廃業予定だった酒蔵を立て直し、女性や若者などにも人気の日本酒を手がけている阿部酒造。冬を迎え、新酒の出荷も始まる中、日本酒業界の厳しい現状にも直面していた。
「ニーズ上がってきている」 こだわりの酒造りで人気上昇
11月8日、新潟県柏崎市の酒蔵・阿部酒造で行われていたのは、仕込んできたもろみを酒と酒かすに分ける上槽(じょうそう)という作業。
![阿部酒造(新潟県柏崎市)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/c/700mw/img_5cfc6ff194b75e1cda6f3717118bbffe205743.jpg)
阿部酒造 蔵人 板倉良太さん:
新米の新酒がやっと出来上がりましたね
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酸味や米のうま味を生かし、日本酒好きの人はもちろん、女性や若者にも人気の日本酒を手がけてきた阿部酒造。その日本酒の味わいにこだわってきたのが6代目の阿部裕太さん。
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阿部酒造6代目 阿部裕太さん:
僕らの想像した以上にニーズが上がってきている。非常にありがたい悩みではあるので、そこにおごることなく、しっかりちゃんとしたものを造る。質も上げて
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酒蔵を継ごうと、2014年に柏崎に戻り、酒造りを始めてから9年目。今では酒販店も阿部酒造の日本酒を待ち望むまでになった。
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カネセ商店 和田幸永さん:
阿部自体が近年、年を重ねるごとにすごく人気になってくるというか、問い合わせもすごく増えている
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その人気の理由は日本酒の味わいだけでなく、阿部さんの挑戦を続ける姿勢にもあった。
カネセ商店 和田幸永さん:
特に阿部は今までの新潟清酒の中でも、ちょっと違った切り口でできている。昔ながらの良いところ、淡麗辛口という伝統を受け継ぎつつ、自分なりにアレンジしていくという姿勢がすごい
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「地元の景色守る」 売り上げを地域に還元
この日本酒にかける熱意は一見、縁遠いように見える小学校にも注目されている。
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この日行われたのは、阿部さんによる日本酒の授業。そのきっかけとなったのが、阿部酒造のブランドの一つ「圃場(ほじょう)別シリーズ」だ。
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阿部酒造6代目 阿部裕太さん:
うちは売り上げの一部を地域に還元している。その地域で、より田んぼが作りやすい環境をつくるようなことをしている
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阿部酒造では、柏崎を中心に各地域の田んぼごとの酒米で酒を造り、それぞれの地域の名前を冠した「圃場別シリーズ」を展開していて、その売り上げの一部を酒米農家に還元している。
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酒で柏崎地域の景色を守る。こうした地域への思いを持った阿部さんの姿勢が地域の魅力を勉強していた子どもたちの学びとつながっていた。
![圃場別シリーズ](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/9/4/700mw/img_94b22e5e6aba32905b06bd1af8824872259798.jpg)
児童からはこんな質問も…
児童:
これから阿部酒造を何年続けていきたいという目標はありますか?
阿部酒造6代目 阿部裕太さん:
僕も今、4歳の子どもがいる。その子に将来「酒蔵を継ぎたい」と言ってもらえるように頑張っている。ずっと長く続けるのは命題
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進む“日本酒離れ” 一時は蔵をたたむ予定も
1804年から6代にわたってその伝統をつないできた阿部酒造。しかし、10年前ほど前まではその伝統の存続が危ぶまれる状況にあった。
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阿部酒造5代目 阿部庄一さん:
裕太が入ったころは、新潟清酒自体がけっこう落ち込んできた時期だった。全国的にも清酒が落ち込んできた時期でもあったので、蔵をやっていくのは大変だと思った
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こう話すのは、阿部さんの父・5代目の庄一さん。2013年には日本酒の国内出荷量がピーク時の3分の1にまで落ち込むなど、日本酒離れが進んでいた背景から、蔵は庄一さんの代でたたむ予定だったという。
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阿部酒造5代目 阿部庄一さん:
裕太には「厳しいぞ」と。酒造りもけっこう体力的に大変だから。それだったら前に勤めている職業のほうが合っているんじゃないかと、俺は思った
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心配する父親の反対を押し切り、蔵に戻った阿部さん。今では他の酒蔵からも注目されるまでに成長したが、それでも日本酒業界を取り巻く厳しい現状は続く。
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「色んな仕掛けを」 厳しい状況でも挑戦続ける6代目
阿部酒造6代目 阿部裕太さん:
酒蔵としては、これからも人口が減っていく、アルコールを飲む人も減っていくという中で、今までと同じことをしていたら、おそらく働き手は増えていかない
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課題の一つに挙げられるのが人手不足。阿部酒造では現在7人が蔵人として酒造りを行っているが、日本酒業界では人材不足に加え、蔵人が数年で他の蔵に移動してしまうことも多いため、長期的な雇用が難しいという。さらに…
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阿部酒造6代目 阿部裕太さん:
今、お取引している酒屋からのオーダーをマックスで受けようとした場合、あと3~5年、設備を整えるまでに時間がかかりそう
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廃業予定だったことで設備投資が遅れ、当初は一升瓶で年間4000本ほどの日本酒しか造れなかった。そこから設備投資を行い、現在は年間2万3000本ほどの生産が可能となっているが…
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ノマタ商店 五十嵐竜太さん:
現状だと、数のほうも欲しい分はいただけていない状況
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阿部酒造6代目 阿部裕太さん:
今のうちの生産キャパ的に、720mL(四合瓶)のみにしないと、もしかしたら厳しい
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それでも廃業寸前から人気の蔵へと成長してきた阿部酒造。取り巻く現状は厳しくても、日本酒の新たな可能性を探す阿部さんの挑戦は続く。
阿部酒造6代目 阿部裕太さん:
造れる量は限られているが、各方面・色んな方からお声がけいただいたり、だんだん点と点が線になりつつあるので、色んな仕掛けをやっていきたい。これからも
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(NST新潟総合テレビ)