年の瀬を迎え、長期休暇で実家に帰省する人もいることだろう。そうした中、気をつけなければいけないのが、帰省先での子どもの事故だ。

小さな子どもにとって、実家などは普段と環境が違うため、誤って薬を飲んでしまったり、電気ポットが倒れてやけどしてしまったりと、危険な事故が起こり得る可能性があるのだ。

イメージ(画像提供:消費者庁)
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消費者庁には帰省中に発生した子どもの事故の情報が医療機関から寄せられており、帰省先での事故の注意を定期的に呼びかけている。

その1つが、子どもの誤飲の事故だ。例えば、このような報告が寄せられている。

「実家に里帰りしていたところ、子どものろれつが回らなくなった。近くに祖父の薬が散らばっており、薬が2錠減っていた。救急搬送され、薬物中毒で2日間入院。(2歳)」

「親の実家へ帰省中、子どもが口をむしゃむしゃしていると思ったら、たばこを食べていた。つかまり立ちをして、棚の上にあった祖父のたばこを床に落とした様子で、その後5回おう吐した。(0歳)」

また、薬やたばこの他、洗剤、ボタン電池などの誤飲の事故も発生している。

対策として、「子どもの目に触れない場所や手の届かない場所に保管する」「薬を服用後、使用後はそのまま放置せず、速やかに元の安全な場所に片付ける」「子どもの興味をひかないよう、出し入れする行為や服用、使用する行為をできるだけ子どもに見せないようにする」とのことだ。

それらの対策が難しい場合は、「その危険性を家族で認識・共有しておき、子どもの行動に気を配り、目を離さないようにする」ことが大事だという。

※子どもの事故防止ハンドブック 子どもの誤飲(画像提供:消費者庁)
※子どもの事故防止ハンドブック 子どもの誤飲(画像提供:消費者庁)

帰省先では、誤飲以外に、やけどなどの事故も起きている。

「親の実家にて、子どもが床に置いてあった炊飯器の蒸気に触れ、右手にやけどを負った。近くには大人が何人もいたが、目を離していた。(1歳)」

他にも、やかんや電気ポットによるやけどなどの事故も発生。消費者庁によると、2歳以下の乳幼児は、入院を要するやけど、命に危険が及ぶ可能性のある重いやけどになることがあり、特に注意が必要だという。炊飯器、やかん、電気ポットなど、子どもの行動範囲に置かず、子どもを近づけないよう注意しなければいけないのだ。

※子どもの事故防止ハンドブック 子どものやけど(画像提供:消費者庁)
※子どもの事故防止ハンドブック 子どものやけど(画像提供:消費者庁)

年末年始のこの時期、小さな子どもを連れて帰省する側も、迎える側も気をつけていただきたい。では、この他にどんなことを気をつけなればいけないのか?また、どんな対策をしておけばよいのか?

消費者庁消費者安全課の担当者に詳しく話を聞いた。

ブラインドの紐などによる窒息にも注意

――帰省を迎える側が、何よりも気をつけなければいけないのはどんなこと?

子どもにとってどんなものが危険か認識することが最も大切です。誤飲、窒息、やけど、転落、溺れなど様々な事故が起きています。子どもは思わぬ行動をするので、見守りだけに頼らず、危険なものがないかよく点検して、子どもたちが帰省する前にできるだけ準備するように心掛けてください。

また、かつて子育てしていた頃の知識が、今も正しいとは限りませんので、互いの情報共有をして、知識をアップデートすることも大切です。


――「誤飲」や「やけど」以外に気をつけなければいけないことを教えて

窒息にも注意が必要です。3歳児の口の大きさは約4cm(トイレットペーパーの芯ほどのサイズ)で、これより小さいものは口に入ってしまいます。おもちゃなどの小さな部品や食べ物でも死亡事故があります。

