発熱などが治まった後も倦怠感や気分の落ち込みなどに苦しむ、“コロナ後遺症”。

その数は、コロナにかかった人の10人に1人とも言われている。

西馬込あくつ耳鼻咽喉科 阿久津征利院長
西馬込あくつ耳鼻咽喉科 阿久津征利院長
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後遺症を和らげる治療の1つ「上咽頭擦過療法」と、自宅でもできる治療法について、コロナ後遺症外来を実施している西馬込あくつ耳鼻咽喉科の阿久津征利院長に聞いた。

炎症性物質を除去

――上咽頭擦過療法とは?
鼻と喉の堺目にある上咽頭に炎症を起こしている患者さんに対して、その部分の炎症をとっていく治療処置です。

炎症性物質をしっかり取り除いていくのが1つと、あとはお薬の効果です。

そして上咽頭の裏側には自律神経・迷走神経が走っていて、ここが炎症を起こすと自立神経に作用しやすいので、そこの炎症をとっていく治療になります。

小型カメラで上咽頭の状態を確認
小型カメラで上咽頭の状態を確認

診察ではまず、小型カメラを鼻から挿入して、上咽頭に炎症があるかを確認する。

そして炎症がある場所に、塩化亜鉛溶液を染み込ませた綿棒を何度もこすりつける。

薬液を綿棒で炎症個所に塗る
薬液を綿棒で炎症個所に塗る

阿久津院長は治療について、次のように解説する。

「上咽頭はウイルスが増幅しやすい場所で、ウイルス自体は死んでも炎症だけがくすぶり続けてしまっているので、薬をこすり付けて取ってあげることで炎症性物質、炎症性のサイトカインというものが減っていくと考えられています」

赤い点が炎症を起こしている箇所
赤い点が炎症を起こしている箇所

――これは新型コロナ後遺症に有効な治療?
始まった当初から手探りな状態で、いろいろな治療が試されてきていると思いますが、かなり手応えはあると思っています。

もともとは慢性上咽頭炎と言って、この部分で炎症が起き、痰が落ち込みやすい“後鼻漏”の原因になっていたり、IgA腎症、自己免疫疾患に対して行われていた治療になります。

風邪の後や、アレルギーがひどくて鼻水が出やすい方、また、逆流性食道炎で上咽頭の方まで胃酸が上がってきてしまう人、あとは、口呼吸で乾燥した空気が上咽頭を刺激してしまうタイプに多いです。

メイン症状は“痰が喉に回ってくる感じ”

患者の中には、医師に指摘されるまで病状に気付かないケースもあるという。

阿久津院長は、症状として頭痛や首の痛みもあるが、一番は、痰が喉に回ってくる感じだと指摘する。


――どのような自覚症状がある?
痛みは出る人と出ない人がいますが、一番メインとしてあるのは、痰が喉に回ってくる感じです。

あと、頭痛で来る人もいますし、首が痛い方も上咽頭の治療をして良くなることがあります。

――これまで後遺症に悩む患者は何人ほど診てる?
600人ぐらいで、99%の方が上咽頭が腫れています。

そのうちの8割が、2か月ぐらいで治療が終わり、残り2割は症状が残ってしまい、処置を続けて炎症が落ち着くのを待っています。

上咽頭擦過療法にかかる治療時間は、1~2分。

保険適用(3割負担)の対象で、治療費は初診が3000円、2回目以降は数百円で受けられる。

10~15回の治療が1セットで、週2回、難しければ1回を繰り返し施行する必要があるため、だいたい2ヶ月ほどかかるという。

「鼻うがい」「身体を温める」も効果的

一方、阿久津院長は病院での治療以外にも自宅でできるセルフケアがあるという。

――コロナ後遺症に自宅でできる治療は?
まず“鼻うがい”が良いと思います。鼻の中の炎症を自宅でセルフケアで洗い流すことで良くなる方も多いです。

市販のキットを買い、1日1~2回、毎日やってください。それで良くならない人は、今回の上咽頭擦過療法が有効と考えています。

あとは身体の冷えにより、自律神経のバランスが悪くなり免疫力低下にもつながるので、湯たんぽやペットボトルを使って、朝晩に身体や首、ふともも、脇の下など太い血管が走っているところを温めると、リラックス効果や冷えの症状の緩和にもなります。

――最後にコロナ後遺症に悩む人へのアドバイスは?
1か月症状が続いていたら後遺症と言いますが、その前からセルフケアをやっていただいた方がいいです。

症状が残っているのなら鼻うがいから試してみて、良くならないようだったら耳鼻科やコロナ後遺症をやってる内科の先生に相談してください。