2023年最初のBSフジLIVE「プライムニュース」には岸田文雄首相が生出演。2023年の大きな政治課題となる防衛増税や原発政策の方針転換など国内問題を中心に、年頭会見で語った「先送りできない問題」に挑戦する覚悟、そして衆議院解散に向けた戦略について伺った。

防衛力強化の財源問題には日本の未来がかかる

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新美有加キャスター:
岸田総理が2023年に臨むことになる主な政治課題について。まず反撃能力の保有など日本の安全保障を抜本的に強化する防衛力強化の財源として、政府は1兆円強を増税で賄う方針を発表した。実施時期については2024年以降の適切な時期、2027年度に向けて段階的に実施すると。FNNの世論調査では、増額について評価するとの回答が45.8%。評価しないが48.3%と拮抗。このための増税については、評価すると答えた方は25.6%にとどまる。この状況をどうご覧に?

岸田文雄首相:
最も強調したいのは、今の厳しい安全保障環境の中で我が国の防衛力を抜本的に強化する必要があり、それに向けて安全保障3文書の改定等の議論を行ってきたこと。世論調査では防衛増税について評価しない声が強いが、一方で別の世論調査では防衛費を国債で賄うことにも7割以上の国民の皆さんが反対している。国債を発行し借金でツケを回すのがいいのか、自分たちの世代で責任の一端を担うことを考えるべきか。日本の未来がかかった話であり、国民みんなで考えるべき課題だと思う。これからも政治の立場から、丁寧に国民の皆さんに説明し、説得していく努力をしなければならない。

反町理キャスター:
先送りしないのならば、2023年度の税制改革大綱でやるべきでは。なぜ2024年度の税制改革大綱以降に先送りしたのか。

岸田文雄首相:
国際的な水準としてGDPの2%程度という議論があった。それを目指す姿勢は大事だが、一度にその水準まで引き上げるのは現実的ではなく、5年かけてという目標を立て議論してきた。結果、2022年末の議論で、税目、税率、方式や1兆円強という規模を税制改正大綱の中に書き込んで閣議決定をするところまで固めた。2024年度以降2027年度までかけて段階的に引き上げるという内容を閣議決定し、つまり時期については具体的な幅を確定している。そこまで具体的に書き込んだことは議論の成果だった。

反町理キャスター:
もう先送りをしないと思ってよいか。増税を喜ぶわけではないが、覚悟として。

岸田文雄首相:
確定した時期の範囲内でどうするか議論し、決定する。

原子力の活用と使用済み核燃料の処分問題は、ともに重要な課題

新美有加キャスター:
続いての「先送りできない課題」、原発問題。昨年末、岸田総理はこれまでの原子力政策を大きく転換する方針を示した。GX(グリーントランスフォーメーション)の基本方針では、原発への依存度について原子力を最大限活用するとし、次世代革新炉の開発増設に取り組むとした。運転期間についても60年超の運転を可能に。震災から12年、事故の処理は終わっていない中、国民の支持についてのお考えは。

岸田文雄首相:
昨年から世界のエネルギー事情は大きく変化し、世界的に構造的なエネルギー不足に陥ってしまっている。エネルギーが武器として使われる時代になってしまった現実があり、ヨーロッパのようにエネルギーによって産業構造が大きく変化する厳しい現実もある。この問題意識を持って議論を行った。一方、福島では原発事故によって今も苦しんでいる多くの方々がおられる。安全が何よりの基礎であるという点、国としてどのような責任を負うかという点をしっかり説明しながら、GX会議において方向性を示していただいた。パブリックコメントにもかけているが、これらの手続きを踏み政府としての方針を閣議決定したい。

新美有加キャスター(左)、反町理キャスター(中)、岸田文雄首相
新美有加キャスター(左)、反町理キャスター(中)、岸田文雄首相

反町理キャスター:
使用済み核燃料の最終処分場の目途は立っていない。どうするのか。

岸田文雄首相:
これが大きな懸念であることは十分認識している。12月23日には最終処分についての閣僚会議を、出席閣僚を拡充した上で5年ぶりに開催し方針を確認した。一方、このままでいけば原子力の人材がいなくなり、日本において技術・ノウハウがなくなってしまう。政府として、これらはともに重要な課題として進めていくべきであると考えている。原子力、エネルギーをめぐる問題は国内だけで完結する話ではなく、世界の中で日本がこれからどのように生きていくかという点も考え、未来を見通さなければならない。そのために国民の理解と安全は大前提。議論を丁寧に進めていくことが大事。

G7後か、6月「骨太」後か 次期衆院選は「適切な時期に」

反町理キャスター:
原発の問題は衆院選の大きな争点になると思ってよいか。

岸田文雄首相:
先送りできない課題は他にもたくさんある。防衛力と財源、原子力・エネルギー、そして少子化対策や経済。しっかりと議論しながら、適切な時期に選挙を行っていく。国民の皆さんの声を聞き、政治として責任を持って考えていかなければならない。

反町理キャスター:
2023年の日程を見ると、G7のあとの6月に「骨太の方針」が示される。ここで子育て支援に関してのグランドデザインも示されるなら、それが環境を整える一助になると感じているように聞こえるが。

岸田文雄首相:
環境とは?

反町理キャスター:
衆院選の環境ですよ。当たり前じゃないですか(笑)。

岸田文雄首相:
いやいや(笑)。先送りできない課題はたくさんある。世界が新しい経済モデルをつくるために悪戦苦闘しているが、日本も気候変動などさまざまな課題を成長のエンジンに切り替えることで持続可能な経済をつくろうとしている。その維持のための分配のポイントになるのが賃上げと投資。これらも大きな課題として取り上げ、政策をしっかりと訴える。その上で、衆院選については適切な時期を時の総理大臣が判断するもの。

「核共有」は法的に難しく、歴史的にも考えるべきではない

岸田文雄 首相
岸田文雄 首相

反町理キャスター:
岸田政権の「運び」が下手だという話をよく聞く。例えば国葬でも、ちょっと野党に根回ししておけば、あんなにもめなかっただろうとか。防衛3文書にしても、事前の関係閣僚への、また自民党内や公明党への根回しがあれば。高市経済安保相は番組出演時に「3日前に見せられた」と発言していた。これについて反省するところは? 

岸田文雄首相:
ご指摘は謙虚に受け止めなければならない。しかし、ではどうしたらよかったのかということについてもいろんな議論がある。ぜひ今後の参考にしたい。

新美有加キャスター:
視聴者の方からのメール。「防衛力増強は喫緊の課題とおっしゃっているが、アメリカとの核共有を検討する考えはあるか。韓国の尹大統領はアメリカとの核共有を検討する意向。限られた予算の中で効果的な抑止力を保有するには、核武装は避けて通れない問題だと思う」。

岸田文雄首相:
私は核共有を考えるつもりはない。核は安全保障における大きな存在であるとは思うが、世界各国がそれぞれの考え方に基づいて付き合いを考えていくもの。日本は唯一の戦争被爆国として、非核三原則、あるいは原子力基本法をはじめとする法体系との関係において、核共有を考えることは法的に難しいと思う。私は歴史的にも考えるべきではないと思っている。どんな国でも一国のみで自らの安全保障を守ることができないのは現代の常識。自らの防衛力をしっかりと充実させることと併せ、国際社会と協力していくこと。この組み合わせの中で国民の命と暮らしを守る。その中で核共有は考えない。これが私の考え方。

(BSフジLIVE「プライムニュース」1月4日放送)