月9ドラマでも放送中の「PICU」。現場の苦労や課題など、実際の小児集中治療室「PICU」をトラウデン直美が取材しました。

月9で注目 小児集中治療室「PICU」 リアルな最前線

24時間、幾度となく鳴り響くアラーム。時間を問わず聞こえる泣き声。
ここは、小児集中治療室、通称「PICU」。高度かつ集中した治療が必要な、おおむね15歳以下の重症患者を受け入れています。
小さな命を守る、そのリアルな現場を特別に取材することができました。

月曜9時に放送中の、小児集中治療室が舞台のドラマ「PICU 小児集中治療室」。安田顕さん演じる植野元医師には、実は実在のモデルがいるのです。

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それが、埼玉県立小児医療センターで小児救命救急センター長を務める、植田育也先生。日本におけるPICUのパイオニアの1人です。そんな植田先生が院内を案内してくれました。

中が見える扉の向こうがPICU
中が見える扉の向こうがPICU

この病院のPICUのベッドの数は14床。日中は医師5人・看護師10人以上、夜間は医師3人・看護師7人で治療にあたります。

トラウデン直美:
小児集中治療室っていうのと普通の集中治療室とは、どう違うんでしょうか?

埼玉県立小児医療センター 植田育也 センター長:
病気が全然違います。成人ですと、心筋梗塞や脳卒中など。小児の場合は、それと全く違う病気で具合が悪くなるので。

ICUの場合、患者の疾患は、心筋梗塞や脳卒中が主だそうですが、PICUの場合は先天性の心疾患や小児特有の感染症など、あらゆる子どもの重症患者に対応が必要だといいます。
その実際の様子を見せていただきました。

トラウデン直美:
こちらにはどんな症状の方が今いらっしゃるんですか?

埼玉県立小児医療センター 植田育也 センター長:
集中治療っていうのは、そもそも基本的に大きな手術のあとの患者さんお世話をする。それから病院の中の急変と、この周り(病院周辺)の小児の三次救急、救命救急。

PICUは手術後の患者や症状が急変した患者、地域の救急患者の治療を、24時間体制で行っています。

鳴り続けるアラームに子供の泣き声…24時間気の抜けない現場

この日、入院している小児患者は12人。午後7時、空いているスペースに運ばれてきたのは、心臓の手術を終えたばかりの子どもです。外科チームから引き継ぎ、術後管理を行うのも、PICUの大切な役割です。

院内で鳴り続けるアラーム。心拍や血圧など、何らかに異常が起きた可能性を知らせてくれるものですが、24時間で何回鳴るのか数えたところ、なんと492回。アラームが鳴れば、患者の元へ行き、その原因を確認し、対応にあたります。

さらに、聞こえてくるのはアラームだけではありません。赤ちゃんが泣けば異常がないか確認しつつ、あやして落ち着かせます。24時間、気の抜けない現場です。

しかも、子どもへの対応は、PICUならではの技術や器具の知識が必要だといいます。

植田先生が見せてくれたのは、気管挿管チューブ。病気や様々な場合によってサイズを変えるのも、小児集中治療医のスキルだといいます。課題となるのは、小児集中治療のスキルを持つ人材育成です。

埼玉県立小児医療センター 植田育也 センター長:
今後はやはり大学・医学部の医学教育の中で、小児があって集中治療がある中で実習してもらったり。そういうことによってもっともっと裾野を広げていかないといけない。それが次の課題になっていくんじゃないかなと思います。

「PICU」人材育成の新たな取り組み

小さな命を救い続けるために、人材育成の現場では、新たな取り組みが行われていました。

訪れたのは、東京大学医学部附属病院。東京大学医学部小児科・松井彦郎准教授は、小児集中治療室・PICUで医師をしながら、人材育成にも力を入れています。

トラウデン直美:
素朴な疑問として、小児科の先生の皆さんが、小児集中治療ができるというわけではないんですか?

東京大学医学部小児科 松井彦郎 准教授:
小児科医の先生が全部できるというわけにはいかないですね。小児科の知識を持って、なおかつそういった重症な患者を診る知識とトレーニング、これがやはり必要なんですね。

東大病院で行っているのは、医学部の学生のためのPICUでの研修。身体の小さな小児患者に合わせた、特別な心臓マッサージのやり方など、PICUで必要な知識を教えています。
少子化によって小児の重症患者さんに触れる機会が減っていく中、実際にPICUで研修することが大切だといいます。

東京大学医学部小児科 松井彦郎 准教授:
学生がPICUに触れる機会があると、それがPICUを充実していく未来に繋がっていくと思います。

トラウデン直美:
学生さんたちに期待ですね。

東京大学医学部小児科 松井彦郎 准教授:
今やっぱり情報がすごく多いので、それをちゃんと吸収してもらって、やり方をしっかり学んで、いいものを培っていってもらいたいです。

少子化が進み、小児患者を診る機会も少なく「経験」が減っている今、専門知識を持った人材育成の場が貴重な経験になり、大切になるといいます。

現在、PICUは全国に35施設。埼玉県2施設、千葉県3施設、東京都5施設、神奈川県2施設、大阪府4施設、兵庫県2施設など、都市部に集中しています。地域によって受けられる医療の格差が起きないよう、搬送経路の確保や連携がとても大事になっています。

(めざまし8 12月7日放送)