文部科学省は6日、小学校から高校の生徒指導をまとめた「生徒指導提要」の改訂版を発表した。ニュースやSNSでは、たびたび「下着は白のみ」「ツーブロック禁止」など不条理なブラック校則が話題になるが、これで何が変わるのだろうか?

「生徒指導提要」は学校・教職員向けの約300ページに及ぶ生徒指導に関する手引書で、2010年に初めて発表された。しかし、学校・生徒指導を取り巻く環境は大きく変化し、生徒指導上の課題がより一層深刻化している状況だとして、今回12年ぶりの改訂となった。

校則については以下の4つの項目を立てて詳しく説明している。ここでは概要だけ紹介する。

1,校則の意義・位置付け
校則は児童生徒が健全な学校生活を送り、よりよく成長・発達していくために設けられる。校則を作るときには、少数派の意見も尊重する。

2,校則の運用
教員は校則を守らせることばかりにこだわらず何のために作られたのか理解・指導することが重要。
校則は学校内外の関係者が参照できるようにホームページ等に公開しておくことや、制定した背景等についても示しておくことが適切。

3,校則の見直し
教育に適切か、変更する必要がないか、絶えず見直しを行う。
校則でマイナスの影響を受けている子どもがいないか検証し、いる場合は見直す。

4,児童生徒の参画
校則の見直しに、子どもたちが意見を言うことは、ルールを無批判に受け入れるのではなく、身近な課題を自ら解決する教育意義がある。

その校則がなぜあるのか、先生も理解した上で指導する

「校則の見直し」については改訂前も書かれていたが、「ホームページで公開」というのは改訂版が初めてとなる。
その狙いは何なのか?改訂版によってブラック校則はなくなるのだろうか?
文部科学省の担当者に聞いた。

――改定版の特徴は?

先生方も「校則で決まってるんだ」というのではなく、なぜその校則があるのかを理解した上で指導して、児童生徒も意味を理解して自主的に守るよう指導するということが前提で、その上で、ホームページに公開するという部分などですね。
また、絶えず見直しを行うことを、改めて記載をしています。

「生徒指導提要」(改訂版)より
「生徒指導提要」(改訂版)より
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――校則を「ホームページに公開」としたのはなぜ?

今も昔も校則は基本的に生徒手帳に書かれていますが、例えば高校などに進学する時、入学後に「こんな校則があるんだ」と知るよりは、各学校の方でホームページに公開しておけば事前に情報として知ることができます。

また、校則を地域の実情や時代の変化に応じて見直すという観点からも、教職員や通ってる生徒だけではなく、いろんな人が見られるようにしておくことが大事で、すると紙よりインターネット上で公開するほうが、いろんな人が参照できるということです。

この10年間でスマホが普及して、1人1台端末を持ったりインターネットがより身近になったりしたという要因もあります。


――校則をホームページで公開している学校が増えている?

その調査はしていないので分かりません。


――校則が決まった背景についてもホームページで公開する?

そこまではないです。
校則の内容についてを公開すると書かせていただいており、校則の成り立ちについては指導に当たる教職員の方が理解しておいていただきたい、ということです。
把握していないと指導もなかなか難しいでしょうから。当然、各学校がホームページに書くのは自由ですが、そこまで求めているものではありません。


――「校則でマイナスの影響を受ける子がいないか検証」と書かれているがどんな方法?

それについて各学校のやり方まで、箸の上げ下げまで指導するものでもないでしょう。
一般的に言うと、どの学校でも、いじめのありなしなどを調べる「生活アンケート」のようなものは当然とっています。

また、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーなど、相談体制の充実も進んでいます。
いろいろなアプローチがあると思うので、杓子定規にこうしてくださいというよりは、各学校で1番キャッチアップできるような形でやっていただければと思ってます。


――今、ブラック校則で困っている子どもや保護者はどうしたらいい?

いろんなやり方があるでしょう。
校則は基本的に校長が定めるものなので、個人が校長にお話するようなパターンもあるでしょう。

また、生徒100人中99人がOKでも、1人がダメだと思っているパターンもあります。
校則をどうしたいのか、生徒会などで生徒全体が議論して、総意を学校側に伝えたという例もありました。
一般的には校長に伝えたり生徒会を活用するということになると思います。


――今回の改訂版でブラック校則はなくなる?

当然、国としても、ブラック校則で悩んだり苦しんでいる子どもを救いたい、いなくなってほしいと思っています。ただ一見、生徒達とは考え方が違う校則でも「こういう意味があるんです」となにか理由があるのかもしれません。かつては、ものすごく厳しい校則が使われた時代もありますが、今はそれがちょっと違うという考え方も出ています。

校則については「地域の実情や時代の変化も加味して見直してください」ということを求めていて、改訂版を出した後は、いろんな研修などを通じて、各教育委員会や学校などが理解して、それに沿った運用をしてくれるように働きかけていくスタンスです。
だから、これが出た瞬間にこの世の中から校則で悩み苦しむ子どもが1人もいなくなるわけではなく、地道な努力がこれからも必要になると思っています。

(画像はイメージ)
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生徒指導提要では校則以外に、「自認する性別の制服を着ることを認める」など性的マイノリティについての理解と対応についても書かれている。
これら改訂によって、これからの学校が子どもにとってより過ごしやすい場になることを期待したい。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。