企業などの組織を中心にDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が加速している。

さまざまな事業を伸展させる必須要件とも言えるDXだが、DXを進める際にどのようにすれば効果を最大化できるかがわからず、暗中模索を繰り返している企業も多くある。

デジタルコンサルティングサービス等によって多くのDX支援を手がけ、2022年にスタンダード市場に上場を果たした株式会社アクシスの代表取締役社長執行役員・小倉博文氏にDX推進のポイントについて経済アナリスト・馬渕磨理子氏が聞いた。

日本におけるDX推進の課題を読み解く

―― 株式会社アクシスは1991年にSI(システムインテグレーター=情報システムの構築を請け負う事業者)として創業し、30年を超える年月をかけて着実に実績を積み上げてきました。特に金融業界や官公庁などに強いSIとして定評を受けています。その信用は、新規事業として手掛けている企業などのDX支援において大きく活きているのではないでしょうか。

株式会社アクシスの代表取締役社長執行役員・小倉博文氏
株式会社アクシスの代表取締役社長執行役員・小倉博文氏
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ありがたくもご評価をいただいています。ITに対するニーズは加速度的に膨らんでいますが、それに応じて弊社は、SI事業はもとより、セキュリティサービス、デジタルコンサルティングサービス等を近年新たに展開しました。

特にITの導入が難しいとされる金融機関や官公庁で実績を重ねたことで、企業全体の信頼が高まりました。

経済アナリスト・馬渕磨理子(左)
経済アナリスト・馬渕磨理子(左)

―― DXという言葉が誕生するはるか以前からSI事業を通じて現在のDXに通じるデジタル化を推進してきた御社から見た時に、日本のDXにどんな課題があるように感じていますか?

大手企業に関して言えば、もともとデジタル化は早い段階から進められていました。

ですが、技術の進歩に伴い、旧来のシステムを刷新する必要に迫られ、またクラウド化への対応や新しいITを活用したサービスの導入も求められるようになりました。そこに応じていくことが大手の課題です。

一方、中堅・中小企業の課題となるとまた少し毛色が違います。大手に比べてデジタル化がまだまだ進んでいません。理由は、①(ITに詳しい)人材の確保が困難であること、②ITリテラシーの低さ、があげられます。

経営者や役員をはじめ、中堅・中小企業の社員は高いITリテラシーを持つ人が少ない傾向にあります。

そのため、業績・収益の向上にデジタルをどのように活用すべきかがわからないので。それがデジタル化推進のハードルになっています。

――それらの課題を解決するために、コンサルティングも含めたDX支援を行うことで、その企業に合った形のシステム開発やデジタル化ができるのですね。

言葉だけが先行して実質が伴わない理由

――そのハードルを乗り越える上で活躍しているのが、御社のデジタルコンサルティングサービスですね。同サービスは、IT関連のアドバイスをしながら、各企業に合った形でシステム導入やシステム開発をしていく事業だと思いますが、実際の現場でDXはそう簡単に進むものなのでしょうか。DXというフレーズについては、「言葉だけが先走っていて、中身がない」との批判もなされています。

まさにそういった側面があることは否定できません。たとえば、企業のデジタル化を進める際に、ITのインフラを整え、新しいソフトウェアを導入したとしても、それが形だけで終わって利活用にまで至らないというケースがよくあります。

――ITツールをただ導入すればDXが進むというわけではないのですね。

なぜ、DXが言葉だけ先行して実質が伴わないのか。そこには、先にも述べた「ITリテラシーの低さ」が関係しています。

端的にいえば、経営陣がデジタル化によって経営にどんなプラスがもたらされるかを理解していない(理解できない)ために、DXが空振りになってしまうのです。

そのため、システム導入にせっかくお金を払っても、効果がほぼ得られないということが起きてしまう。そんな事態は論外です。そこをサポートするのが弊社のコンサル事業になります。

まずはITについて理解を深め、ITを使うことで業務のどこにどんな効果があるのか、仕組みはどうなっているのか等を経営者などが学んでいくことが大事です。

弊社は、エン・ジャパン株式会社のオンラインラーニングサービス「エンカレッジ」と提携して、そういったITリテラシー教育を行っています。

たとえば最新技術を導入し、旧システムを新システムにシフトするスキルを顧客企業の技術者に習得させるといったことも行っています。

企業内のデジタル化、どこから手をつける?

