が大きいですから、影響を受けやすいと思います。

「淀ちゃんがんばれ!」そっと見守ることが重要

保護するは難しいのでしょうか。

アジア動物医療研究センター パンク町田 センター長:
保護といってもこの大きさの動物を保護するのはなかなか難しいです。そして、この状態の動物を移動するというのは、より悪化させてしまう可能性があるので。
海に戻したとしても、このままでは獲物を捕らえることは不可能ですから、悪化の一途をたどるだけになってしまいます。

また、北海道大学の松石隆教授によると、「若い個体といえども8mもあれば10トン近くある可能性があり、下手に近づくことは危険。クジラは食いだめが出来るので、数日の空腹で死ぬことはない」といい、今はそっとしておくことが重要だということです。

多くの人が見守る「淀ちゃん」。SNSでは「淀ちゃんがんばれ!」「頑張って海に戻ってほしい」という声があがっています。

(めざまし8 1月10日放送)