「今のファッションを、もうちょっとカジュアルにするにはどうしたらいい?」
こう聞かれたら、あなたは最適な答えをイメージすることができるだろうか。
ZOZO研究所と早稲田大学の研究グループは、このようなファッションの曖昧な質問に対しても答えを出してくれるAIシステムを開発した。

研究グループによると、人によってファッションの嗜好やイメージは極めて曖昧なため、「オフィスカジュアル」「キレイめ」などの表現で説明しても、専門家でない人が理解することは難しいという。
そのため例えば、ファッションの通販サイトでキーワード検索をしても、理想の結果になかなかたどり着きづらい。
そこで研究グループは、全身のコーディネート画像とそれに付与された「#カーディガン」「#休日スタイル」「#キレイめ」などのタグをAIで分析し、ユーザーからの曖昧な質問に回答する「Fashion Intelligence System」という新技術を作り上げた。

このシステムは現時点で、3パターンの質問について設定しているという。
1,タグと画像の演算による画像検索機能
「このコーディネートを少し○○(カジュアルなどの言葉) にするとどんなコーディネートになりますか?」
2,タグとの関連度順に画像を並べ替える機能
「特に○○はどれですか?」「全体の中で50%くらい○○なコーディネートはどれですか?」
3,タグとの関連度の強弱を色で分けて視覚化するヒートマップ作成機能
「このコーディネートの中で○○な部分はどこですか?」
例えば、「オフィスカジュアル」について画像並べ替え機能を使うと、「オフィスカジュアル」タグが付いた服装の中でも、より「オフィスカジュアル」なものが把握できる。
さらに、服全体のどのあたりが「オフィスカジュアル」なのか、ヒートマップで視覚化することも可能だ。

どのような形で実用化されるのかはまだ決まっていないものの、このシステムはユーザーが着たり買ったりする服選びを支援することが期待されているという。
動機は研究者自身がファッションに迷った経験から
確かに使い方によってはファッションに自信がない人の助けになりそうだが、なぜこの研究を始めたのだろうか。また、スマホのAIアシスタントのように「大人カジュアルってなに?」など、話しかけるように質問もできるのか?
この研究論文の筆頭著者でZOZO研究所の清水良太郎さんに聞いた。
――なぜ、このシステムを開発しようと思った?
「フォーマル」「きれいめカジュアル」「大人カジュアル」「大人ガーリー」...など、ファッション関連の表現が曖昧であるために、私自身がどのようなコーディネートが適切か判断することが難しいと感じた経験から、このテーマにアプローチしたいと考え研究をスタートしました。
この問題が解決できれば、自分の意図(ちょっと攻めた服装をしたいのか、とにかく場に馴染むような服装をしたいのか、など)に応じたコーディネートを選択することが容易になると考えています。
――AIはどんなファッションを学習している?
弊社が運営するファッションコーディネートアプリ「WEAR」に投稿された画像と、その画像に付与されたタグを学習しています。
付与されるタグの中には、コーディネート全体に対して付与されたであろうものと、ある単体のアイテムに対して付与されたであろうタグもありますが、どちらのタイプのタグでも検索や並べ替えなどの機能に活用することができます。
――「大人カジュアルってなに?」とかの質問にも答えてくれる?
自由入力ではなく、約1000種類のタグ(表現)の中から詳しく調べたいタグを選択すると、画像検索・並べ替え・ヒートマップ作成の3つの機能を提供できるようなシステムとなっています。
人間の文章を理解してそれに関する回答を得るような構築方法もありますが、今回の研究成果は基幹部分となるような内容になっています。
――例えば、画像の服装がどれくらいカジュアルなのか数値化することはできる?
並び替え機能を使用することで、タグに該当する画像の中において、際立っている度合いを%で示すことが可能です。
――実用化されるのはいつごろになりそう?
今回開発したシステムは現時点では実用化には至っておりませんが、本研究はビジネス活用を前提としているため、将来的な実用化を目標にさらに研究を進めていきたいと考えています。

「もうちょっとカジュアルに」など、通販サイトがユーザーの要望に的確に答えてくれたら、買い物はもっと便利になりそうだ。
研究グループによると、このシステムは画像と画像に紐づいた単語などのデータを使えば、建築物・アート・家具・料理などの分野に応用することが可能だという。