――御社ではITの基礎から、実務とのつながりまで、多岐にわたる教育をされているのですね。とはいえ経営者の中には、「デジタル化をしたからといって、ほんとうに収益に結びつくの?」といった疑問がなかなか拭えない人もいるかもしれません。

そういう方もいらっしゃいます。そんな場合には、アクシスでは「管理部門や経理部門などのデジタル化から始めてみませんか?」と提案しています。

なぜかというと、会計・経理ソフトなどは、導入すれば効果がわかりやすく出るからです。

しかも、それらのソフトによって業務効率化が進むと、手が空く人員が増え、彼らは別の仕事でプラスアルファの業務をこなせるようにもなります。

そのように「目に見える効果」が出ると、経営者は「デジタル化はこんなにすごいのか」と実感し、その他のデジタル化にも前向きになります。

――ハッキリ効果がわかるデジタル化から着手すると、経営者の納得を得やすくなるわけですね。

仰るとおりです。また、会計・経理ソフトに続いて、次に効果が出やすい営業支援ツールやマーケティングソフトなども導入すると、経営者の納得感がさらに増します。

そのあとは、チャットツールやグループウェアなど、使い方によって効果の有無が分かれるようなシステムを導入していく。すると、デジタル化の展開がスムーズになります。

――確かに、チャットツール等は、うまく社内に定着させないと効果を十分に感じられないかもしれません。

大事なことは、「ITツールを導入するだけで効果があるだろう」という希望的観測を捨てることです。

社内のすみずみにまでデジタル化を進めようと思ったら、導入したツールを利活用できるよう工夫していく必要があります。そこで活きるのが、やはりITリテラシーなのです。

社員の自立性を尊重する社風とトップのマインドが成否を分ける

――ここで、現在進行形のDX支援についてもお伺いしたいのですが、御社のサービスを使ってデジタル化が進んだ事例などがあれば、ぜひ教えてください。

現在アクシスは、たとえば大手企業などでは基幹系システムのクラウド化や、先ほども述べた「最新技術へのシフト」を進めるサポートを展開しています。

また、金融機関であれば勘定系システムや業務系システムのクラウド化を推進していますし、バーコードや電子マネーといった決済システムの多様化が進んでいるので、そのネットワークやプラットフォーム作りのお手伝もしています。

――最新のITにキャッチアップしていくことがほんとうに大切ですね。ちなみに、御社自身もまた社内DXを推進されていると思います。そこでどのように人材を活かすのが最適だと思われますか?聞いた話によると、新卒入社した社員のうち5年経過時も定着して御社で働いている人の割合は90%にのぼるそうですね。そういった働きやすさとDXは関係があるのでしょうか。

前に言及したITリテラシー教育と弊社の人材育成の取り組みがどれだけ関連するかはわかりません。ですが、弊社の教育カリキュラムは、社員自身がみずからの目線で計画を組み立てて実行しています。

また、社内の風通しを良くすることも心がけています。上下関係などに囚われず、分け隔てなく社員同士がコミュニケーションをとれる環境作りに努めているのです。

加えて、若手の登用も大胆に行っています。そういった社風で育成された人材は、「自分のわからないものは採用しない。デジタル化も、よくわからないからやらない」と口走ってしまうようなお客様のマインドをもDXに前向きに変えるでしょう。

デジタルネイティブの若い世代がIT戦略の中核として関われるよう、どんどん登用していくことも重要です。そういった取り組みがあれば、お客様はデジタル化に理解を示し、DXを率先して進めるようになるはずです。

DXは、どこまでいってもトップがその気になるかどうかに大きく左右されます。DXを推進したいなら、まずはトップが変わるべきです。

――最後に、御社が考えるDXの未来について教えてください。

ITの社会インフラ化、デジタル化は避けて通れません。個人でどれだけデバイスを使えるかとか、紙の書類がどれだけ電子化されるかといった話は、すべて過渡的な話題で、あらゆるものがデジタル化された時代になります。

中小企業や一般の商店であっても、マルチ決済端末がないと商売ができない状況がもう生まれている。やがては中小をはじめすべての企業にIT部門(や、それに似た部門)が設けられるようになるでしょう。

それも、10年や20年といった先の話ではなく、極めて近未来的にそういう時代が来ます。しかし、それを理解している人はまだまだ少ないと思います。そういった企業がDXに立ち遅れないよう、これからもアクシスはサポートを続けていきます。

<インタビューを動画で見る>

※本インタビューのIRなどに関する関連記事はizaでご覧いただけます。

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提供:株式会社アクシス
制作:FNNプライムオンライン編集部