鹿児島市内各地の小学校で引っ張りだことなっている、73歳のマジシャンがいる。子どもたちは目を輝かせ、終演後には「楽しかった!」と声をそろえる。
その人気の秘密は何なのか? 噂のマジックショーを取材した。
ネタバレOK!?なマジックが大ウケ
12月12日夕方。鹿児島市の原良(はらら)小学校の体育館に、マジックショーの準備に忙しい男性の姿があった。

鹿児島市に住む、73歳の深川幸三さんだ。
深川幸三さん:
(道具は)自分で作ったんです

準備の合間、手書きの進行表を見せてもらった。この日披露するマジックは17個。最後はクイズをして終わるという。

趣味で始めたマジック歴は10年以上。今では月に数回、鹿児島市内各地の小学校からオファーが来るようになった。この日は放課後に集まった、児童約70人の前でマジックを披露した。

まずは唐草模様の財布にトランプを入れた深川さん。中から別のものが出てくるという。

「3、2、1」というかけ声とともに取り出したのは、なんと傘!子どもたちから「えー!?」という驚きの声と拍手が起きた。子どもたちは新鮮なリアクションを見せ、出だしは好調。

続いては、容器の中に入れた卵。ふたをしておまじないをかけると…なくなってしまった。それだけではない。

深川幸三さん:
なんと今、悪魔のおじちゃんが、皆さんのポケットの中に卵を入れたそうです。ポケットに入ってますか?誰か

慌ててポケットを探る子どもたちが口々に「ない!」「だれ?」と言っていたその時、最後列にいた女の子が「ありました!」と、手に持った卵をみんなに見せた。子どもたちも驚きの表情を隠せなかった。
勢いに乗り、次のマジックを披露した深川さん。
焼酎のパックにカラフルな筒をかぶせ、筒を取ったら牛乳パックに早変わりした!…しかし。
子どもたち:
なんか怪しい!! 残ってるよ!!

筒の中に焼酎パックを隠しているのが見えている。これを目ざとく見つけた子どもたちからは突っ込みの嵐。
それでも深川さんのマジックは続く。
小道具を並べた机に置かれたアンパンマンのぬいぐるみを隠すように立つと、子どもたちにこう言った。

深川幸三さん:
ここを触るとアンパンマンがいなくなります!
そう言って深川さんが横に動くと…確かにアンパンマンがいない!驚いた子どもが「えー!?」と声を上げた。

ところが深川さんがくるりと後ろを向くと、上着の裾にアンパンマンがくっついていた。そう言えば深川さん、「アンパンマンがいなくなる」と言いながら、後ろで手をがさがさ動かしていた。「ちょっと仕掛けが分かっちゃう」、これこそが深川さんのマジックの醍醐味なのだ。
今度は黒いステッキを手にした深川さん、こんなことを言ってしまった。

深川幸三さん:
もうすぐ分かります。答えは…いきますよ!
ステッキから手を離した深川さん。空中に浮いたステッキを操っているようなしぐさを見せるが、子どもたちの目は鋭かった。

子どもたち:
あ、分かった! ヒモだ!! 糸が見えてるよ!

もはやバレバレだが、子どもたちもマジックの仕掛けを見破ろうと前のめりに。目を輝かせて深川さんのマジックを楽しみ、終演後には「楽しかった!」と声をそろえた。
児童:
アンパンマンがお尻にくっついていたのが面白かった
記者:
タネがわかったけどどうだった?
児童:
面白かった!

深川幸三さん:
これからも勉強をして、子どもにウケるようなマジックをしたい。子どもたちに喜んでもらえたのが非常にうれしかった。ありがとうございました
一番楽しい時間は“お礼の手紙”を読む瞬間
大好評のうちに終了したこの日のショー。…と思いきや、ある児童がこんなことを。

児童:
来年は車のマジック出してね
深川幸三さん:
はい

実は仕掛けを忘れ、披露できなかったマジックがあったのだ。自動車の全面広告が掲載された新聞紙を破ってたたんだ深川さん、これを再び広げると元通り、となる予定だったが…。

深川幸三さん:
あれっ?中身(仕掛け)がなかった。すみません、ちょっと忘れてきました
次の年も深川さんのマジックを見たいと、せがむ児童もいた。

児童:
ちゃんと中のタネ持ってきてください!!
深川幸三さん:
はい! 分かりました

児童たちは毎回、深川さんにお礼の手紙を書いている。「マジックショーがはじまる前、しんぞうがどきどきしていました(原文ママ)」という感想や、折り紙が添えられたものもある。深川さんもこれらのお礼を読むのが一番楽しい瞬間だという。

子どもたちにどうやって楽しんでもらおうか。深川さんの人柄がにじみ出る唯一無二のマジックこそが、人気の理由だった。
(鹿児島テレビ)