1歳くらいまでは特に、寝かせる場所への配慮も大切です。普段はベビーベッドを利用している方でも、帰省時にベビーベッドがないからと大人用ベッドやソファに寝かせてしまうと、転落して頭などにけがを負うことも考えられます。また、やわらかいマットや重い掛け布団で窒息するおそれもあります。古いベビーベッドがあっても、リコール対象品であったり、劣化や破損で危険な状態になっているかもしれませんので、よく確認してください。

動き回る年齢の子どもは、窓やベランダからの転落にも注意が必要です。窓や手すりの近くに踏み台になるものがあれば片づける、窓に補助錠を付けるといった準備をしておくとよいでしょう。他にも、ブラインド、ロールスクリーンなどの操作用の紐、カーテンの留め具なども子どもの首に絡まり窒息するという事故が発生しているので、手の届かないように束ねたり、踏み台になるものを近くに置かないようにしましょう。

他にも、挙げるときりがないですが、危険な状況を作らない・近づかせないように対策してください。

※子どもの事故防止ハンドブック ブラインドやカーテンのひもなどによる窒息(画像提供:消費者庁)
※子どもの事故防止ハンドブック ブラインドやカーテンのひもなどによる窒息(画像提供:消費者庁)

――実際、帰省先での子どもの事故は増えている?

増減についての一般的な傾向については申し上げられませんが、毎年一定数の事故情報が寄せられていることも事実です。今年の年末に帰省する方が増えるのであれば、より注意が必要です。

事前に実家の危険な所を点検すべき

――帰省を迎える側はどんな心構えでいたほうがよい?

帰省先では、家の中も外も環境が異なります。近くに用水路があるとか、積雪の多い地域では除雪機を使用することもあるかもしれません。また、自宅にはない階段が実家にあるという場合もあるかもしれません。

さらには、自宅と異なる家具や製品等を使用していることがあります。仏壇の近くにろうそくの火やライターがあるとか、普段使用している製品では安全に配慮されており、そこまで気にしなくてよかったことが、実家では危険という状況も考えられます。

例えば、電気ケトルには転倒時にお湯が漏れにくい構造の製品がありますが、子どもに限らず事故防止につながりますので、普段から安全を考えて製品を選んでおくと、帰省の際に慌てて準備する必要がなくなります。実家で日常的に使っているものだからと安心せず、危険性の確認を忘れずに行い、事前に必要な対策をとるようにしてください。


――帰省する側が気をつけたほうがよいことはある?

帰省の移動時に自動車を使用する場合は、チャイルドシートを適切に使用してください。6歳以上であっても、自動車のシートベルトが適切に使えるようになるまでは、ジュニアシートを利用しましょう。

また、親戚等が集まる場合などは会食をする機会もあると思います。両親や親せきなど複数の目で面倒を見てもらっている安心感から、かえって目が届きにくくなっているかもしれません。のどに詰まらせるリスクのある食べ物は勝手に食べないように手の届かないところに置き、お酒などのアルコール類の誤飲などにも注意しましょう。周囲の大人が同じように危険性を認識しているとは限りません。もらったプレゼントや、親戚の子どもが持っているおもちゃで遊ぶ場合には、対象年齢の確認も忘れないようにしましょう。


――帰省前に、実家への伝え方があれば教えて。

事故が起こってからでは取り返しがつきません。消費者庁では、0歳から6歳(小学校に入学前の未就学児)の子どもに予期せず起こりやすい事故とその予防法、もしもの時の対処法のポイントなどをまとめた「子どもの事故防止ハンドブック」を作成・公表しています。

こういった資料を参考に、事前に実家の危険な所を点検しておいてもらってはいかがでしょうか。寝具や安全柵など実家で準備しにくいものは購入して送っておくのもよいかと思います。

子どもの事故防止ハンドブック (画像提供:消費者庁)
子どもの事故防止ハンドブック (画像提供:消費者庁)


年末年始の帰省先で気をつけなければならないことは、消費者庁の担当者が挙げたらきりがないと言うように、たくさんある。小さい子どもがいる家族は、「子どもの事故防止ハンドブック」などを参考に、実家と事前にやりとりして帰省するのが良さそうだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。