2022年11月、97歳の男が運転する軽自動車が歩道にいた女性をはね次々と車に衝突、6人が死傷する事故が発生。高齢者の運転に求められるものとは…サポート用品や技能検査など、悲惨な事故を起こさないための取り組みを紹介する。

97歳運転の車が歩道を暴走

2022年11月19日、福島市の市道で発生した暴走事故。歩道にいた女性をはねた後、信号待ちで停車していた車3台に相次いで衝突した。この事故で、歩道を歩いていた女性が頭を強く打つなどして死亡。

97歳運転の車が歩道を走行
97歳運転の車が歩道を走行
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男が運転する軽自動車は、歩道を数十メートルに渡り走行したとみられていて、これまでの捜査で、現場にブレーキをかけた跡はなかったという。運転免許を更新する際の検査で、認知機能に問題はなかったという男。自宅に一人で暮らし、買い物などで毎日車を運転していたという。一方で、車庫入れなど車の運転に苦戦する様子もみられていた。

歩道にいた女性が犠牲に
歩道にいた女性が犠牲に

なぜ、男が歩道を走行したのかはわかっていない。ただ、軽自動車は車と衝突後に停車し、その間は歩道を数十メートルに渡って走行していたことから、警察ではアクセルとブレーキを踏み違えた可能性もあるとみて捜査している。

ブレーキ痕なく踏み間違えた可能性
ブレーキ痕なく踏み間違えた可能性

踏み間違いを防ぐ装置

度々、踏み間違えによる事故が発生しているが、カー用品店では踏み間違えを防ぐ装置が販売されている。これは、アクセルとブレーキの回路に部品を取り付けることで、誤ってアクセルを「急激」に踏み込んでも操作を受け付けず、車の急発進を防ぐことができる。
新車の場合、踏み間違いによる急発進を抑制する装置の搭載率は、令和2年の時点で約90%。搭載されていない車については、後付けの支援装置の開発・促進が進められている。

カー用品店で販売されている商品
カー用品店で販売されている商品

違反歴があれば運転技能検査が義務に

改正道路交通法により2022年5月から、75歳以上の高齢者が免許を更新する際に、過去3年間に信号無視などの一定の違反歴があるときは「運転技能検査」の受験が義務付けられた。
コースなどで普通自動車を運転し、課題を行い減点方式で採点する。100点満点で第一種免許では70点以上。バスやタクシーなどの第二種免許では80点以上で合格とされている。

運転技能検査
運転技能検査

《出題される課題…例えば》
●指示された速度で走行。早すぎたり遅すぎたりすると10点の減点
●一時停止の際に停止線を超えると、10点か20点の減点
●右折・左折で脱輪すると20点の減点。車体が中央線からはみでると最大40点減点
また、咄嗟の判断ができるかの指標となりそうな、段差に乗り上げた際に直ちにブレーキに踏みかえ停止できるかというものもある。こうした課題をクリアする必要があるが、一度不合格になっても免許の更新期間内であれば繰り返し受けることができる。それでも不合格であれば、免許は更新できない。

運転技能検査の課題
運転技能検査の課題

75歳以上に認知機能検査

そして運転技能検査に合格した人や違反歴がない人も、75歳以上のドライバーが免許を更新する際に必ず受験しなければならないものが「認知機能検査」だ。法律改正により、13年前から義務化された。記憶力や判断力の低下があるかないかを短時間で判定する。

認知機能検査
認知機能検査

記憶力をはかるために採用されているのが「手がかり再生」 受検者は最初に試験官が示した16種類のイラストを記憶。次に、別な課題を3分程度行った後に、示されたイラストをどれだけ覚えているのか回答していく。
分からない場合は、答案用紙に書かれている"手がかり"を頼りに、イラストを思い出せるかチャレンジする。このようなテストで36点未満の場合、「認知症のおそれあり」と判断され、医師の診断が必要に。その際に「認知症」と診断されれば、免許が取り消される。

報道陣に公開された認知機能検査
報道陣に公開された認知機能検査

福島県運転免許センター・渡部博之センター長:
事故を防ぐためには運転のコースをきちんと覚えているか、あとは運転操作関係の記憶力もありますので、やはり記憶力というのは安全に運転する上で重要かと考えております

福島県運転免許センター・渡部博之センター長
福島県運転免許センター・渡部博之センター長

しかし、75歳以上の免許更新は3年に1度。この間に認知機能などが急激に衰えてしまう可能性もあるため、福島運転免許センターでは、運転に不安を感じ場合は、早めに相談するように呼びかけている。

福島運転免許センター
福島運転免許センター

事故を起こした44%が認知症の可能性

認知機能の低下が招く死亡事故の危険性は、データでも示されている。警察庁によると、道交法改正前の2021年一年間に自動車などを運転し死亡事故を起こした75歳以上の高齢者で、事故前に検査を受けていた人のうち44%が「認知症のおそれ」「認知機能低下のおそれ」があると判定されていた。※旧認知機能検査
認知症のおそれがある時は、医師の診断などを受け免許取り消しの可能性もある。認知症のおそれがない場合も、実車指導などの「高齢者講習」をうけてようやく更新となる。

高齢者の免許更新手続き
高齢者の免許更新手続き

地方で免許返納進まず

福島県警察本部によると、75歳以上で2022年に運転免許を自主返納したのは3678人。一方、75歳以上で免許を所持している人は11万7983人となっている。(2022年10月末時点)
2021年に自主返納した人に理由を聞くと「身体機能の低下の自覚」が50%、「運転の必要がなくなった」が35%、「家族のすすめ」が15%となった。

自覚と周囲のサポートと共に「免許を手放せる」環境の整備も、交通インフラが脆弱な地方ではより問われている。
(福島テレビ)