創業72年を誇る石川県小松市のモノヅクリ企業、北菱(ほくりょう)。1950年に自動車の販売店、整備工場として創業し、その後、時代の変化に合わせ建設機械部品など受注商品を拡大していく。2015年にトップに就任した谷口直樹(たにぐちなおき)社長(46)の挑戦への思いを食を通してひも解く。

「3代目」の挑戦

小松市内にある製造業、北菱。

おしゃれな作業服に身を包んだこちらの男性。

谷口社長:
人生の中で会社に勤めている時間が長いと思うので着るものもかっこよくありたいなと。
安全でありながらデザインも重視したものを採用したいなということで選んでいます。

2015年にトップに就任した谷口直樹(たにぐちなおき)社長(46)。

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どこよりもコンパクトで安くいい仕事を

1950年に自動車の販売店、整備工場として創業した北菱。

その後、時代の変化に合わせ建設機械部品など受注商品を拡大してきた。
今、注目の商品はこれ。

谷口社長
これは老朽化した下水管をメンテナンスするロボットなんですけれど…

高度経済成長期に整備された日本の下水道は50年以上が経過し、老朽化が問題になっている。
しかし取り替えるには莫大な費用がかかる。

そこでこの小さなロボットは、老朽化した下水管に入って異物を除去。

また補強のため、管の内側に樹脂を散布した場合、各家庭につなぐ管がふさがれてしまうため、ピンポイントで樹脂の膜を切り取り、管を取り替える必要がなくなるのだ。

これは谷口社長のアイデア。

谷口社長
私が営業していたころはお客さんもそんなに高いロボットは購入できないという声もあったのでどこよりもコンパクトで安くいい仕事をするロボットを目指して開発しました。

まずは「お客さんの声を聞くこと」このロボットは国内のみならずマレーシア政府と契約を交わすヒット商品に。

 

提案1件“200円”の「目安箱」

工場の中で、こんなボードを見つけた。

谷口社長
これがうちの従業員の困りごとを吸い上げる気づき提案制度という目安箱みたいな制度です。

ここに書かれているのは働くうえでの困りごとや不満。
会社はその困りごとに対して対応しているのかどうかが一目で分かる。
しかも、このカードを記入すると1件あたり200円の報奨金がもらえるのだ。
これも谷口社長のアイデア。

谷口社長
現場に無理があると製品の品質につながったりコストにつながったりするので現場が働きやすく無理のない生産ができるようにこういうことをしています。

お客さんだけでなく「社員の声も聞くこと」。これが谷口社長が大切にしていることだ。

日替わり300円「社食」作った「哲学」

昼休み。社長が向かったのは…

社員食堂!実はこの食堂も谷口社長が新しく作ったもの。

谷口社長
きょうは日替わり定食いきます。これですね。

値段はなんと300円。
費用の半分以上を会社が負担しているため社員は格安で温かいランチが食べられる。

谷口社長:
いただきます、うまい。みんな毎日食べたいものが違うと思うのでその人のその日の要望を用意したいというのはあります。

メニューは10種類以上でかなり豊富。

社員:
豚骨醤油ラーメンです、そこらへんのラーメン屋さんよりおいしくいただいています。
谷口社長:
カツカレー好きだよな。
社員:
めちゃめちゃうまいです。
谷口社長:
きのうもカツカレーだったよな。
社員:
これ300円ですよ!300円でカツカレー食べれるなんてありがたいです。

支出を減らすため社員食堂をやめる会社もある中、あえて食堂を作った谷口社長。
ここにも社長の哲学が。

谷口社長:
お昼が美味しいもの食べられるだけで仕事も頑張れるし、リラックスした時間こそ本音を言い合えると思うので和気あいあいとした時間、空間を作りたいんです。

記者:
お腹膨れました?
谷口社長:
膨れました、午後からも頑張れそうです。

「声を聞くこと」「常識にとらわれないこと」谷口社長は常に先を見据えている。

谷口社長:
世界で見て成長産業であるのが航空産業やエネルギー産業だったが航空機のエンジンは非常に要求が高くて難しいんです。

会社のさらなる発展につなげるため2019年からは精密な加工が求められる航空機エンジンの製造に本格参入。

さらに、コロナ禍で人気が高いキャンプ用品の製造販売も手がけている。 

谷口社長:
作っていくものが変わっても常に世の中から必要とされる、一番と思ってもらえるように時代の流れを先読みしながらいままでやったことがないことにも積極的に挑戦し続けたいです。

常にチャレンジを続ける谷口社長。
「耳を傾ける」ことを大切に北菱「ならでは」の商品を作り続ける。

(石川テレビ)