北海道内の2023年のクマの目撃件数は、9月の時点で3000件を超えていて、過去最多となっている。10月3日にも札幌市西区福井地区で、道路を横切る3頭のクマが目撃された。

クマの目撃情報が過去最多 背景は?

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10月3日午後11時50分ごろ、札幌市西区福井で道路を横切る姿が目撃された親子とみられる3頭のクマ。

付近は住宅街で学校が近く、住民には不安が広がっている。

「住宅街の真ん中。小学校も中学校も近い。考えられない」(付近の住民)

付近の小学校では教員による見守り登校が行われた。

「何かがあってからだと遅いと思い、きょうは子どもを送ってきた」(付近の住民)

クマが入っていったとみられる山道では、“ふん”が見つかった。

「実のなった木がある。斜面にはクルミの実がある」(札幌市の担当者)

札幌市の担当者も警戒を強めている。

「クルミの木や木の実を探して動き回っている。ドングリが10月にかけて実ってくる季節だが、実りがあまり良くないので、住宅街の近くに出てきている。今後の対応を専門家と協議している。駆除も含めて考えていきたい」(札幌市の担当者)

9月25日から札幌市西区山の手地区で相次いだクマの目撃情報。今回の福井地区で目撃されたクマと同じ親子の可能性が高いとみられている。

10月2日夜、北海道浦河町を走る車の前に突然2頭のクマが現れ急ブレーキ。クマは車の後ろを走り去った。

9月29日には美唄市で体長約1.7メートルのクマ1頭が駆除された。

北海道内の2023年のクマの目撃情報は9月の時点で3000件を超え、過去最多だった2022年をすでに上回っている。

“観光地にクマ”  北海道南部でも急増 

クマの目撃が相次いでいるのは、北海道南部でも。松前町では9月12日午後3時ごろ、原口の国道228号線でクマの姿が捉えられた。木の枝に登り、寝そべっている。

このあと、何か食べ物を探しているような仕草もしている。

さらに、桜や城で人気の観光地・松前公園でも、城の門から数メートル先でクマのふんとみられるものが見つかった。

9月13日午前8時ごろに撮影された写真にふんが写っている。城を管理する職員が見回り中に発見した。

そして、職員を驚かせる光景が…

クマの仕業か、城の周りの柵がなぎ倒されていた。

「ここの部分がちょっと破られていたんですよね。ここから入ってそっちに行って。ここ食べるものないですから、何もないということでまた戻っていったんじゃないか」(松前町教育委員会 高橋光二課長)

これもふんが見つかったのと同じ日に確認された。

連日出没するヒグマ

春になると250種類、1万本の桜が咲き誇る松前公園。城と一緒に桜が楽しめるとして、年間12万人の観光客が訪れる人気スポットでもある。

「(Q:これまでにこんなことはあったか?)私が担当してからはない。その前もなかったと思う。全国から観光客に来ていただいているので注意の看板を設置し気をつけて見てもらっている」(松前町教育委員会 高橋課長)

出没は観光地にとどまらない。この松前公園から数百メートルの寺でもクマが出没した。

捉えられた映像をよく見ると木の間に大きな黒い物体が。
さらにその1週間後には白昼堂々歩く親子グマが、地面に落ちている何かを食べている様子が映っている。

この寺にはクルミの木があり、連日クマが出没していたという。

また、近くの別の寺でも大きな黒い影が映っていた。
クマは墓石が隠れるほどの大きさで、時折、何かをかみ砕いている音も収録されていた。

「クルミを食べている音だ。ヒグマはバリバリクルミを飲み込んじゃうみたいだ。出没件数がすごく多く、しょっちゅう来るようになった」(光善寺 松浦真亨さん)

クマの目撃や痕跡は町の中心部でみられ、近くには小学校や民家もある。

「1日中バリバリ音が聞こえていたりする。夜は車から降りて家の中に入るだけで怖い」(光善寺 松浦さん)

町は危機感をあらわに

松前町での2023年のクマの目撃件数は、すでに2022年の3倍以上に急増。

町は危機感をあらわにしている。

「例年と比べるとかなりの目撃件数がある。役場と消防にも協力してもらい、夕方から午後9時くらいまで巡回している」(松前町農林畜産課 福井純一課長)

「秋の不作」で人里に接近か

クマの生態に詳しい専門家は、

「前年に豊作か凶作かの影響も受けるし、気温の影響なども受けると思う。今年は木の実が不作という傾向。エサが少なくて木の実を食べに出てくることがありえる」(酪農学園大学 佐藤喜和教授)

人里までくるケースが増えている中、私たちはどのような行動が必要なのだろうか。

「市街地に接した公園などには、クルミの木のような木の実をつける木が多くある。なるべく実のついた木の付近を一人で歩かないということが大切になる」(佐藤教授)

クマと人の距離が縮まっている今、被害に遭わないための一人一人の心がけも大切だ。

クマに遭遇しないために、また遭遇してしまったらどうすればいいのか。クマの生態に詳しい酪農学園大学の佐藤喜和教授に聞いた。

・エサとなるクルミなどがある公園に一人で近づかない
・遭遇したら急に騒いだり走ったりしない
・落ち着いて家や車の中などに身を隠す

冬眠に向けてまだまだクマが活発に動く時期が続く。十分に注意を。

北海道文化放送
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